小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第三十三話『互いの戦いの結末』



Side〜ウリア〜

時間も過ぎ、あと数分で十キロ以内に無人機たちが辿り着きます。
ということで、私は『サーヴァント』を【英霊・クー・フーリン】で展開します。

『リグレッター』

『どうした? マスター』

『ここに待機して、もしもの時はみんなを守ってください』

『……いいのか?』

『はい、お願いします。 どうせなら令呪を使って命じましょうか?』

ちなみに、令呪とは自身が召喚した英霊一人に付き三画の刻印が自らの身体に刻まれる、絶対命令権です。
まあ、使う気はありませんけどね。

『いや、必要ない。 了解した、マスター。 ということは、宝具も使っていいんだよな?』

『もちろんです。 というより、リグレッターは宝具がないと腕っ節の強い男性なんですから』

『まあ、そうだな』

リグレッターこと未来の織斑一夏の宝具『黒騎士―堕天―』だけです。
一つしかない宝具ですけど、そのランクはEX。
規格外な宝具なんです。
多分、彼が本気を出したら、一瞬で地形が変わります。

『では、お願いしますね』

『了解した』

リグレッターの反応が離れていきます。
では、私も行きますか。

<もう話は終わったのか?>

(はい。 行きますよ、クー)

<了解した>

単純な速度なら、ランサークラスのディルムッドかクーが一番ですからね。

<にしても、初めてじゃねえか? 俺の出番>

(はい? 何のことですか?)

<いや、こっちの話だ。 気にすんな>

(? わかりました)

何が言いたかったのでしょうか?

<ま、行くぜ、マスター!>

(はい)

とにかく、目標ターゲットは五機。
それらを破壊しましょう。
私は、飛び出した。


Side〜ウリア〜out


Side〜一夏〜

時刻は十一時半。
少し前にウリアが青い装甲を纏って飛んで行ったが、まあウリアなら大丈夫だろう。
ウリアは俺なんかよりも何十倍も強いしな。
そして、砂浜には俺と箒がいる。

「来い、白式」

「行くぞ、紅椿」

ISを纏い、PICによる浮遊感、パワーアシストによる力の充満感とで全身の感覚が変化する。

「じゃあ、箒。 よろしく頼む」

「本来なら女の上に男が乗るなど私のプライドが許さないが、今回だけは特別だぞ」

箒はどこか喜色を含んだ声であった。
やっぱり、ウリアの忠告は的を射ているようだ。
俺は不信感を覚えつつも、紅椿の背中に乗る。

『織斑、篠ノ之、聞こえるか?』

ISのオープン・チャンネルから千冬姉の声が聞こえた。

『今回の作戦の要は一撃必殺(ワンアプローチ・ワンダウン)だ。 短時間での決着を心がけろ』

「了解」

「織斑先生、私は状況に応じて一夏のサポートをすればよろしいですか?」

『そうだな。 だが、無理はするな。 お前はその専用機を使い始めてからの実戦経験は皆無だ。 突然、なにかしらの問題が出るとも限らない』

「わかりました。 できる範囲で支援をします」

やっぱり箒は浮ついている。
こうなってしまった以上、俺が箒を守らなければな。

『―――織斑』

「はい」

今度はプライベート・チャンネルで千冬姉の声が届く。

『どうも篠ノ之は浮かれているな。 あんな状態では何かをし損じるやもしれん。 いざというときはお前がサポートしてやれ』

「わかっています。 ウリアもそう言っていたので、箒の行動に注意を払っておきます」

『頼むぞ』

それから再びオープン・チャンネルに切り替わり、千冬姉の号令がかかる。

「では、はじめ!」

―――作戦、開始。


Side〜一夏〜out


Side〜ウリア〜

<マスター! わかってると思うがそろそろだぜ! 気ぃ引き締めろよ!>

(わかってます!)

