小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第二十一話『学年別トーナメント開幕』



Side〜ウリア〜

六月も最終週に入り、ここIS学園は学年別トーナメント一色に変わっています。
私は試合には出ないので、一夏と一緒にいました。

「しかし、すごいなこりゃ……」

更衣室のモニターから観客席の様子を見ると、そこには各国政府関係者、研究書院、企業エージェント、その他諸々の顔ぶれが一堂に会していた。
当然、そこにアインツベルン社の人もいるし、珍しくお爺様もいた。

(葉王もいますね……。 護衛ですか)

アインツベルン歴代当主が受け継いできた最強の英霊であり、別世界から呼び出された最強の英霊、麻倉葉王。
いつもならドイツのアインツベルン城にいるんですが、今日はここに来たようです。

『葉王か。 相変わらずの存在感だな』

『まあ、歴代の当主たちが受け継ぎ続けている英霊ですからね。 その実力はダントツです。 魔力消費が激しいのが難点ですけどね』

『まあ、その力を間近で見たからな。 俺はあいつとだけは戦いたくない』

葉王単体の能力はそこまで高くは無いけど、本気を出した彼の宝具はギルガメッシュの乖離剣エアの一撃でさえも子供の遊びに見えますからね……。
流石、星の王・シャーマンキングです。

「一夏はボーデヴィッヒさんとの対決だけが気になるみたいだね」

「まあ、な」

あ、一夏とシャルルとで話が進んでました。

「ラウラとは一対一でやるようにしてくださいね。 でないと多分、ラウラは怒り狂いますよ」

「ああ。 最初から一対一でやるつもりだ。 シャルルには悪いけど、ラウラのペアの奴を任せた」

「うん、大丈夫だよ。 それに、僕からしてみればアインツベルンさんの命令は絶対だからね」

「私、強要はしてませんよ?」

「だって僕を助けてくれるアインツベルンの当主だもの。 従うよ」

そこまでしなくても……。

「あ、そろそろ対戦表が決まるはずだよね」

そうでしたね。
一夏とラウラはどこで当たるでしょうか?

「一夏、ラウラのAICには気をつけてくださいね」

「ああ、わかってる。 ウリアが無茶をしてまでやってくれたんだ。 絶対に勝つ!」

「その意気です」

「あ、対戦相手が決まったみたい」

モニターがトーナメント表へと切り替わった。

「「「あ」」」

その画面を見て、同じ声を上げた。

「ふふふ、運が良いですね」

「ああ、そうだな」

「まさかいきなり当たるなんてね」

一回戦第一試合は、

織斑一夏&シャルル・デュノアペア 対 ラウラ・ボーデヴィッヒ&篠ノ之箒ペア

でした。


Side〜ウリア〜out


Side〜一夏〜

まさかいきなりあいつと当たるなんてな。
いきなりクライマックスだ。

「ふぅ……」

俺は心を静める。
相手はラウラ・ボーデヴィッヒ。
ウリアを除けば一年でトップの実力を持つらしい。
だが、俺だって易々と負けるほど弱くは無い。
ウリアが英霊を体に憑依させてまで俺の特訓に付き合ってくれたんだ。
体を張ってくれていたウリアのためにも、ずっと付き合ってくれていたあの英霊のためにも、負けるわけにはいかない。

「よしっ、行くか」

やれることはやった。
後は、それをあいつに示すだけ。

「ウリア、行ってくる」

「いってらっしゃい」

俺は立ち上がり、アリーナへと向かう。

「一夏、勝ったらご褒美あげます」

「わかった」

そうか……だったら、絶対に負けない!
ラウラ・ボーデヴィッヒ、悪いが絶対に負けることができない理由ができちまったんでな。
確実に勝たせてもらうぜ!




 ☆




「一戦目で当たるとはな。 待つ手間が省けたというものだ」

「そりゃあなによりだ。 まあ、こっちも同じ気持ちだぜ」

試合開始まであと五秒。 四、三、二、一、―――開始。

「確かめさせてもらう!」

「絶対勝つ!」

開始直後、俺はラウラに向かって突っ込む。
ラウラは右手を突き出す。
来るか、AIC!

「先制攻撃か。 単純だな」

「そんな簡単な策だと思うなよ」

俺はずっとやってきたんだ。
零落白夜が最強であるための使い方を!

