小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第四十三話『ケーキとお昼寝』



Side〜ウリア〜

「あ、そういえば、すっかり忘れていたのですが、ケーキ買ってきたんですよ」

「お兄様もお疲れかと思いまして、私とお姉様で選びました」

アレイスターのことがあってすっかり忘れてました。

「あ、その箱ってケーキだったのか。 じゃあ、紅茶でも出すか。 ケーキならお茶よりも紅茶……暑いからアイスティーの方が良いか。 ちょっと待っててくれ」

一夏は立ち上がり、キッチンで紅茶を淹れ始めた。
同時に食器を扱うカチャカチャと音もします。

「やはりお兄様は似合いますね」

「そうですね。 千冬義姉さんはかなりがさつですし、昔からやってきているみたいなので、動きが身体に染み込んでいるんですよ」

一夏の後姿は、それをすることが当たり前だというように堂々としていました。
今時の男性にしては珍しいと思いますね。

「お待たせ。 ケーキ、どれにするんだ?」

一夏が三人分のアイスティーとケーキをお皿に乗せて持って来ました。

「って、どうした?」

「あ、いえ。 ただ、家事が似合うなと思っていただけです」

「まあ、慣れてるからな」

苦笑しながら言う一夏。
千冬義姉さんの負担を軽く出来るようにと始めたのが原因だったみたいです。

「で、ウリアとラウラはどれにするんだ?」

私たちが買ってきたのは苺のショートケーキ、チョコレートケーキ、レアチーズケーキの三種類です。
ちなみに、このケーキはおいしいと噂されている『リップ・トリック』で買いました。
中々の人ごみでした。

「ラウラが先に選んでください」

「よろしいのですか? なら、お言葉に甘えまして……」

ラウラが取ったのはチョコレートケーキでした。

「一夏はどれにするんですか?」

「俺はどれでもいいよ。 ウリアが買ってきたんだし、そもそもウリアは客だからな。 先に選んでくれ」

「いいんですか? では、私はショートケーキで」

「なら俺がチーズケーキだな」

私はショートケーキを取り、目の前に持ってくる。
一夏はアイスティーを私たちの前においてくれました。

「うん、うまいな。 これ、どこで買ったんだ?」

「駅の地下街にある『リップ・トリック』というお店です。 人気なお店なので、今日はラッキーでした」

「へえ……」

一夏はまじまじとケーキを眺めます。

「どうしたんですか?」

「いや。 この味を再現できないかなーと思ってな」

「いくらお兄様でも、レシピ無しに再現はできないでしょう」

「近い味は作れるかもしれませんが、再現は流石に無理だと思いますよ。 出来たとしても、ここのパティシエはシェフの国際大会で受賞経験があるらしいので、一夏でも厳しいと思います」

「だよなー。 いっそのことオリジナルのケーキを創作するか……」

一夏は思案顔になり、全てのケーキを見ていきます。
もう職人の顔です。

「どうせなら全ての味を食べて見ますか?」

「え、いいのか?」

「私は構いませんよ。 ラウラはどうですか?」

「私も構いません。 ただ、お兄様やお姉様のケーキも食べたいです」

「じゃあ、三人で少しずつ交換しましょう。 それなら全員が全ての味を食べれますからね」

私はケーキを切り出して、一夏へと向けます。

「はい、あーん」

「あーん」

食べさせあうことに違和感を抱かなくなったのは、慣れですね。
付き合い始めた頃は、ちょっと恥ずかしかったですけどね。

「どうですか?」

「うん、美味い。 苺の酸味と生クリームの甘さがちょうどいい」

「じゃあ、次はラウラですね。 はい、あーん」

「あ、あーん」

ラウラは少し恥ずかしいのか、一瞬動揺したような感じでした。

「お、美味しいです」

「それはよかったです」

「ウリア、あーん」

「あーん」

私がラウラを見て微笑んでいると、一夏がレアチーズケーキを一切れ切ったフォークを向けてきたので、それを口に入れます。

「あ、美味しいです」

「だろ? ラウラ、あーん」

「あーん」

ラウラもチーズケーキを食べました。

「どれも美味しいです」

「じゃあラウラ。 チョコレートケーキ貰いますね」

「あ、待ってください」

私が手を伸ばすと、ラウラが止めてきました。
どうしたのでしょう?

