小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第二話『宣戦布告』



Side〜ウリア〜

(一君、どうしたのでしょうか?)

二時間目。
一君が挙動不審でした。

<内容がわからないのでは?>

(あ、そうかもしれませんね)

<恐らくISの勉強をし始めたのは早くとも一ヶ月前。 十分頷ける>

<何かしらのアクシデントがあるかもしれない>

(それだね。 何かの手違いがあって捨ててしまったのかもしれませんし)

<まあ、今は見届けるべきであろう>

(うん)

とりあえず、私は一君を見守ることにします。

「先生!」

「はい、織斑君!」

思いっきり手を上げた一君に、山田先生はやる気に満ち溢れて聞きました。

「ほとんど全部わかりません!」

……え?

「え……。 ぜ、全部ですか……?」

一君、本当に何してたんですか?

「え、えっと……織斑君以外で、今の段階でわからないっていう人はどれくらいいますか?」

誰も手を上げません。
今やっているのは、参考書を読んでいれば普通にわかるところですからね。

「……織斑、入学前の参考書は読んだか?」

「トレーニング中に斬り刻みました」

パアンッ!

今度は防がない一君。
自分が悪いのは自覚しているようです。
それにしても、どうしたら斬り刻めるんでしょうか?
トレーニングの片手間に読んでいたのでしょうか?

「必読と書いてあっただろうが馬鹿者。 あとで再発行してやるから一週間以内に覚えろ。 いいな」

「い、いや、一週間であの分厚さはちょっと……」

「やれと言っている」

「……はい。 やります」

よし、教えよう。
絶対に教えよう。
私は一君のためならなんでもするつもりだし、そもそも他の子なんかに一君を渡してたまるものですか。




 ☆




「一君、大丈夫?」

「大丈夫じゃない。 さっぱりわかんねえ」

「それは仕方ないよ。 だってここに来る子はちゃんと勉強してきてるんだし、ISに全く関係の無かったんだから、それはこれから挽回しよ? 私も手伝うから、ね?」

あ、あれ?
一君に目を逸らされちゃいました。

「あ、ああ。 よろしく頼むよ」

「……ちょっと「ちょっとよろしくて?」……」

「へ?」

「はい?」

声を掛けてきたのは黒髪ポニーテールの子と、金髪ロールの子。
全く、一君との大切な時間を邪魔しないでください。
と言うより、金髪ロールの子は、黒髪ポニーテールの子に被せてますよね。

「訊いてます? お返事は?」

「あ、ああ。 訊いているけど……どういう用件だ?」

「まあ! なんですの、そのお返事。 わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」

ああ、こういうタイプの子ですか……。
完全に風潮に染まっていますね。
ほんと、気に入りませんね。

「悪いな。 俺、君が誰か知らないし」

「私もです」

そもそも、一君に夢中で自己紹介は大半を聞き流していましたし。

「わたくしを知らない? このセシリア・オルコットを? イギリスの代表候補生にして、入試主席のこのわたくしを!?」

ああ、代表候補生でしたか。
にしても、この子が入試主席ですか。
こうなるのなら、私もやるべきでしたね。

「あ、質問いいか?」

「ふん。下々のものの要求に応えるのも貴族の務めですわ。よろしくてよ」

「代表候補生って、何?」

そ、そこまで無知でしたか……。
周りの子達がずっこけてますよ。
流石の私も驚きました。

「一君、代表候補生と言うのは国家代表IS操縦者の候補生のことだよ。 単語からも見てもわかるよ」

「そう! つまりエリートなのですわ!」

一君に指を指さないでください。

「本来ならわたくしのような選ばれた人間とは、クラスを同じくすることだけでも奇跡……幸運なのよ。その現実をもう少し理解していただける?」

「そうか。 それはラッキーだ」

「……馬鹿にしてますの?」

あなたが幸運って言ったんじゃないですか。
そもそも、私と一君が再会できたことのほうが幸運です。
というより、代表候補生如きになった程度で『選ばれた人間』ですか。
まったく持って愚かな考えですね。

「大体、あなたISについて何も知らないくせに、よくこの学園に入れましたわね。 唯一男でISを操縦できると聞いていましたから、少しくらい知的さを感じさせるかと思っていましたけど、期待はずれですわ」