「何!?」

慣性停止能力(AIC)はエネルギーで空間に作用を与えて発動する。
エネルギーを使うのなら、俺の雪片弐型の『零落白夜』で切り裂ける!
そして、俺はずっと練習してきた。
あの英霊を憑依させたウリアとずっと、零落白夜を当たる瞬間だけ発動させ、エネルギー消費を極限まで抑える技術を。
一度だけ見たことのある技術を。
あの英霊は俺のことを知っていたかのように、アドバイスをしてくれた。
まるで、自分のことのように。
だから俺は必死に覚えた。
まだ多少の不安があるが、それでも俺は十分戦える。

「はあああああっ!」

「くっ!」

ラウラは下がりながら六本のワイヤーブレードを射出し、雪片の刀身と俺の腕へと斬りつける。
俺の攻撃を防ぎに来たようだ。
だが、抜かりは無い。
俺はあらかじめに準備しておいた瞬時加速で横に加速する。

「当たれぇぇぇぇぇ!」

俺は多少無理をしながらも雪片を振るう。

『敵ISの大型レール砲の安全装置解除を確認、初弾装填―――警告! ロックオンを確認―――警告!』

だが、瞬時加速の一瞬の時間でレール砲の発射準備ができたようだ。
そして砲弾が放たれる。
俺はラウラへ向けていた雪片を弾丸へと変え、その弾丸を切り裂いた。

「……中々やるな」

「俺とて遊んでいたわけじゃない。 死に掛けたこともあったけど、それでも必死にやってきたんだ」

あの英霊を憑依したウリアとの特訓で何度か死に掛けた。
そのたびにウリアの愛で復活してきたが、それでも頑張ってやってきたんだ。

「これからが本番だ! 全力で行く!」

「いいだろう! 私の持てる全ての力で貴様を倒す!」

俺は負けない!
何たってウリアのご褒美があるからな!


Side〜一夏〜out


Side〜三人称〜

「ふあー、すごいですねぇ。 本当に数ヶ月前までIS素人さんだとは思えない動きです」

教師だけが入ることを許されている観察室で、モニターに映される戦闘映像を眺めながら真耶ははつぶやく。

「やっぱり織斑君はすごいです。 才能ありますよね」

にしても、と付け加えてしゃべる真耶。

「あそこまでやる気を迸らせている織斑君、どうしたんでしょうか?」

「……おそらくアインツベルンがご褒美でもやるとでも言ったのだろう。 あいつはアインツベルンにべったりだからな。 ……アインツベルンもべったりなんだが」

そうは言っているが、千冬も正直驚いている。
一夏がやって見せた瞬間的に発動する零落白夜。
千冬はそれを完璧に使いこなしていたからこそ、モンド・グロッソで優勝できていたのだ。
その技術を得るのに長い時間の練習をした。
それなのに、一夏はそれをやって見せた。
まだそれを練習し始めて一ヶ月ほどしか経っていないにもかかわらず、一夏はそれをやって見せたのだ。

(あいつの成長速度は異常だ。 それはあいつ自身の才能なのか、それとも守るための努力の賜物なのか……。 このまま行けば、あいつは必ず私を越えるな。 ふっ、全く、頼もしくなったものだな)

千冬は一夏の成長が嬉しかった。
力を守るために使い、ただひたすらに守る力を手に入れようとする姿勢を、千冬はよく見ていた。
一夏の成長は異常なほどに速く、何度もそれに驚かされた。
確かに一夏は剣道は強い。
全国レベルの箒を圧倒できるほどに強い。
だが、ISはそれだけでは駄目だ。
ISをどれだけ動かせるかによって、勝敗が決まってきてしまう。
およそ三ヶ月前までISに乗ったことも無かった一夏が、今や代表候補生と互角に戦えている。
その努力は、誰もが認めるものである。

(それに、いい顔をしている。 一夏も、ラウラも。 あの二人、この試合を楽しんでいるな)

そう。
一夏とラウラは笑いながら戦っている。
使っているものは簡単に人を殺せる兵器だが、それでも楽しそうに戦っている。

「この試合、どう転がるか。 見物だぞ」

「はいっ」


Side〜三人称〜out




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