小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第三話『同居』



Side〜一夏〜

放課後、俺は机の上でぐったりとしていた。
ウリアに教えてもらおうとしたけど、用があるみたいで駄目だった。
まあ、俺は教えてもらう身だから、無理言って頼めない。
……にしても、ここにウリアがいるなんて未だに信じられないな。
昔も可愛かったけど、今はもっと可愛くなってたな……って何考えてるんだ、俺は!?

「ああ、織斑君。 まだ教室にいたんですね。 よかったです」

「は、はい?」

いかんいかん。
あと少し遅かったらもっと酷く動揺しただろう。

「えっとですね、寮の部屋割りが決まりました」

そう言って部屋番号の書かれた紙とキーを渡す山田先生。

「俺の部屋って決まってないんじゃなかったですか? 前に聞いた話だと、一週間は自宅から通学してもらうって話でしたけど」

「そうなんですけど、事情が事情なので一時的な処置として部屋割りを無理やり変更したらしいです。 政府特例もあって、とにかく寮に入れることを最優先にしたみたいです。 一ヶ月もすれば別の部屋が用意できるので、しばらく我慢してください」

「わかりました。 でも、一回家に帰らないと荷物を準備できないので、もう帰っていいですか?」

「あ、いえ、荷物なら―――」

「私が手配しておいてやった。 ありがたく思え」

あー千冬姉か。
千冬姉なら、どうせ生活必需品しか持って来てないだろうな。
やっぱ一回帰らないと駄目だな。

「生活必需品と、一応あれも持ってきておいたぞ」

「本当か!? 千冬姉!!」

パシッ!

「織斑先生と呼べ」

振り下ろされる出席簿を受け止める。
危ない危ない。
危うく喰らうところだった。
というより、どこからその出席簿を出したんだ?

「ありがとうございます。 これで帰らなくて済む……」

あれとは、まあ木刀と真剣とかなんだが、俺が鍛えるときに使っているものだ。
あれがないと、落ち着けないんだよな。

「じゃあ、時間を見て部屋に行ってくださいね。 夕食は六時から七時、寮の一年生用食堂でとってください。 ちなみに各部屋にはシャワーもありますけど、大浴場もあります。 学年ごとに使える時間が違いますけど……えっと織斑君達は今のところ使えません」

「え、なんでですか?」

俺、風呂大好きなんだが……。

「あほかお前は。 まさか同年代の女子と一緒に風呂に入りたいのか?」

「あー……」

なるほど、そういえば俺しか男いないんだった。
そりゃあ入れない訳だ。

「おっ、織斑君っ、女子とお風呂はいりたいんですか!? だっ、ダメですよ!」

「い、いや、入りたくないです」

ウリアとだったら……って、何考えてるんだよ、俺は!?

「ええっ? 女の子に興味が無いんですか!? そ、それはそれで問題のような……」

「ようなじゃなくて普通に問題です。 それと、俺はノーマルです。 同性愛者ではありません」

この先生、人の話を曲解してないか?
俺はずっとウリアが好きなんだよ。
それもあったから、ずっと覚えていれたんだ。

「えっと、それじゃ私達は会議があるので、これで。 織斑君達、ちゃんと寮に帰るんですよ。 道草くっちゃだめですよ」

確か、校舎から寮まで50メートルくらいしかなかったはずだ。
どうやれば道草をくえるんだ?
あれか? 俺はそんなにふらふらするような奴に見えるのか?
もしそうだったら心外だぞ。

「さて、部屋に行こう……」

この女子たちの針の筵から開放されるなら、まだ部屋で他の女子一人のほうがまだマシだ、多分。




 ☆




「1025……ここだな」

俺は鍵を差し込む。
あれ、開いてる?
部屋に入ると大きめのベッドが二つ並んでおり、まるでホテルの一室みたいだった。
とりあえず荷物を床に置いて、ベッドにダイブする。
すっげぇもふもふしてる。
やぁらか〜い。

「誰かいるんですか?」

奥のほうから声が聞こえた。
凄く、耳に残っている声だった。

「あ、同室になった人ですか。 こんな格好ですみません。 私は―――」

「―――ウリア」

シャワー室から出てきたのは十年ぶりに再会した白銀の超絶美少女、ウリアだった。
そのウリアの格好は、バスタオルを一枚巻いただけであった。
白銀の髪に白い肌が映え、とても綺麗に見えた。

