小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第二十二話『異変』



Side〜一夏〜

俺は零落白夜のコツを覚えたため、以前ほどエネルギー消費が減った。
そんなこともあり、零落白夜も前以上に使えれる。
それはつまり、俺が必殺の一撃を使える回数が、俺の勝率が上がったことになる。
零落白夜はエネルギーを消滅させる力を持ち、当てれば一撃で大ダメージを与えれる。
だから俺の一撃は、相手にとっては常に気を張っておかなければ命取りになる。
だからラウラは俺の攻撃を油断しできない。

「はああっ!」

「この程度!」

だが、さすがは代表候補生。
しかも、技術は鈴やセシリアよりも上なため、決定打はいれれていない。

『一夏、手助けは?』

シャルルからのプライベート・チャンネル。
どうやら箒はやられたらしい。
まあ、シャルルなら箒を倒すのは楽だろうな。

『いらない。 これは俺とあいつの戦いだ!』

『言うと思ったよ』

これは俺とラウラの戦い。
ラウラが俺に挑んできたんだ。
この試合は誰の邪魔もさせない。

「うおおおお!」

「はああああ!」

ワイヤーブレードが零落白夜を発動する前に雪片に当たり、軌道がそれる。

「くっ!」

「貰った!」

プラズマ手刀で斬りかかってくるラウラ。
俺のエネルギーは半分を切っている。
互いに被弾は少ないが、俺の方が少ないだろう。
一瞬の発動だとはいえ、零落白夜を連発しているんだからな。
それに、これ以上長引くとかなりきつくなる。
それなら、

「なに!? 貴様、道連れにする気か!」

被弾覚悟で仕留めに掛かるのみ!

「うおおおおおおお!」

俺は軌道の逸れた雪片を無理矢理振り上げた。


Side〜一夏〜out


Side〜ラウラ〜

この男がこれほどまでにやるとは思わなかった。
だが、こいつとの戦いは楽しい。
だから、まだ終わらせたくない!

『―――願うか……? 汝、力を欲するか……?』

欲しい。
この戦いを終わらせないためなら、その力が欲しい!

Damage Level……D.

Mind Condition……Uplift.

Centification……Clear.

(Valkyrie Trace System)……boot.

この瞬間、私は意識を落とした。


Side〜ラウラ〜out


Side〜一夏〜

「ああああああっ!!!」

雪片の刃が触れようとした瞬間、ラウラが身を裂かんばかりの絶叫を上げ、同時にラウラのIS『シュヴァルツェア・レーゲン』から激しい電撃が放たれた。
俺はその電撃によって吹き飛ばされた。

「一夏!?」

「一体なんなんだ……!?」

俺はそれを見て驚愕した。
装甲だったものがぐにゃぐにゃに溶け、ラウラの全身を包み込んでいった。
その黒く濁った物がラウラを覆いきる瞬間、俺は僅かにだが見た。
苦悶の表情を浮かべるラウラの顔を。
だが、その顔よりも今目の前で起きていることがわからなかった。

普通、ISがその形状を変化させるのは『初期操縦者適応(スタートアップ・フィッティング)』と『形態移行(フォーム・シフト)』の二つだけだ。
ウリアの『サーヴァント』は例外だが、異常が俺の、俺たちの目の前で起こっていた。
そして、粘土のように変化していたものが形を形成すると、俺はその手に持つものに意識を奪われた。

(雪片)……!」

そう、それはかつて千冬姉が振るってきた武器で、俺の持つ(雪片弐型)の原型である(雪片)だったのだ。
そして、俺は無意識で雪片弐型を中段に構えていた。

「―――!」

その瞬間、黒いISが俺の懐に飛び込んできた。

ガギィィィン!

だが、その一太刀が俺の元に届こうとした瞬間、俺と黒いISの間に割って入った影がそれを受け止めた。

「一夏、何しているんですか! しっかりしてください!」

その影は、俺が愛して已まないウリアだった。
俺は、ウリアの顔を見ると、我に返った。

「わ、悪い!」

「まずは体勢を整えます。 一夏は下がってください!」

「わかった!」

俺はウリアの指示に従い下がる。

「『風王鉄槌(ストライク・エア)』!」

ウリアは鍔迫り合いだった状態から不可視の剣に纏わせていた風を放出し、黒いISを吹き飛ばした。
相変わらずの威力だ。

「? 動きませんね」

あの黒いISは、吹き飛ばされると体勢を立て直し、その場に佇んだまま動かなかった。
おそらく、攻撃に反応するようだ。

「一夏、常に意識して動いてください。 さっきの一夏は無意識でしたよ」

「……ああ、わかってる」

あの贋物の(雪片)を見た瞬間、俺は無意識で動いていた。
あれは、(雪片)は千冬姉だけのものなんだ。

「ラウラを助けましょう」

「ああ。 あいつは今あの中で苦しんでいるんだ。 速く助けてやろう」

そして、ウリアに助けられて同時に頭が冷えた。
冷静に考えれるようになって、ようやくラウラの表情を思い出した。
苦悶の表情で包まれていった、あの表情を。

「……で、一夏はどうしたいですか? あれを、千冬義姉さんの贋物を自分の手で倒したいですか?」

「ああ。 あんな千冬姉は千冬姉じゃねえ。 だから俺がやりたい」

「そう言うと思っていましたよ。 だから、私は一夏のサポートをします。 それくらいはいいですね?」

「ああ。 だけど、止めは俺が刺す」

「わかっています」

ウリアは青と銀の装甲から、雪のような純白な装甲になった。
元の姿でやるようだ。

「一夏、準備は良いですか?」

「ああ、いつでも大丈夫だ!」

俺はあの贋物を倒すだけだ。


Side〜一夏〜out



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