第二十四話『黒きウリア』
Side〜ウリア〜
『トーナメントは事故により中止となりました。 ただし、今後の個人データ指標と関係するため、すべての一回戦は行います。 場所と日時の変更は各人端末で確認の上―――』
誰かが学食のテレビを消しました。
「やっぱりウリアの予想通りになったな」
「ならない方がおかしいです。 ラウラがあんなことになってしまったんですから」
「で、ボーデヴィッヒさんの様子はどうだったの?」
デュノアさんが聞いてきました。
「筋肉疲労と打撲だそうです」
「体の負担が大きかったんだね」
「みたいです。 操縦者を無視して無理矢理動かすものですからね、あれは」
「まあ、無事ならそれでよかったぜ。 あんな決着の仕方なんて納得できねえからな」
一夏ならそうだろうと思っていましたよ。
「ラウラの怪我が完治したらまた戦えばいいんですよ。 今度は楽しむために」
あの時の二人は、とても楽しそうでしたからね。
二人なら、いつでも楽しみながら戦えるでしょう。
「答えを見つけれたのか?」
「ラウラなりの答えは出たようですよ」
「そっか」
それからしばらくすると、山田先生が来ました。
「あ、織斑君にデュノア君。 ここにいましたか。 アインツベルンさんも、さっきはお疲れ様でした」
「山田先生こそ。 ずっと手記で疲れなかったですか?」
「いえいえ、私は昔からああいった地味な活動が得意なんです。 心配には及びませんよ。 なにせ先生ですから」
山田先生って同い年に見えるから教師の威厳っていうものがほとんどないんですよね。
だからこういったときに先生ってことを強調するんですよね。
いつもIS戦闘みたいにちゃんとしていれば舐められないと思うんですけどね。
む、一夏が山田先生から目を逸らしました。
山田先生が胸を張った際に、あの大きな胸が揺れたんですね。
「…一夏は、やっぱり大きい方がいいんですか……?」
やっぱり気になります。
「そんなこと無い! 俺の一番はウリアだから!」
「そうですか……よかったです」
安心しました。
大きい方が言いなんていわれたらしばらく立ち直れそうにありませんでしたから。
「どうかしましたか?」
「いえ、なんでもないです」
「そうですか。 それよりも、朗報です!」
また胸を揺らす山田先生。
一夏が困ってるじゃないですか。
……あとでお話をした方がいいかもしれませんね。
「なんとですね! ついについに今日から男子の大浴場使用が解禁です!」
「おお! そうなんですか!? てっきりもう来月からになるものとばかり」
「それがですねー。 今日は大浴場のボイラー点検があったので、元々生徒たちが使えない日なんです。 でも点検はもう終わったので、それなら男子の二人に使ってもらおうって計らいなんですよー」
風呂が大好きな一夏はハイテンションです。
凄く嬉しそうですね。
「ありがとうございます、山田先生!」
一夏は感動のあまりでしょう、山田先生の両手を自身の両手で包み込む。
一夏の目がキラキラと輝いているんですけども!
何をしているんですか、一夏!
「あ、あのっ、そんなに近づかれると、先生ちょっと困りますというか、その……」
「はいっ?」
「い、いえっ! なんでもありません! なんでもありませんよ?」
この先生、わかっていて否定しないなんて、やっぱりお話決定です。
でも、流石の私ももう我慢できません。
胸のサイズで負けるのは、女として、悔しいですし、嫉妬くらいしますよ。
「一夏? 山田先生? 何をしているんですか? 一夏、やっぱり私よりも胸の大きい山田先生の方がいいんですね? わかりました。 山田先生、生徒の彼氏を誘惑するなんてどういうことですか? あとでO☆HA☆NA☆SHI、しましょうか」
「ち、違う! 風呂に入れるのが嬉しすぎただけであって、決してそういうつもりはない!」
「ゆ、誘惑なんてしてませんよぉ!」
「何とでも言ってください。 後でしっかり、O☆HA☆NA☆SHIますからね。 ウフフフフ……」
このとき、ここにいる人間、かの英霊たちの気持ちが一致した。
「「『<<アインツベルンさん(ウリア)(ウリアスフィール)(マスター)(主)(譲ちゃん)が怖いっ!>>』」」
山田先生にはしっかりとO☆HA☆NA☆SHIをしませんとね。
一夏も、胸の大きさに触れられることの辛さ、わかってもらいませんとね……。
「ああ、デュノアさん、一緒に入ろうものなら、わかっていますよね?」
「(コクコクコクッ!!!)」
物凄いいきおいで首を振るデュノアさん。
一体、何を怖がっているんでしょうか……?
「では、私は先に戻っていますね。 一夏は後にするとして、山田先生、後で貴女のところに行きますので、逃げないでくださいね? フフフフフッ……」
悪い人には、罰を与えないといけませんからね……。
Side〜ウリア〜out
Side〜三人称〜
『『『ふぅ〜……』』』
あの黒すぎるウリアが去ると、この場にいる全員が一息ついた。
一夏はさっきとは違ってテンションがダダ下がりで滅茶苦茶落ち込んでおり、山田先生は逃げることが許されず、顔を真っ青にして涙目になっていた。
シャルルは冷や汗ダラダラだった。
ちなみに、それぞれの心の内がこれ。
(((アインツベルンさん、怖かった〜)))
と、一般生徒。
(どうしよう……ウリアに嫌われちまった……胸の大きさは女性の気にすることなのに……俺は何してるんだろう……そうだ……死のう……)
と、一夏。
(これ、私絶対死にますね……遺書でも書いておきましょう……あ……お母さんたちに別れの言葉を言わないといけませんね……お母さん、お父さん、二人よりも速く死んじゃってごめんなさい……)
と、山田先生。
(元から入るつもりは無いけど、もし万が一でも一夏と一緒に入ったら、絶対に殺されるよね、僕。 多分、肉片一つ残さず消されるよね。 うん、アインツベルンさんは一夏関係で怒らせないようにしよう。 じゃないと、いつか殺されるよね、絶対)
と、シャルル。
特に一夏と山田先生は重症であった。
ウリアLOVEでウリア命の一夏は嫌われたと思って生きる目的を失いかけている。
山田先生は前回のこと(実習のときのトラブル)もあり、今回こそは本気で殺されるんじゃないかと思って遺書まで書こうとしていた。
後の一夏は、大好きな風呂でも魂が抜けたようになっており、何とかウリアに許しを得た一夏は、超ハイテンションになり、あの千冬に何度もぶっ叩かれてもぴんぴんしていたとか。
その日の夜、山田先生の悲鳴が聞こえたとかどうとか。
その日の夜、ウリアスフィールの黒い高笑いが聞こえたとかどうとか。
その真実は、当事者のみが知る。
Side〜三人称〜out