私は海上をハイスピードで飛んでいる。
クー曰くもうそろそろと言う訳ですが、まあ視えているので切り替えます。
数は束さんの言う通り五機。
前回の機体よりも多少スマートっているものの、両腕の長さはあまり変わらず、バイザー型ライン・アイになっています。
見た感じ、速度は以前よりも上がり、視野が広くなっているため、反応される範囲が増えています。
まあ、クーと宝具を使えば問題ないでしょう。

<行くぜ、マスター!>

(はい!)

私は真紅の槍を展開し、構える。
この【英霊・クー・フーリン】の状態で使える唯一の武器です。
クーの感覚を一部受け継いでいるので、私の槍はそれなりの域になります。
無人機如きに遅れを取ることはありません。

「一夏たちが心配です。 あまり時間を掛けることはできません!」

私は瞬時加速を使って一機目の懐に入り、腕を、胸を、顔を刺し貫く。
それだけで無人機は墜落していった。
それと同時に認識阻害と、軽量化の魔術を掛ける。
これはオーバースペックな物ですからね。
他国に取られるわけには行きません。
沈めると回収が面倒なので、海上に浮かべておいた方が後々楽なんです。

<マスター。 気づいてるかも知れねえが、絶対防御が遮断されている。 気をつけろよ>

束さんも厄介なものを作ってくれましたね。
対IS用ISなんて……。

(わかっています。 クーもサポート、お願いしますね)

<あいよ!>

私は次々と刺し貫いていく。
流石は宝具である槍です。
物凄い切れ味です。
魔術で身体強化をしながら、過度な速度を出して無人機を刺し貫く。
交戦し始めて僅か五分ほどで残り一体になりました。

「終わりです! <その心臓、貰い受ける!>」

私は真紅の槍を握り直し、残りの無人機に向ける。

「<刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)!>」

私は最大出力で瞬時加速をし、その真紅の槍の真名解放をする。
『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)』は『相手の心臓を貫いた』という“結果”を作り上げてから、『槍を放つ』という“原因”を行う因果の逆転を起こす物です。
これは本来人間に対しての宝具ですが、この場で放った『刺す穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)』はISの設定をしてあるので、ISの心臓であるコアを貫くのです。
だから、私はクーの宝具を滅多に使わないのです。
使うときはこういった時だけです。
でないと、人、またはISを殺してしまうので。

(終わりましたね)

<案外呆気無かったな>

(私と貴方が戦ってんです。 たかが無人機如きに遅れを取るはずがありませんよ)

<それもそうだな。 さて、この残骸は運んでおいたほうがいいだろう>

(はい。 他国に取られるわけにもいきませんし、私の認識阻害もいつかは綻びが出ますからね)

魔術は時折手を加えないといつかは綻び、そして効果が失われてしまいますからね。
だから、今のうちに運んでおいたほうがいいでしょう。

(イスカンダル)

<む、よいのか?>

(私一人では無人機の残骸は運べないので。 それに、辺り一帯に認識阻害を掛けておくので、問題ありません)

<了解した!>

イスカンダルは宝具『神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)』に乗って実体化した。

「うむ、久しぶりの実体化であるな」

「お願いしますね、イスカンダル」

「おうよ、任せい」

私は会場に浮かぶ無人機の残骸を引き上げ、『神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)』に乗せていく。
軽量化しているので、そこまで質量は無いのでビクともしません。
大半を乗せると、『神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)』の荷台は山積みになっていました。

「流石にこれだけの量を乗せるとなると狭いのぅ」

「すみません、イスカンダル。 私のほうで重力を変えておくので、落ちないはずです」

「おおっ、そりゃぁありがたい」

「さて、私たちは戻りましょう」

「うむ、そうだな!」

私とイスカンダルは旅館へと戻っていった。


Side〜ウリア〜out


Side〜一夏〜

俺と箒は福音と交戦している。
福音はウリアの言う通り厄介な相手で、俺たちの攻撃がまともに当たらない。
福音には掠る程度で、しかもその頻度は低い。
福音にダメージは入っているのだが、決定打は入れれないでいた。

(くそっ、速さが足りない……! 白式が福音の速さに追いつけていない!)

