小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第二十八話『臨海学校スタート』



Side〜ウリア〜

「海っ!見えたぁっ!」

トンネルを抜けたバスの中で、クラスのみんなが声を上げます。
今日は臨海学校初日で、天候に恵まれて快晴です。

「おー。 やっぱり海を見るとテンション上がるなぁ」

「そうなんですか」

「ウリアはそうでもないか」

「海を見る程度なら。 泳ぎの方が楽しみですね」

「へえ、そうなんだ。 ウリアってどれくらい泳げるんだ?」

「水泳選手ほどには泳げませんが、ほどほどに」

流石に水泳選手には勝てません。
いいところまでは行くんですけどね。

「あ、一夏。 海についたらサンオイルを塗ってくれませんか?」

「おう、わかった。 だけど、そういうのは初めてだぞ?」

「大丈夫ですよ。 一夏だからいいんですから」

私は一夏なら何をされても構いませんしね。

「わかった」

ところで、ずっと気になっていたんですが……

「シャルロット、ラウラはどうしたんですか?」

ラウラがずっと挙動不審なんです。
いつもとは違っても可愛らしいんですが、どうして挙動不審なのかが気になります。

「あ、ラウラ? ラウラは買った水着が恥ずかしいんだと思うよ。 似合ってるんだけどね、自信が持てないみたい」

一体どんな水着を買ったのでしょうか?
気になりますね。

「ラウラは自信を持って良いのに。 何たってラウラは可愛いですからね」

何でも似合うと思いますよ、私は。

「楽しみにしていますよ、ラウラ」

「ひゃ、ひゃいっ」

ラウラは声が上擦っていました。
そんなに自信が持てないんですか?




 ☆




「それでは、ここが今日から三日間お世話になる花月荘だ。 全員、従業員の仕事を増やさないように注意しろ」

「「「よろしくおねがいしまーす」」」

千冬義姉さんの言葉の後、みんなで挨拶をします。
ここの旅館には毎年お世話になっているようです。

「はい、こちらこそ。 今年の一年生も元気があってよろしいですね」

しっかりとした大人の雰囲気の女将さんです。

「あら、こちらが噂の……?」

一夏と目があった女将さんが、千冬義姉さんに尋ねていました。

「ええ、まあ。 今年は男が一人いるせいで浴場分けが難しくなって申し訳ありません」

「いえいえ、そんな。 それに、いい男の子じゃありませんか。 しっかりしてそうな感じを受けますよ」

「感じがするだけですよ。 挨拶をしろ、馬鹿者」

一夏は千冬義姉さんに頭を抑えられます。

「お、織斑一夏です。 よろしくお願いします」

「うふふ、ご丁寧にどうも。 清洲景子です」

女将さんは丁寧なお辞儀をする。
気品がありますね。

「不出来の弟でご迷惑をおかけます」

「あらあら。 織斑先生ったら、弟さんには随分厳しいんですね」

「いつも手を焼かされていますので」

一夏は完全には否定できないんでしょうね。
でも、頼りになりますよ、一夏は。

「それじゃあみなさん、お部屋の方にどうぞ。 海に行かれる方は別館の方で着替えられるようになっていますから、そちらをご利用なさってくださいな。 場所がわからなければいつでも従業員に訊いてくださいまし」

みんなは返事をすると、すぐに旅館の中に入っていった。
私は一夏の元へ行きます。

「そういえば一夏、部屋の場所って聞いたのですか?」

「いいや、まだだ。 ウリアは先に行っていてくれ。 俺も急いでいくからさ」

「そうですか? わかりました」

私は、荷物を持って部屋へ行きます。




 ☆




私は更衣室のある別館へ向かう途中、箒と出くわした。

「箒? 何をしているのですか?」

「ウリアか。 ……何でもない」

そういうと箒は別館の方へと歩みを進めました。
私は気になって箒が見ていた方へと視線を向けると、理由がわかった。
そこには機械のウサミミが生えていました。
しかもご丁寧に『引っ張ってください』という張り紙つきで。
こんなことをするのは一人しか思いつきません。
というより、何人もいたら堪ったものじゃありません。

「……これ、どうしましょう?」

これは絶対に束さんだ。
引っ張ったら引っこ抜けるか落ちてくるでしょう。
きっとそんな感じです。

「ん? 何しているんだ、ウリア」

これをどうしようかと悩んでいると、一夏がやってきました。

「あ、一夏。 もう来たんですね。 実は……」

「あーなるほど」

一夏はそれを見るとすぐに納得してくれました。
一夏も、束さんのアホっぷりはわかっているみたいです。

「……で、どうします?」

「どうするって……抜くしかないだろ。 抜かないと後々怖いしな」

「納得です」

ぐれて暴走するかもしれませんからね。
主に、箒と千冬義姉さんに対して。

「じゃあ、抜くぞ」

「はい」

すぽっ

「あ。 意外とあっさり抜けた」

それを確認すると一夏は下がります。
埋まっていないのなら、振ってくるでしょう。

キィィィィン……。

……来ましたね。

ドカーーーーンッ。

盛大に突き刺さった謎の飛行物体。

「なんでにんじん?」

その飛行物体はイラストチックなデフォルメにんじんでした。
なんでにんじんなんですか。
あれですか?
ウサギだからですか?

「あっはっはっ! お久だね、いっくん、ウーちゃん!」

高笑いと共にぱかっとにんじんが真っ二つに割れ、その中から登場したのはやっぱり束さんでした。
普通に登場することが出来ないのでしょうか?
やっぱり頭良いですけど馬鹿ですね。

「やー、前はほら、ミサイルで飛んでたら危うくどこかの偵察機に撃墜されそうになったからね。 私は学習する生き物なんだよ。 ぶいぶい」

今日の格好も一人不思議の国のアリスです。
相変わらず意味不明なセンスです。
まあ、無駄に似合っているんですけどね?

「束さん。 学習する生き物だったら登場の仕方も学習してください」

いつもこの人の登場は普通じゃないです。
何度も言っていることなんですけどね、変えてくれません。

「相変わらずの毒舌だねぃ」

「貴女だけですよ」

「そういえばさ、ウーちゃん。 箒ちゃんはどこかな?」

「箒ならもうどこかに行きましたよ」

「へー、そっか。 まあ、箒ちゃんはこの私が開発した箒ちゃん探知機ですぐに見つかるよ。 じゃあねいっくん、うーちゃん。 また後でね!」

走り去る束さん。
意外に速い。
というより、『箒ちゃん探知機』ってあのウサミミだったんですね。
どういう構造しているんですか。

「……ウリア、束さんのことは忘れて行こう。 無駄に疲れるだけだから」

「そうですね」

今回は何をする気ですか、あの人は。
絶対何か企んでますよ。
まあ、今は忘れましょう。
せっかくの海ですからね。


Side〜ウリア〜out



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