小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第十四話『二人の転校生』



Side〜ウリア〜

「ハヅキ社製のがいいかなぁ」

「え? そう? ハヅキのってデザインだけって感じしない?」

「そのデザインがいいの!」

「私は性能的に見てミューレイのがいいかなぁ。 特にスムーズモデル」

「あー、あれねー。 モノはいいけど、高いじゃん」

「やっぱりアインツベルン社製かな〜」

「でも凄く高いよね」

月曜日の朝、クラス中の女子生徒たちが手にカタログを持って談笑していました。
元気ですね……皆さん……。
私は一夏と別の部屋になりました……。
うぅ……、なんで転校生なんて来るかな……。

「そういえば織斑君とアインツベルンさんのISスーツってどこのなの? 二人とも見たことがない型だけど」

「やっぱりアインツベルンさんのはアインツベルン社製?」

「はい……。 私のはアインツベルン社製のオリジナルのオーダーメイドですよ……」

アインツベルン社はアインツベルンが経営している企業で、私はその企業代表でもあるんです。
ちなみに、アインツベルン社製の製品は国家代表クラスに人気だったりします。
性能はいいんですが、高いんですよ。
はぁ……。

「へー、通りで見たことないはずだね」

「織斑君のは?」

「俺のは特注品だって。 男のスーツがないから、どっかのラボが作ったらしいよ。 えーと、もとはイングリッド社のストレートアームモデルって聞いてる」

よく覚えていましたね。

「ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検知することによって、操縦者の動きをダイレクトに各部位へ伝達、一般的な小口径拳銃の銃弾程度なら完全に受け止めることができます。 あ、衝撃は消えませんのであしからず」

すらすら説明したのは山田先生。
いつもとは違いますね……。

<さりげなく酷いことを言ったな>

<ですが、それも仕方がないかと>

<確かにな。 いつもは頼りないのだがな>

(貴方たちも大概ですよ?)

<そういえばウリアよ、先ほど見覚えのある奴を見たぞ>

(見覚えのある? 誰ですか?)

<銀髪で眼帯の小さい奴だった>

あの子ですか!
さすがギルガメッシュ。
名前を覚えないとはさすがです。

(わかりました。 ありがとうございます)

あの子のことですから、このクラスになるでしょう。
なんせ、あの子は千冬義姉さんを異常なほどに尊敬していましたからね。
って、私が部屋を変えられた理由って、これですよね?
……まあ、あの子に会えるのなら、我慢しましょう。
でも、ちょっと問題があるのかな……?

「諸君、おはよう」

「お、おはようございます!」

千冬義姉さんです。
私は英霊たちとの会話を中断して意識を切り替えます。

「今日からは本格的な実戦訓練を開始する。 訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締めるように。 各人のISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにな。 忘れたものは代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。 それもないものは、まあ下着で構わんだろう」

そこは構いましょうよ!
一夏だっているんですよ!?

「では山田先生、ホームルームを」

「ええとですね、今日はなんと転校生を紹介します! しかも2名です!」

「「「ええええええええっ!?」」」

二人って、クラスをばらしましょうよ。
あの子はこのクラスにくるとして、もう一人は誰でしょうか?

「失礼します」

「…………」

……えっ?
一人は私の予想通りのあの子でした。
もう一人を見て、クラスが静まり返った。
なぜなら、そのもう一人の子が、男の格好をしていたからです。




 ☆




「シャルル・デュノアです。 フランスからきました。 この国では不慣れなことも多いかと思いますが、みなさんよろしくお願いします」

「お、男?」

「はい、こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国より転入を―――」

「きゃ……」

「はい?」

あ、耳を塞いでおきましょう。

「「「きゃあああああ――――っ!」」」

皆さん、どこからそんな大きな声が出るんでしょうか?

「男子! 二人目の男子!」
「しかもうちのクラス!」
「美形! 守ってあげたくなる系の!」
「地球に生まれてよかった〜〜〜!」

皆さん、本当に元気ですね。

「あー、騒ぐな。 静かにしろ」

「み、皆さんお静かに。 まだ自己紹介が終わってませんから〜!」

もう一人の転校生。
彼女は私の特訓の相手でもあった子です。

「……挨拶をしろラウラ」

「はい、教官」

やはり千冬義姉さんには素直ですね。
にしても、相変わらず可愛いですね。

「ここではそう呼ぶな。 もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。 私のことは織斑先生と呼べ」

「了解しました」

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

「…………」

もう少しなにか言いましょうよ。
一夏よりも酷いですよ?

「あ、あの以上……ですか?」

「以上だ」

可愛そうに、山田先生。
あ、一夏と目が合いました。

「! 貴様が―――」

パシッ。

ラウラは右手を振り上げ、振り下ろす。
だが、それは一夏に防がれた。
ラウラは驚いていますね。
まさか防がれるとは思っていなかったのでしょう。

「何のつもりだ?」

「私は認めない。 貴様があの人の弟であるなど、認めるものか!」

今度は左手をを振り上げて、もう一度振り下ろそうとした。

「止めなさい、ラウラ」

「っ! ウリアスフィール嬢!」

私の声に反応して動きを止めるラウラ。

「止めなさいと言っているの。 わからないの?」

「……わかりました」

ラウラは渋々といった感じで席に座ります。
……やっぱり、こうなりましたか。
後で、話をしないといけませんね。

「ではHRを終わる。 各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。 今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。 解散!」

とりあえず着替えましょう。

「おい織斑。 デュノアの面倒を見てやれ。 同じ男子だろう」

やっぱりあの子は一夏に任せられましたか。

<ウリアスフィール、少しお話が>

(どうしました、アルトリア?)

<あのシャルル・デュノアという男ですが、私と同じ感じがします>

(……と、いいますと?)

<あの男、性別を偽っているのでは?>

(つまり、あの人は男子ではなく女子だと?)

<はい。 私も性別を偽っていたが故、そう感じるのです>

アルトリアのフルネームは『アルトリア・ペンドラゴン』。
かの騎士王、アーサー王である。
性別を偽り、王として生きたが故にそう感じれたのでしょう。

(アルトリアが言うのですから、間違いないでしょう。 ハサン、常にシャルル・デュノアを監視しておいてください)

<……御意>

(後、一応ラウラも監視しておいてください)

<……了解した>

分裂するの早いですね。
このハサンの持つ宝具は『妄想幻像(ザバーニーヤ)』。
多重人格者であったハサンを、個々に分裂させることのできる宝具である。
諜報には持って来いですね。
シャルル・デュノアが一夏に近づいた理由はおそらく機体データの収集。
だが、なぜ彼女?がやっているのかが不明です。
お母様に調べてもらいましょうか?
それとも直接聞いちゃいましょうか?
ま、それは後にして、今はグラウンドに行きましょう。
叩かれるのはごめんですからね。


Side〜ウリア〜out



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