小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第十二話『襲撃事後』



Side〜ウリア〜

「一夏、お疲れ様です」

「おう」

一夏はしっかり勝って戻ってきました。
本当に、強くなりましたね。

「織斑、凰、お前らは戻って休め。 アインツベルン、少し話がある。 ちょっと来い」

「わかりました」

あの無人機のことですね、きっと。
一夏と鈴は部屋に戻っていきました。

「話というのは、あの機体についてだ」

やっぱりその話ですか。

「あれは束さんが作った機体のようです」

「やはりあいつだったのか……」

「ですが、あれは何者かによってクラッキングされたようで、操作が効かなくなっていたようです」

「あいつに対してクラッキングだと!?」

束さんは超が付くほどの天才(天災)です。
そんな束さんにクラッキングをするなんて、とても信じられません。

「私も信じられません。 束さんは馬鹿ですけど頭はいいですし、その束さんに対してクラッキングなんて真似ができる人なんてそうはいません。 私は心当たりがないわけではないんですが、それはありえないんですよ」

「その心当たりとやらをいってみろ」

まあ、その心当たりは普通じゃないんですけど。

「もしかしたら、英霊が関わっているのかもしれません」

「英霊……確か、アインツベルンに伝わる召喚術による呼び出された英雄の霊、だったか?」

「はい。 英霊には伝承を具現化した宝具と言うのがあります。 存在するかは知りませんが、操ること特化した宝具なら、束さんでも手に負えない可能性があります。 ただし、英霊の召喚はアインツベルンにしかできないはずなんですが……」

英霊の召喚は、アインツベルンのみが出来ます。
それは、アインツベルンだけが英霊召喚のやり方を知り、そして、英霊を現界させ続けるだけの魔力を保持しているからです。
英霊を現界させれるほどの魔力を持っている人は、今ではほとんどいません。
それに、召喚の儀式はアインツベルンの秘奥。
流出するとは思えません。

「英霊か、本当にただのクラッキングだけか、どちらにせよ厄介だな……」

「英霊の場合は特にです。 伝承の人物の能力は、ただでさえ高いのに、宝具なんて持ち出されたらかなりやばいですよ」

「お前の見立てで、英霊を相手にできそうなのはいるか?」

「相手によります。 ただ、千冬義姉さんなら、相当な英霊ではない限りは、拮抗できるかもしれません」

この学園では、精々千冬義姉さんくらいでしょう。
千冬義姉さんは、本当に人間か疑いたくなるほどに強いですから。

「相手によっては、私でも無理か?」

「はい。 千冬義姉さんは確かに強いですが、英霊には宝具と言う、怪物武器がありますから。 相手によっては、私でも絶対勝てるとは言い切れません」

私は魔術師で、多くの英霊を所持していますが、英霊にも格があります。
神霊に近い存在ならば、勝てるのは彼しかいないでしょう。

「厄介だな……。 わかった、もういいぞ」

「それでは、失礼します」

私は礼をしてから千冬義姉さんと別れる。
少し、伝承について調べてみましょう。
もしそうならば最悪ですが、可能性のある人物がいるかもしれませんし。

「厄介なことにならなければいいのですが……」

英霊なんて出てきたら最悪です。
ただでさえ強いのに、宝具なんて使われたらどうなることか。
宝具は一つ一つが強力なため、並の実力では歯が立たない。
しかも、初見では真名がわからないため、どんな宝具を持っているかも予想ができない。
厄介以外の何者でもない。

<そう言う君は私たちを使っているのだがね>

(な、貴方たちは私の味方じゃないですか!)

<まあそうなのだがね>

ああ……またシロウの皮肉ですか……。

<シロウ、ウリアスフィールで遊ぶのは止めなさいと何度言えば……!>

<たまにはいいであろう? 私とて暇なのだよ>

(すみません、家ならまだしも、ここでは実体化させると面倒ですので……)

ドイツの実家ではよく実体化させていたんですけど、ここではそんなことをすれば問題になってしまいます。
英霊を留めておくための制限があるとはいえ、英霊たちの不満が募ればそれは無意味となってしまう。

(そういえば、なぜ霊体化しないんですか?)

<なんとなくだ>

(それなら私を弄る意味ないですよね?! 霊体化すればいいじゃないですか!)

<冗談だ。 別の理由がある>

シロウ、貴方って言う人は……!

<ギルガメッシュはよく霊体化してどこかに行っていますが、私たちはもしもの時に備えて待機しているのです>

ギルガメッシュ……貴方という人は……!

<まったく、私までも常に待機させなくてもいいと思うのだが……>

<貴方の力は、ウリアスフィールがよく使うのですから、少しは我慢してください>

(どちらかが交代で霊体化すればいいじゃないですか。 誰か二人くらい残っていてくれれば、私は構いませんよ)

私に快く力を貸してくれるディルムッドもいるんですから、最悪その三人で回せば常に二人は残りますから。

<そういうことなら、早速私は霊体化してこよう>

<あ、シロウ!>

シロウはもう霊体化してどこかに行ったようです。
みんな霊体化して何をしているんでしょうか?
特にギルガメッシュは。
あの英雄王様は一体どこで何をしているのでしょうか?

<我(オレ)か? 散歩だが?>

(あ、いたんですか)

てっきりいないものだと思っていました。

<ウリアよ、お前、我(オレ)のことをどう思っているのだ?>

(よく霊体化してどこかにいっていると、さっきアルトリアから聞きました。 だから、今もどこかに行っているのかと)

<……まあよい。 散歩でもして、余興になりそうなものがないか探しておるのだ>

(ギルガメッシュの御眼鏡に適ったものはあったんですか?)

<この近辺にはなかなかないな>

『サーヴァント』に宿されている英霊たちは、『サーヴァント』よりも一定の距離以上離れることはできないので、その範囲以上には行けないんです。

(では、近い内にどこか出かけましょう。 一時的にとはいえ、ギルガメッシュの御眼鏡に適うものがあるかもしれませんしね)

<それはよいな。 必ずだぞ>

(わかっています)

そうこう話しているうちに、部屋の近くまで戻ってきました。

「一夏、戻りましたよ」

「お帰り、ウリア」

一夏はベッドの上で寝っ転がっていました。

「千冬姉の話ってなんだったんだ?」

「秘密です。 機密なので、教えることはできません」

「ふーん、そっか。 じゃあいいや」

あっさり引いてくれるのはありがたいですね。
まだ、一夏には話せないことですから。

「ありがとな」

ふと、一夏にお礼を言われました。

「なにがですか?」

「俺を信じてくれて」

「……当然じゃないですか。 私が一夏を信じなくてどうするんですか。 私は一夏の彼女なんですから」

一度は不安になりましたけど、私は一夏を信じ続けます。

「ウリア……」

「私は一夏を信じます。 だけど、危険なことは止めてくださいね。 一夏が怪我するのは、嫌ですから」

「大丈夫だ、とは言えないな……」

「一夏、それは誓ってくださいよ……」

「守るためなら自分を犠牲にくらいしてやるさ」

「一夏、守るために自分を犠牲にしないでください……。 一夏に死なれたら私は、私は……」

一夏に依存しすぎているのはわかりますが、もう私は一夏無しでは生きれない。
一夏がいなくなったら、私は壊れてしまうでしょう。

「大丈夫だウリア……。 俺は死ぬつもりは毛頭ないから……」

一夏は私を抱きしめた。
自分の存在を感じさせるように、強く、ぎゅっと。


Side〜ウリア〜out



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