小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

第十六話『昼食』



Side〜ウリア〜

「では、午前の授業はここまでだ。 午後は今日使った訓練機の整備を行うので、各人格納庫で班ごとに集合すること。 専用機持ちは訓練機と自機の両方を見るように。 では解散!」

私たちは余裕を持って行動できました。
これもラウラ効果ですかね。
ずっとムスッとしている所為か、みんな素早く行動してくれましたよ。
一夏はギリギリだったようで、肩で息をしていました。

「ラウラ、行きますよ」

「はい」

着替えてお昼を食べましょう。
一夏たちはハサンに任せるとして、今はラウラと話をしなければなりませんね。
一夏を敵視しすぎていますから、少しずつ変えていきませんと。

「ウリアスフィール嬢」

「何ですか?」

歩きながら、ラウラは声をかけてきました。

「貴女とあの男……織斑一夏とはどのような関係なのでしょうか?」

話の内容は、案の定一夏のことでした。

「一夏との関係ですか? 恋人ですが」

「! なぜあのような男と!」

「ラウラ、あなたが千冬義姉さんを尊敬しているのは知っています。 モンド・グロッソ二連覇できなかったのは確かに一夏が攫われた所為です。 ですが、一夏はそのことをずっと気にしています。 一夏は千冬義姉さんに迷惑を掛けるのが嫌で、バイトの合間を縫っては鍛えていたようです」

少しでも千冬義姉さんの負担が減るようにと、バイトをしていたらしいです。
そして、あの時の自分が不甲斐無く、悔しい思いをしたから、ずっと鍛えてきたみたいなんです。

「それに、ラウラが千冬義姉さんと会えたのはそれがあったからです」

一夏の誘拐がどのような真相であっても、それがあったからこそ、ラウラは千冬義姉さんに出会えたのだ。

「しかし!」

「ラウラ、一夏だけを目の敵にしてはいけませんよ。 ラウラが言っていることは、一夏だけでなく千冬義姉さんをも否定しているんです」

「っ、ウリアスフィール嬢、それはどういうことですか?」

怪訝に思うラウラは聞いてきました。

「ラウラ、これはあくまで私の推測ですが、千冬義姉さんがあそこまで強いのは一夏がいたからです」

「!」

「一夏と千冬義姉さんは幼い頃に両親から捨てられているんです。 幼いながらも千冬義姉さんは一夏を守るために努力していたんです。 一夏を守れるのは自分だけだと、ただ一人の家族としてとても大事にしていたんです」

ちなみに、これは前に千冬義姉さんに聞いたことも混ぜた独自解釈です。

「ですから、今の千冬義姉さんがいるのは一夏がいたからなんですよ。 ラウラが一夏のことを認めないのはラウラの自由ですが、すべて一夏が悪いとは思わないでください」

「……わかりました」

わかってくれてよかったです。
あとは一夏とラウラがどのようになるかですね。

「では、お昼ご飯を食べに行きますよ」

私はラウラの手を取って歩き出す。

「歩けます! 自分で歩けますから手を放してください!」

「そうですか。 じゃあ、混む前に行きますよ」

きっとシャルル・デュノア目当てで混むはずですからね。
急がないとお昼が食べれません。


Side〜ウリア〜out


Side〜一夏〜

ウリアはあのラウラって奴と一緒に食べるらしく、俺たちは屋上で昼食を取っていた。
にしても、ウリアとボーデヴィッヒが知り合いだとは思わなかった。
まあ、ウリアの実家はドイツみたいだから、ドイツ軍のボーデヴィッヒが知り合いでも、おかしくはないな。

「一夏とアインツベルンさんってどういう関係なの? 実習のときの様子だと、付き合っているの?」

シャルルはそう聞いてきた。

「ああそうだぜ。 ウリアと俺は付き合っているぞ。 あの時は多分、俺に向かって落ちてきた山田先生に怒っていたんだろう」

「そ、そうなんだ」

シャルルは少し引いているが、ウリアの戦いでも思い出したのだろう。
多量の剣に、襲われ、しかもそれが一気に爆発するとなると結構怖いしな。
剣に囲まれると、爆発もあるから無闇に動けないし、爆発の威力にもよるけど、逃げ場無いからな。
……うん、やっぱりウリアは怒らせないほうがいいな。

「怒ると怖いけど、いつもは優しいぞ」

まあ、ウリアは俺の天使、女神だ。
怒らせることはしない。

「へえ、そうなんだ。 だけどあまり惚気ないでね」

「お、おう、悪い」

俺としては惚気ている気なんて無いんだけどな。
おいこら、今バカップルって言った奴出て来い。
問答無用で斬ってやるから。

「にしても、男同士仲良くしようぜ。 色々不便もあるだろうが、まあ協力してやっていこう。 わからないことがあったらなんでも聞いてくれ。 ただし、IS以外で」

勉強はしているんだが、まだ教えれる自信は無い。
ウリアに教えてもらって、やっと出来ているんだからな。
そういえば、シャルルって凄い遠慮深い。
シャルル争奪戦とばかりに、一年一組には大量の女子たちが押し寄せてきたんだが、このブロンド貴公子、丁寧に丁寧を二乗したような対応をしていた。
そんなシャルルに、女子たちは恥ずかしくなったのか引き上げていったんだ。
なんせ、その時に言ったセリフが

『僕のようなもののために咲き誇る花の一時を奪うことは出来ません。 こうして甘い芳香に包まれているだけで、もうすでに酔ってしまいそうなのですから』

これだぜ?
もうなんというか、凄いの一言だ。
俺とウリアの関係が公になる前は俺も女子たちにアピールされまくっていたのだが、正直面倒でしかなかった。
俺はシャルルみたいに引き上げさせることなんてできなかったんだからな。
ただ、ウリアが時々殺気を出していてくれたおかげで多少は楽だったんだ。
やっぱりウリアは俺のオアシスだ……!

「ありがとう。 一夏って優しいね」

あの笑顔、本当に男かと思うほど綺麗だったぞ。
そうか、これが噂に聞く男の娘って奴か!

ゾクッ!

今一瞬物凄い寒気が……。
ウリア、これは浮気なんかじゃないからな!
俺はウリア一筋だからな!

「どうしたの、一夏?」

あ、なんかシャルルに感づかれた。

「いや、なんでもない。 ただ自分の気持ちを改めて実感しただけだ」

「? 変な一夏」

「ま、これからルームメイトになるだろうから、よろしくな」

「うん、よろしく」

シャルルがくるからウリアと別の部屋になったんだな、きっと。
男が増えたのはうれしいが、ウリアと別の部屋になるのは嫌だったな。
ウリアは新しいルームメイトは誰なんだろうか?
知り合いみたいだったボーデヴィッヒとかな?
ボーデヴィッヒはウリアに従っていたけど、何かされないか心配だな。
俺をいきなり叩いてくる奴だし、もしかしたら俺との関係を知ってウリアにも何かしでかさないかが心配だ。
本当に心配だ。

「一夏、本当に大丈夫? さっきから変だよ?」

「いや、俺の考えすぎだな、うん。 そうだ、きっとそうだ」

「……何を考えてるか、なんとなくわかった気がするよ……」

なにを呆れているかは、まあ今回は目を瞑ろう。
今度ウリアと話さなければ!


Side〜一夏〜out



-17-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える