小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第二十三話『トーナメント終幕』



Side〜ウリア〜

ラウラのISになぜVTシステムが乗せられているのかはわかりません。
ただ、誰が組み込んだのかはわかります。
ドイツがラウラのISに組み込んだんです。
そもそもVTシステムは開発することも研究することも、ましてや使うことなんて許されていません。
そんなものをラウラのISに組み込むなんて、やっぱりドイツの上層部は腐っていますね。
やっぱり私はドイツ政府は嫌いです。

「ラウラ、必ず助けます」

私は両手に黒鍵を持ち、鋼糸でできた鷹を飛ばす。
鋼糸は以前一夏の零落白夜で断ち切られたので、もしこの黒いISが零落白夜までもがトレースされているのなら縛るのは難しい。
ですけど、VTシステム如きがワンオフ・アビリティーをコピーするのは不可能なので、縛り上げることができます。
ただ、相手が千冬義姉さんのデータなため油断はできません。
確実に縛り上げる!

「はあっ!」

鷹が敵機に近づき、それに反応して切り落とそうとするが、私は黒鍵でその剣を逸らし、遅らせる。
敵機は避けようともするが、私の黒鍵がそれをも邪魔をする。
そして、そのときが来た。

「これで!」

鷹をぶつけた瞬間に鋼糸を操作して縛り上げる。
以前の鋼糸よりも硬度が増しているため、そう簡単には断ち切れないはず。
本来ならそれだけでも縛れるのだが、今回は私が全力で縛る。
相手の抵抗が激しいため、拘束が解けないようにするのでいっぱいいっぱい。
普通のIS相手なら私が全力で縛らなくてもちゃんと拘束できるんですが、相手はただのトレース。
トレース故に、操縦者のことは考えないので、通常通りに縛ると、操縦者を考えない力技で解けてしまうでしょう。

「一夏、今です! そう長くは持ちません!」

私自身は大丈夫なんですが、鋼糸の方はそうはいかない。
あまりにも大きすぎる負荷に切れるかもしれないんです。

「ああ、わかった!」

一夏は雪片弐型を握り締め、私の縛るISへと飛ぶ。
その雪片の刀身は零落白夜を発動しており、その刀身は実体刃ではなく、日本刀の形をしたエネルギー刃でした。

「はああっ!」

一閃。
一夏の零落白夜がISを断ち、紫電が走った黒いISが真っ二つに割れる。
ラウラがその中から出てきて、一夏に抱きとめられました。

「一夏、ラウラは?」

「意識を失ってるだけみたいだ」

「そうですか。 それならよかったです」

ラウラは私の特訓のときからの馴染みです。
私からしてみれば妹みたいな感じでしたし、死なれるとこっちが困ります。




 ☆




「やあ」

「葉王ですか。 なぜここに?」

私が保健室に向かって歩いていると、葉王がやってきました。

「将来僕のマスターになるのが君だからね、見に来たんだよ。 で、あの子はどうなったんだい?」

「ラウラは保健室で寝ています。 VTシステムがラウラの体に負担を掛けましから」

「ふーん」

「で、御爺様はどうしたんですか? 今のマスターは御爺様に戻っているはずですし、今は御爺様の護衛中のはずでしょう?」

本来なら葉王のマスターはお母様ですが、日本に来るに当たってお爺様に戻したのです。
後々は私がマスターになるんですが。

「ああ、君に会いたかったから離れて来たんだよ。 一応彼の周りにスピリット・オブ・ファイアを置いてあるから、もしものことがあっても問題ないよ」

「スピリット・オブ・ファイアって……、かなり魔力喰いませんか?」

葉王の宝具の一つ『スピリット・オブ・ファイア』。
いや、宝具の一部と言った方がいいでしょうか。
炎の精霊で、簡単に言うと『破壊』の力です。

「その点は問題ないよ。 魔力消費の少ないベビーモードにしてあるから。 それに、僕の魔力消費は長年現界してきたおかげで大分抑えれるようになったよ。 後、城が霊脈の上にあるから、僕の内臓魔力も大分溜まっている。 スピリット・オブ・ファイアくらいなら、一日は僕の魔力で補えるよ。 それと、一番魔力を喰うのはグレート・スピリッツだから」