「あ、あーん」

ラウラが恥ずかしがりながら、私にフォークを向けました。
私はそれが嬉しかった。
以前のラウラなら絶対にしないようなことだったので、嬉しい変化に私は感動しています。
っと、いけませんね。
感動のあまり固まっていました。

「あーん」

口に広がるチョコレートの甘さと僅かに感じる苦味が美味しさを増させています。

「美味しいです」

「で、では、お兄様も。 あ、あーん」

「あーん」

「うん、美味い」

ラウラもますます可愛くなって、お姉ちゃんは嬉しいです。


Side〜ウリア〜out


Side〜一夏〜

今日は久しぶりに家の掃除をした。
千冬姉が帰ってきていたみたいで、部屋は散らかっていたし、ごみも残ったままだった。
相変わらずなのだが、やっぱり片付けくらいはしてほしいものだ。
まあ、何度言っても変わらないんだけど。
こんな体たらくじゃあ千冬姉を貰ってくれる人はそういないんじゃないか?
千冬姉はスタイルもルックスもいいんだから(性格はちょっとあれだけど)、もう少ししっかりしてくれれば、相手はいくらでも見つかると思うんだけどな。
まあ、千冬姉にも千冬姉なりの考えもあるかもしれないし、俺がどうこう強く言えないよな。

「一夏の部屋に入っても良いですか?」

「別に良いぜ」

それに今日は俺の愛しのウリアが来ている。
一緒にラウラも来ているが、今じゃあ俺の妹みたいな感じだ。
ウリアがラウラのことを可愛がるのもわかるぜ。

「お兄様の部屋でいやらしい物を探すんですね。 わかりました」

「ラウラ。 違いますよ」

「ラウラ。 俺はそんな物持って無いからな」

ウリアと付き合うことになる前から、そんな物は持っていない。
俺は叶うかもわからなかったウリアへの片思いをずっと思い続けてきていて、そういうエロイ物は買ったことが無い。
今時の男としては相当珍しいと自分でも思うが、そんな物を見る気にはならなかった。
……まあ、無理矢理見せられたことがあったけど、その時は別にどうとも思わなかった。

「じゃあ行くか。 あ、俺の部屋は二階だから」

俺は立ち上がり、ウリアとラウラも立ち上がるのを確認してから俺の部屋へと上がっていく。
俺の家はごく一般的な家なため、階段が途中で九十度折れている。
アインツベルン城とは大違いだ。
まあ、城と比べるのも馬鹿馬鹿しいけど。

「ここが俺の部屋だ。 ちなみに、あっちの部屋は千冬姉のだから、勝手に入ると後で怖い」

「わかりました」

「あそこが教官の……」

「入るなよ? いくらラウラでも何されるかわからねえからな?」

感慨深く頷いたラウラに釘を刺しておく。
ラウラは千冬姉をかなり尊敬しているからな、もしかしたら好奇心に負けて入るかもしれない。
一応釘を刺しておくに越したことは無いだろう。

「そんなに広い部屋じゃないけど、まあ入ってくれ」

「お邪魔します」

「お邪魔します」

そういえばこの部屋って椅子一個しかなかったな。
うーん……仕方が無いか。

「悪いけど、椅子一個しかないからベッドにでもかけてくれ」

「あ、はい」

二人はベッドに腰掛けた。

「やっぱり綺麗ですね」

「そうですね。 きちんと整理されています」

二人は俺の部屋をきょろきょろと観察する。
……何かこうも見られると小恥ずかしいな。

「で、何するんだ? この家って大してやることは無いぞ?」

「私は一夏たちとゆっくり出来ればそれでいいです」

「私はお姉様にお任せします」

ゆっくり、ねぇ。

「まあ、ゆっくりしていてくれ」

やること無いならまったりするしかねえんだよな。
単に俺が思いつかないだけかもしれないけど。




 ☆




昼食はウリアと一緒に作り、オムライスを食べている。

「やっぱり二人の料理はおいしいです」

「それはどうも」

「ラウラもやってみますか?」

「それはまた今度で」

「やるのなら教えるぜ」

「はい。 お願いします」

よし。
今度教えよう。
ラウラは可愛いんだから、料理も出来ればモテるだろう。

「ところで、昼からはどうするんだ?」

ふと気になった。
特にやることも無いし、何をするのだろうか?

「何をしましょう?」

ウリアも何も思いつかないようだ。

「寝ますか?」

「昼寝か。 悪くは無いんじゃないか?」

「そうですね。 天気もいいですし、気持ち良いんじゃないですか?」

「じゃあ、昼寝するか」

昼寝なんて久しぶりだな。
基本休みも特訓してるからな。
昼寝なんてする暇なんてなかったな。

「タオルケットくらいは持ってくるから、ちょっと待っててくれ。 どうせなら先に寝てても良いからな」

「あ、はい」

俺は薄めの毛布とタオルケットを持ち出して戻る。
リビングに毛布を敷いてそこに寝転がる。

「んじゃ、お休み」

「おやすみなさい」

「おやすみなさい」

俺たちはタオルケットを掛けて寝た。
並びは俺・ラウラ・ウリアで、川の字のように寝たのだった。


Side〜一夏〜out


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