小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第十一話『クラス対抗戦』



Side〜一夏〜

時が流れて、今日は試合当日。
俺の試合は第二アリーナ第一試合。
相手は鈴だ。
アリーナは満席で、会場入りできなかった人もいる。
俺の目の前には鈴がIS『甲龍(シェンロン)』を纏って試合開始を待っている。

『それでは両者、規定の位置まで移動してください』

アナウンスに促され、鈴が空中で向き合う。

「あんたがどこまでやれるか見てあげるわ」

「油断していると、足元掬われるぞ。 ISの操縦にも大分慣れてきたしな」

いくら生身で強くても、操作に慣れていなければまともに戦うことも出来ない。
ウリアたちとの練習のおかげで、この一ヶ月ほどでかなり操縦できるようになった。
ウリア曰く、「もう代表候補生とも戦える」らしい。

『それでは両者、試合を開始してください』

俺たちはブザーが切れると同時に動き出す。

ガギィンッ!!

展開した雪片と、鈴の持つ異形の青竜刀がぶつかり合う。

「思ってたよりもやるじゃない」

「これくらいは序の口だ」

バトンのように回される青竜刀(双天牙月)(雪片弐型)でいなす。

「本当にやるわね。 でも、これなら!」

鈴の方アーマーが開き、中心の球体が光った瞬間、俺は衝撃に殴り飛ばされた。

「今のはジャブだからね」

今の一撃で、あれが何なのかは粗方予想できた。
もう一発来たそれを、雪片で受け止める。

「嘘でしょ!?」

どうやら、俺の予想は当たっていたみたいだな。

「今のは衝撃砲だろ。 しかも、砲弾だけでなく、砲身も見えない」

「たったあれだけで見破るとか、どういうふざけた頭してんのよ!」

これも、ウリアとの特訓のおかげだ。
ウリアとの特訓が無ければ、今頃衝撃砲に蹂躪されていただろう。

「さて、俺も負けられないんでな。 本気で行かせてもらうぜ!」

俺を鍛えてくれる、ウリアのためにもな!

「アンタにあっさり負けるほど、代表候補生は甘くないわよ!」

「行くぜ、鈴!」

「来なさい、一夏!」

衝撃砲が放たれる前に、俺は加速体勢に入る。
千冬姉とウリアの試合で千冬姉がやって見せた瞬時加速。
俺はそれを覚え、ひたすら練習してきた。
瞬時加速による急加速を。

「はああああっ!」

ズドオオオオンッ!!!

鈴に俺の刃が届きそうになった瞬間、突然大きな衝撃がアリーナ全体に走った。
鈴の衝撃砲ではない。
こんなことできるのは、俺の知る限りウリアの『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』だけだ。
だけど、そのウリアは今ピットにいるし、そもそもこんなことはしない。

「誰だ? 俺たちの邪魔をする奴は!」

『一夏、試合は中止よ! すぐにピットに戻って!』

鈴がそう言ってくるが……

―――ステージ中央に熱源。 所属不明のISと断定。 ロックされています。

「ちっ!」

アリーナのシールドを破るほどの攻撃力を持つISが俺を狙っている。
逃げるわけには行かなくなったな。
まあ、逃げる気もないけどな。

『一夏!』

その時、ウリアの声が聞こえた。


Side〜一夏〜out


Side〜ウリア〜

英霊たちが感じていた嫌な予感とはこれのことでしたか!
突如メールが届き、相手は束さん。
内容は、作った無人機が何者かによってクラッキングされ、操作できなくなったとのこと。
あれは無人機で、束さんが作ったものと言うのがわかりました。
あの束さんに対してクラッキングを成功させるとは、只者ではありませんね。