『グレート・スピリッツ』が葉王の本当の宝具。
いや、宝具と言えるほど生易しくは無いですね。
あれは神具とでもいえるほどの力を持っている。
故に大量の魔力を喰い、あまりにも強大故に『スピリット・オブ・ファイア』などの強大な力を持つ精霊を持っている。

「じゃあ、僕はこれで戻るよ。 また会おう、未来のマスター」

葉王は霊体化して去っていった。
相変わらず、気まぐれな英霊ですね。
まあ、どの英霊よりも強いんですけどね。

「さて、私も戻りましょう」

ラウラの様子でも見に行きましょう。
まだ見に行っていませんからね。
私は保健室に行くと、ちょうど千冬義姉さんが出てくるところでした。

「む、アインツベルンか。 ボーデヴィッヒの見舞いか?」

「はい。 気になってましたので」

「あいつは起きているぞ。 顔を出してやるといい。 あいつも喜ぶだろう」

「そうですね。 では、私は」

「ああ」

私は保健室に入ります。

「ラウラ、大丈夫ですか?」

「あ、ウリアスフィール嬢。 筋肉疲労と打撲だそうです。 お気遣い、ありがとうございます」

「もう、相変わらず硬いですね。 何度も言いますけど、『ウリア』、もしくは『お姉ちゃん』でいいんですよ?」

ラウラは妹みたいなものですからね。
ちょっと、お姉ちゃんって言わせたいんです。

「滅相もございません。 ウリアスフィール嬢は私よりも上の立場ですので」

ですが、ラウラは硬いので言ってくれません。

「私は別に構わないんですよ? それにラウラは私の妹みたいな感覚ですし」

「そのようにお思いだったのですか?」

「そうですよ。 若干色は違いますが、同じ銀の髪を持ってますし、ラウラはちっちゃくて可愛いですからね」

「か、かわっ!?」

ラウラは私よりも小さくて可愛い。
だから妹みたいに感じるんですね、きっと。

「ラウラは可愛いですよ。 自分の容姿にもっと気を向けてください。 ラウラだって女の子ですから、少しは格好に気を向けた方がいいですよ。 あと、私の呼び方についても」

「は、はぁ、考えて見ます」

あ、今度、私のお古でも着せて見ましょうかね?
まだ残っていたはずですし、今度お母様に尋ねてみましょう。

「ラウラ。 一夏と戦ってみて、どうでした?」

「……はい。 貴女の彼氏、織斑一夏は強かったです。 『心』が特に」

「そうですか」

確かに、一夏の心は強いですね。
私を守ろうと、必死になっています。

「あの、ウリアスフィール嬢」

「何ですか?」

「織斑一夏を馬鹿にしてしまい、すみませんでした!」

痛む体を無視して頭を下げるラウラ。

「ちょ、ちょっとラウラ! 体が痛むのでは?!」

「この程度、ウリアスフィール嬢の恋人を貶してしまった罪に比べればなんとも思いません」

変なところで律儀なんですよね、この娘。

「自分の体を粗末にしないでください! 謝るなら治ってからで良いですから!」

「しかし!」

ああもう!
本当に硬いんですから!

「いいから無理をしないでください。 それに、謝るのなら私ではなくて一夏に謝ってください」

「……わかりました」

「今はゆっくり休んで、体を治してください。 無理をすると完治までが長引きますからね」

「はい、わかりました」

ラウラが大人しくなったことですし。

「そろそろ私も戻りますね。 くれぐれも、無茶はしないように。 いいですね?」

「大丈夫です。 わかっていますので」

「では、私はこれで」

「はい。 ありがとうございました」

本当にいい娘ですね、ラウラは。
義妹として引き取りたくなりますよ。
私は、保健室を後にしました。


Side〜ウリア〜out



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