福音は高出力の多方向推進装置(マルチスラスター)の精密な急加速に、白式の速度が追いつけていない。
これなら本格的に高機動調整しておけばよかった。
……過ぎたものは仕方が無い。
それに、時間が足りなかったから、間に合ったかもわからない。

「箒、左右から同時に攻めるぞ。 左は頼んだ!」

「了解した!」

追いつけないなら、追いつけるようにするまで。
というわけで、福音に二面攻撃を行う。

「一夏! 私が動きを止める!!」

「わかった!」

箒は二刀流で突撃と斬撃を交互に繰り出す。
腕部展開装甲が開き、そこから発生したエネルギー刃が攻撃に合わせて自動で射出、福音を狙う。
さらに箒は紅椿の機動力と展開装甲による自在の方向転換、急加速を使って福音との間合いを詰めていく。

「はあああっ!!」

これならいける!
だが、そこに福音の前面反撃が待っていた。

「La………♪」

甲高いマシンボイス。
ウイングスラスターはその砲門すべてを開いた。
しかも全方位に向けての一斉射撃。

「やるなっ……! だが、押し切る!!」

箒が光弾の雨を紙一重でかわし、迫撃する。
福音に隙ができた。

「っ!」

だが、俺は福音とは真逆の、直下海面へと全速力で向かった。

「一夏!?」

「うおおおっ!!」

瞬時加速と零落白夜を最大出力で行い、一発の光弾に追いついた俺はそれをかき消す。

「何をしている!? せっかくのチャンスに―――」

「船がいるんだ! 海上は先生たちが封鎖したはずなのに―――ああくそっ、密漁船か!」

瞬間的な零落白夜を覚えておいて正解だった。
覚えていなければ今頃エネルギー切れになっていただろう。
だが、それでも大分エネルギーは少ない。
瞬時加速を使いすぎたようだ。
残りのエネルギーなら、あと瞬時加速一回と零落白夜は五回くらいは使えるな。
これならまだ勝機はある。
……箒の紅椿のエネルギーが残っているのなら、だけど。

「馬鹿者! 犯罪者などかばって……。 そんな奴らは―――!」

「箒!!」

「ッ―――!?」

「箒、そんな―――そんな寂しいことは言うな。 言うなよ。 力を手にしたら、弱いやつのことが見えなくなるなんて……どうしたんだよ、箒。 らしくない。 全然らしくないぜ」

戦場であるにもかかわらず、俺は本能的に言ってしまった。

「わ、私、は……」

箒は明らかな動揺をその顔に浮かべ、それを隠すかのように手で覆う。
俺はその時に落した刀が空中で光の粒子へと消えたのを見た。

(やばい! 具現維持限界(リミット・ダウン)だ……! まずい―――!!)

具現維持限界―――つまりエネルギー切れということであり、そして今は実戦である。

「箒ぃぃぃっ!!」

俺は残りのエネルギーを全て注ぎ込み、瞬時加速を行う。
ISはシールドエネルギーが無ければもろい。
あのままでは、箒が死ぬ!
視線の先では福音が一斉射撃モードへと入っており、その標準は箒に絞っていた。

(間に合えぇ!)

俺はスローモーションの世界の中で、ちょうど発射されるタイミングで俺は箒と福音の間に入り込んだ。

「ぐああああっ!!」

俺は箒をかばうように抱きしめ、爆発光弾が一斉に背中に降り注ぐ。
エネルギーシールドで相殺し切れないほどの衝撃が連続で続き、みしみしと骨があげる軋みが聞こえる。
同様に悲鳴をあげる筋肉、アーマーが破壊され、熱波で肌が焼かれるのを感じる。
気が狂いそうな痛みの中、俺は箒を見る。

(よかった……俺は、守れたんだな……)

「一夏っ、一夏っ、一夏ぁっ!!」

「ぅ……ぁ………」

(ゴメン……ウリア……心配……掛ける……)

俺は海へと真っ逆さまにに落ちた。
俺は福音を見つめながら、ウリアに謝罪をしながら、意識を失った。


Side〜一夏〜out


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