「俺に期待されても困るんだが」

「一君を知らないくせに、勝手な評価をしないでください。 そんな下らない価値観を持っているから世界が歪むんです」

「なんですって?」

「貴女が偶々学年主席で、イギリスの代表候補生なだけで一君を下に見ないでください。 貴女よりも一君のほうがよっぽどか世間に誇れます」

他人を簡単に侮辱するような人が、世の中に誇れるわけがありません。

「貴女、私を侮辱するんですの?」

「貴女が先に一君を侮辱したんじゃないですか。 私は一君を知らないのに侮辱する貴女が嫌いです。 これなら入試を受けておくべきでした……」

「貴女、今なんと?」

「入試を受けておけばよかったといっているんです。 私が主席であれば、貴女を罵ってもいいですよね? 貴女が一君を罵ったようにね」

「貴女、入試を受けなかったんですの!?」

「はい。 御爺様曰く、やるだけ無駄と」

次期当主たるもの、代表候補生に負けてはいけないんです。
そもそも、代表候補生如きなら、十人くらい纏めて相手に出来ます。

「あ、そういえば一君、入試はどうでした?」

「あーあれか? ISを動かす奴だろ?」

「そうですよ」

「あれ、俺も倒したぞ」

「へぇ、流石ですね」

まあ、千冬さんの攻撃を防げるほどに強くなってる一君なら、倒せても不思議ではありませんね。

「わ、わたくしだけと聞きましたが?」

「女子ではってオチじゃないのか?」

私はやっていませんしね。

「つ、つまり、わたくしだけではないと……?」

「いや、知らないけどそうだろ。 俺も一応倒したし」

「自信過剰ですね。 滑稽です」

「一応ってどういうことですの!?」

キーンコーンカーンコーン。

「っ……! またあとで来ますわ! よくって!?」

よくありません。
あ、そういえば黒髪ポニーテールの子はどうしたのでしょうか?
まぁ、気にしなくても大丈夫でしょう。

「それではこの時間は実践で使用する各種装備の特性について説明する」

一、二時間目とは違い山田先生ではなく千冬さんの授業のようです。

「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」

織斑先生が思い出したように言いました。
私は遠慮しておきましょう。
私が代表になったら、無意味ですからね。

「クラス代表とはそのままの意味だ。 対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……まあ、クラス長だな。 ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。 今の時点でたいした差はないが、競争は向上心を生む。 一度決まると一年間変更はないからそのつもりで」

「はいっ。 織斑君を推薦します!」

「私もそれがいいと思います!」

やっぱり一君が推薦されましたね。
予想通りです。

「では候補者は織斑一夏……他にはいないか? 自薦他薦は問わんぞ」

「お、俺!?」

ちなみに、私も一君に賛成です。
私は出れませんし、一君の実力なら適任でしょう。
それに、一君がクラス代表になれば、一君にISの操縦を教えるために一緒にいれますし。

「織斑。 席に着け、邪魔だ。 さて、他にいないのか? いないなら締め切るぞ」

「ちょっ、ちょっと待った! 俺はそんなのやらな―――」

「自薦他薦は問わないといった。 他薦されたものに拒否権などない。 選ばれた以上は覚悟をしろ」

「い、いやでも―――」

バンッ!

「待ってください! 納得がいきませんわ!」

……また貴女ですか。

「そのような選出は認められません! 大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ! わたくしに、このセシリア・オルセットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

…………。

「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。 それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります! わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

……………………。

「いいですか!? クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!」

貴女が、貴女程度がトップ、ね……。

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけない自体、わたくしにとって耐え難い苦痛で――――」

「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。 世界一まずい料理で何年覇者だよ」

「ただの古いだけの国に何があるんですか?」

一君が怒るのはわかります。
それに、私も我慢なりません。

「あっ、あっ、あなたがた! わたくしの祖国を侮辱しますの!?」

「先に日本を侮辱したのは貴女ですよ。 私はこの国が好きなんです。 ましてや、一君の侮辱をもする貴女は気に入らない」

「あ、あなた、一度までならず二度までも……!」

「それに、日本人を馬鹿にしてますけど、ISを作ったのは日本人ですし、初代ブリュンヒルデも同じ日本人。 それでよく、日本を侮辱できますね」

ISの生みの親は『篠ノ之束』で、ISの世界大会『モンド・グロッソ』の総合優勝者に与えられる世界最強を示す称号『ブリュンヒルデ』は、現役を引退した今もなお、世界最強と呼ばれている『織斑千冬』。
それなのに、どうしてそんなことが言えるんでしょうか?

「そもそも、日本で暮らすのが苦痛ならば国に帰ればいいではないですか。 誰も貴女を止めませんよ?」

「け、決闘ですわ!」

気に入らなかったら力に頼りますか。
しかも、侮辱した日本人が作ったISを使って。

「いいでしょう。 貴女のその自信、粉々にしてあげます」

<ウリアスフィールが怒っていますね……>

<ほう、面白そうだな>

<ギルガメッシュ!?>

<ここまで切れたのは中々無いではないか。 あの雑種がどのようにしてウリアにやられるか、見物ではないか>

<確かにあそこまで怒っているのは久しぶりではあるが……>

<あのウリアが怒っているのだぞ? これ以上ない余興ではないか>

英霊たちが何か言ってますけど、今は気にしません。

「さて、ハンデはどれほど付けましょうか?」

「貴女、私をどれだけ下に見れば……!」

「オルコット、悪いことは言わん。 ハンデを付けてもらえ。 お前では手も足も出ずに、完膚なきまでにやられるのが目に見えている。 あいつはあのアインツベルンの次期当主だぞ」

「な!?」

アインツベルンの当主になるには、は何かしらで秀でていないといけません。
私は頑張って、あらゆることを覚え、あらゆることに秀でています。
御爺様曰く、歴代最強とのことです。

「先生、勝手にばらさないでくださいよ。 まあ、いいです。 この際言っておきましょう。 アインツベルン家次期当主兼企業代表のウリアスフィール・フォン・アインツベルンです。 以後、お見知りおきを」

私は一礼をします。

「では、勝負は一週間後の月曜。 放課後、第三アリーナで行う。 アインツベルンとオルコット、その後、その勝者と織斑の試合だ。 それぞれ準備をしておくように」

「俺もなのか!?」

「アインツベルンはそもそも立候補も推薦もされていない。 これがクラス代表を決めるものだと忘れるな。 では、授業を始める」

(どうやってあの子を潰してあげましょうか……、強すぎる宝具ではあっけないですし……)

<では、私ならどうかね?>

(シロウ? あ、そうですね。 投影と『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』ならじわじわとやれますね)

<そういうことだ。 私なら君の要望を果たせると思うがどうかね?>

(そうですね。 あの子にはシロウの力を使わせてもらいますね)

さて、試合については考えたので、一君を助けましょう。


Side〜ウリア〜



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