「……え?」


Side〜一夏〜out


Side〜ウリア〜


「……え?」

私がシャワーを浴びて出ると、一君がいた。

「い、い、一君……?」

「お、おう」

私の今の格好を思い出す。
シャワーを浴びた分で、バスタオルを一枚巻いただけ。

「きゃっ!」

「わ、悪い!」

咄嗟に手で胸元を隠してうずくまる。
一君は後ろを向いてくれた。

「な、何で一君がこの部屋に……?」

「な、なんかここが俺の部屋みたいでな」

「そ、そうなの……?」

「こ、これがその紙」

一君が顔を背けたまま紙を見せてくれる。
紙には1025と書いてあった。

「……本当みたい……」

「お、俺はどうすればいい?」

「そ、そのままでお願い!」

「わ、わかった!」

私は急いでシャワー室に入り、手早く着替える。

「み、見られちゃった……。 まだ心臓バクバクだよぉ……」

いくら好きな人と言えど、全く予想してなかったのでビックリしてしまった。

「ふぅ……よしっ!」

私は深呼吸をしてからシャワー室を出る。

「もういいよ」

「お、おう」

「え、えっと、その……」

何を話したらいいのかな……。

「久しぶり、ウリア」

「あ、うん、久しぶり。 十年ぶりだね」

「今まで何してたんだ?」

「ドイツの方の学校に行ってたんだ。 実家を継ぐためにもいろいろやってたよ」

「へぇ、そうなんだ」

「一君は?」

「俺はひたすらに鍛えていたな」

「みたいだね。 千冬さんの攻撃を何度も防いでいたからわかったよ」

千冬さんの攻撃を、避けるのも防ぐのも無理だと思うんだよね。

「そういえば一君、あの黒髪ポニーテールの女の子と知り合い?」

何度か話しかけようとしていたから、覚えています。

「もしかして箒のことか?」

「箒?」

「篠ノ之箒って言って、小学校のときに知り合ったんだ」

「篠ノ之? 篠ノ之ってあの篠ノ之?」

『篠ノ之』と言えば、あの天災しか思いつきません。

「そうだぜ。 箒は篠ノ之束さんの妹なんだ」

「ああ、あの人の妹ですか」

「知ってるのか?」

「なんどか実家に来たことがあるんです」

「マジかよ。 あの人、今どこにいるかわからないんだよな」

ISを開発した篠ノ之束博士は現在行方不明なんですけど、なぜか実家に来るんですよね。
ふと気づいたら侵入されたこともありますし。
……結界、張ってあるはずなのにな……。
どうして入れるんでしょう……?

「あ、あのさ、ウリア」

「何でしょうか?」

一夏は、どこかそわそわしながら、私に言いました。


Side〜ウリア〜out


Side〜一夏〜

「あ、あのさ、ウリア」

「何でしょうか?」

俺は、ウリアに再会したら、ずっと言いたかったことがあった。
言うことがないだろうと、半ば諦めかけていた、あの言葉を。
これを、俺が思い続けていたこの思いを、ウリアに伝えたかった。
たとえ報われなくてもいい。
拒絶されてもいい。
そう思っていたはずなのに、覚悟していたはずなのに、拒絶されることが怖い。
振られることが怖い。

「あの一君、大丈夫?」

ウリアが心配してか、俺に聞いてきた。
伝えるんだ……言うんだ……覚悟を決めろ……!

「……ああ、大丈夫だ」

これがどんな結果をもたらそうと、言ってやる!

「ウリア、好きだ!」

「えっ?」

「十年前からずっと、ウリアが好きだった! 忘れることなんて出来なかった! ウリアと別れても、ずっと思ってきた! 再会できたことが、今でも夢みたいだ! ウリアと再会しても、この思いは変わらない! むしろ大きくなっている! 十年振りに再会して、いきなり言われても迷惑だってわかってる! でも、伝えたかった! この思いを! たとえ振られようとも、伝えたかった!」

溜めてきた思いを、一気に解放する様に、俺は思いをぶつける。

「俺は、ウリアが好きだ!」

「………………」

言った……言ってしまった。
悔いは無い……。
ははっ……覚悟決めたはずなのにな……振られることが恐ろしく怖い……。

「私……」

俯いたまま、ウリアが口を開けた。

「私も、ずっと好きだった……一君のことが、ずっと好きだった……」

顔を上げたウリアの瞳から涙を流し、そう言った。

「い、今何て……?」

俺は何て言ったのか、理解できなかった。

「私も、一君のことが好き」

また、同じ言葉が聞こえた。
幻聴……じゃないよな。
そうか、これは

「夢か!」

「夢じゃないよ」

「あだっ」

ウリアはデコピンをしてきた。
痛いってことは、本当に現実?

「これからよろしくね、一夏」

そう言って、そう微笑んだ。
俺は、その笑みに目を奪われた。
微笑むウリアは、とても綺麗だった。

「……俺で、いいのか?」

はっとして口から出た言葉は、それだった。

「一夏だからいいの。 一夏以外、考えられないの」

そう言うウリアは、ちょっとムスッとしていて、可愛かった。

「よろしく、ウリア」

俺は、このときようやく現実だと言うことを受け入れた。


Side〜一夏〜out



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