第四十一話『射的と花火』
Side〜ウリア〜
「さて、俺たちも行こうぜ」
「そうですね」
「はい」
私たちは再び屋台を見て回ります。
「お兄様、お姉様」
「ん? どうした、ラウラ?」
「どうかしましたか?」
「あれは何ですか?」
ラウラが指差した方向には、射的屋がありました。
「あれは射的って言うんだ」
「射的、ですか?」
「ええ。 銃でコルクの玉を撃って、賞品を撃ち倒すものです。 やってみますか?」
「銃? やってみます」
銃って単語に反応しましたね。
流石は軍人ですね。
「へい、らっしゃーい」
「おじさん、三人分ください」
「お。 両手に花とは羨ましいねぇ。 よしっ、おまけ無しだ!」
「ええっ? いや、まけてくださいよ。 せめて女の子の分だけでも」
「がっはっはっ。 無論断る」
豪快な笑顔でそんなことを言う射的屋の大将さん。
一夏はそのまま三人分の代金を渡しました。
「まいど。 ……おお、兄ちゃん、甲斐性あるなあ。 女の分も払うとは、最近のガキにしちゃ珍しい」
「でしょう? だからおまけを―――」
「断然断る。 モテる奴は男の敵だ。 がはは」
交渉の余地は無いようです。
私もお願いして見ましょうか?
あ、でも、ラウラは軍人ですし、すぐに倒しそうですから止めておきましょう。
凄く可愛そうなことになりそうな気がします。
私たちは鉄砲を受け取り、コルクの弾を詰めます。
だけど、ラウラは苦戦しています。
「ラウラ、貸してください」
「あ、はい」
ラウラは初めてですし、これとラウラの知る銃とは使い勝手がまったく違うので、出来なくて当然ですね。
「ここを引いてから、銃口に玉を詰めるんです。 で、後は狙って撃つだけです」
私は鉄砲をラウラに渡します。
「ありがとうございます、お姉様」
「ラウラ、狙うならどうやったら倒れるか、考えて撃たないと倒れないからな。 ちょっと感じが違うから気をつけろよ」
「はい、お兄様」
とりあえず、私も撃ちましょう。
んー、あっ、あれにしましょう。
まず、この銃の威力を試しましょう。
ぱんっ。
人形は倒れませんでしたが、これで威力はわかりました。
これは確実に倒せますね。
「おおっ」
誰かがそう言ったのでラウラを見ると、ラウラは戦闘時のように鋭い視線で狙いをつけていました。
しかもラウラが狙うのは鉄の札の液晶テレビでした。
ぱんっと玉が発射され、札に当たる。
「お」
「おお?」
「ああー」
札は揺れましたが、倒れませんでした。
流石ラウラ。
たった一発で惜しいところまで行きました。
「……お姉様、お兄様」
「ん、どうした?」
ラウラは真剣な眼差しで私たちを呼びました。
「あれを倒すには一発では弱いようです。 なので、力を貸してください」
あの一発で冷静に判断しています。
流石現役軍人。
「おう、いいぜ」
「わかりました」
一夏の残りは二発。
私とラウラは四発の計十発が残っています。
これだけあれば、あれを倒すのもできるでしょう。
といっても、あまり使わないと思いますけどね。
鉄砲に弾を込めて、三つの銃口が鉄の札を狙います。
「私があれを傾けますので、お兄様とお姉様で倒してください。 今の感触ならば、間違いなく倒せます」
「了解」
「任せてください」
ラウラの指示に従います。
ラウラにいい思い出を作りたいですからね。
「行きます」
ラウラがさっきと同じように撃ち、鉄の札が傾く。
「一夏!」
「おう!」
私と一夏が同時に撃ち、傾いていた札の両端に玉が当たる。
「お」
「おお?」
「おおおっ!?」
ぱたん。
見事倒れました。
「そ、その鉄の札を倒すとは……! え、液晶テレビ当たり〜〜〜〜〜っ!」
最高難易度の獲物を倒したこともあり、大将さんも観客も盛り上がります。
「流石です、お兄様、お姉様」
「いや、あれはラウラが札を傾かせたから倒せたんだ。 ラウラの手柄だ」
「そうですよ。 私たちはただ、傾いていた札の後押しをしただけです。 ラウラのおかげですよ」
観客たちが拍手をしていきます。
まあ、普通じゃないことをしましたからね。
傾き、動く的に当てちゃいましたからね。
「がっはっはっ。 赤字だ赤字! ちくしょう、持ってけ〜!」
「う、うむ」
少し大きめの包みを受け取るラウラ。
小ぶりなラウラには大きいですね。
「俺が持つぜ」
「あ、ありがとうございます」
一夏がその包みを受け取ります。
ラウラは持てますが、少しあれな光景ですからね。
「さて、残りを撃つか」
これ以上倒すと大将さんが可哀想になってきますが、これだけは取っておきたいですね。
私は狙いをつけて引き金を引く。
すると、さっきは倒れなかった人形が倒れました。
それは白い猫のぬいぐるみで、なぜか欲しくなりました。
「お、流石だな」
「がっはっはっ。 今日は大損だ」
私はそれを受け取ります。
その間に、ラウラは大きめなものを倒していました。
……よ、容赦がありませんね。
結局、私たちは液晶テレビ、ぬいぐるみ×3と、大量に手に入れたのでした。
しかもほとんどがラウラです。
少しあの大将さんが可哀想になりました。
☆
「おー、変わって無いな。 ここも」
私たちが来たのは神社裏の林です。
そこの中に、一夏たちしか知らない秘密の穴場があったんです。
ここを知っているのは一夏、千冬義姉さん、箒、束さんの四人だけだそうです。
ですけど、今日私とラウラも知ったので、六人だけ(英霊たちは除きます)の秘密の穴場になりました。
「もうすぐ始まるぜ」
「はい」
そして、ついにその時が来ました。
ドーーーーーーンッ!!
「始まったな」
「みたいですね」
「綺麗です」
一夏曰く、この花火は百連発で有名なようで、一度始まると一時間以上続くみたいです。
「本当に綺麗ですね」
「そうだな」
「そうですね」
私たち三人はのどかに空を見上げ、空を彩る花を見続けます。
「また、来ましょうね」
「ああ」
「はい」
またここで、今度は千冬義姉さんたちと一緒に見たいものです。
Side〜ウリア〜out