<ウリアスフィール、あれには人の気配が感じられません>

<そのメールの内容は本当のようだ>

英霊たちも無人機と言っているので、間違いではないでしょう。

「一夏! 逃げてください! 私が止めます!」

『ウリア! ここは俺にやらせてくれ! こいつは俺の力で止めて見せる!』

一夏の声には、覚悟が篭っていました。

「……わかりました」

「ウリア!?」

「一夏の覚悟を無視することは出来ません。 一夏、聞こえますか?」

『ああ、聞こえているぞ』

「条件があります。 危険だと感じたら、無理矢理にでも止めます。 わかりましたね?」

『わかった!』

そうですね、アドバイスでもしておきましょうか。

『一夏、あれは無人機です。 思いっきりやってください』

『無人機? 人が乗っていないのか?』

『はい。 英霊たちがそういっています。 間違いはないでしょう』

『わかった。 無人機なら、全力でやれる』

プライベート・チャンネルを終えて、一夏の様子を見ます。

「ウリアよ。 一夏に任せてもよかったのか?」

「一夏がそう言ったんです。 ちゃんとした覚悟を持った一夏を否定することはしません。 ですが、危ないと思えばすぐに介入しますよ」

「アインツベルン、これを見ろ」

「遮断シールドがレベル4に設定されていますね。 しかも扉も全てロックされています。 面倒なことをしてくれますね」

ですが、私にはサーヴァントと英霊がいます。
遮断シールドがいくら強固でも、それを簡単に破る方法はあります。

「ところで、箒はどこに行くつもりですか?」

箒が走ってどこかに行こうとしていたので、止める。
どうせ、馬鹿なことを考えていたのでしょう。

「一夏の邪魔をしないでください。 私たちここで待つしかないんですよ」

「し、しかし! なぜお前はそんなに落ち着いていられる! 一夏の恋人であろう!」

「確かにそうです。 さっきも言ったように、一夏の覚悟を無視することはしたくないんです。 それに、アインツベルンの次期当主たる者、そう簡単に取り乱していてはその資格はありません。 まあ、一夏が大怪我でもしたらわかりませんが」

「アインツベルン、縁起でもないことを言うな」

「大丈夫です。 一夏は強くなりましたから。 だから、私は信じるだけです」

無事に倒して戻ってくると。
だけど、警戒だけはしておきます。
この世に絶対なんてない。
もしも危険なことになっても、すぐに対応できるように。

(ディルムッド)

<承知しています>

サーヴァントをすぐに展開し、行動できるように準備をしておきます。
準備をしておいて損はありませんから。


Side〜ウリア〜out


Side〜一夏〜

ウリアからの情報で、あれは無人機だとわかった。
ウリアが信じてくれる、だから俺はあれを何が何でも止める。

「鈴、逃げてもいいんだぜ」

「馬鹿言いなさい。 アンタを置いて逃げるほど、アタシは薄情じゃないわよ」

「そうか。 なら、少し手伝ってくれよ」

「元からそのつもりよ」

鈴がいるなら、多分あれが出来るはずだ。
それは賭けだが、成功すればその効果は高い。

「さて、あいつを止めるぞ」

アリーナを破ったレーザーが放たれるが、俺はそれを避ける。
そして、そのレーザーによって晴れた煙の先には、黒い装甲に覆われた『全身装甲』のISだった。
無人機だから当然といえば当然なのだが、その姿は不気味だった。
手が異常に長く、全身にスラスターがある。
頭部には剥き出しのセンサーレンズが不規則に並び、腕には砲門が左右合計四つある。
乱射でもされたら大変なことになるな。
やられる前にやるか。

『鈴、衝撃砲で援護してくれ。 俺は零落白夜であいつを斬る』

『わかったわ。 さっきの試合で互いに被弾が少ない分、チャンスはあるけど、できるだけ早く片付けなさいよ』

『わかってるさ。 早く終わらせて皆のところに戻ろうぜ』

『そうしましょう』

鈴が衝撃砲で牽制を始め、少しずつ接近して衝撃砲で怯んだところで一気に加速して斬りかかる。
だが、全身に取り付けられているスラスターの出力が高く、俺の間合いから逃げられる。

「!」

俺は瞬時加速を使って離脱する。
相手の反撃があったからだ。
だが、その反撃は滅茶苦茶で、長い腕をでたらめに振り回して砲撃をしてきたのだ。
あの砲撃は危険だ。
だから、避けるしかない。

「なんつうふざけた攻撃だよ……」

流石無人機というところだろう。
人の間接がない分、自由に曲げれる。
人間には出来ない攻撃方法も出来る。

「……次で落とす」

大体あの無人機のスラスターの出力は読めた。
まだ抑えているかもしれないが、それでも次で落とす。

「鈴、出来る限りあいつの注意を引いてくれ。 次で決める」

「……わかったわ。 絶対に決めなさいよ」

「ああ」

瞬時加速の準備をしながら、その時が来るのを待つ。
残っているエネルギーの三割を使っての瞬時加速。
いつもの瞬時加速とは使うエネルギーの量が違うため、その速度は爆発的に上昇する。
鈴の牽制を見て、相手を観察する。

そして、その時が来た。

溜めていたエネルギーを開放し、さっきとは比べ物にならないほどの速度で接近する。
そして、最大出力での零落白夜を振り下ろす。

「うおおおおおおおおっ!!!」

一閃。
振り下ろされた刃は、無人機を一刀両断した。
無人機の脅威は、こうして去った。


Side〜一夏〜out



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