小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第四十四話『千冬の帰宅』



Side〜一夏〜

四時ちょっと前、俺は目覚めた。
昼寝なのに結構がっちり寝たな。
でもまだウリアとラウラは寝ているな。
安心しきっているんだろうな。
まあここなら、たとえ狙われてもアレイスターの作った兵器で危険なことなんて入れないからな。
それに、伝説級の魔術師、アレイスターがいるから、ISが来ても安全だ。

「すぅ……すぅ……」

「すぅ……すぅ……」

ウリアもラウラも規則正しい寝息をしている。
二人とも可愛らしい寝顔だ。
まるで姉妹だな。

『人の寝顔を観察するとは、いい趣味とは言えないな』

突然アレイスターが話しかけてきた。
脳に直接だから、ウリアやラウラの邪魔にはならない。

『観察はしていないぞ。 眺めているだけだ』

『大して変わらないだろう』

『だがアレイスター。 たとえそうだとしても、愛しい女性を眺めるのは悪いことなのか?』

本音を言えば、世界最大悪人に善悪を問われたくは無い。

『悪くは無いだろうが、いいことだとは言えんな』

『まあ、そりゃそうかもしれないけどさ……』

確かに人の顔を、しかも寝ている人の顔をじろじろと見るのは自分でもどうかと思うが、愛する人ならオッケーだと思う。
うん、愛は正義だ。

ガチャ。

「何だ、いたのか」

そこに、千冬姉が帰ってきた。
服装は白いワイシャツにジーパンという、実に行動的な人柄をよく表していた。
ちなみに、ワイシャツの下は黒いタンクトップで、その豊満な胸を窮屈そうに押し込めていた。

「あ、千冬姉。 しー」

俺は人差し指を口に当てて、千冬姉に悟ってもらう。

「ん? ああ、すまない」

千冬姉は寝ている二人に気づいたのか、声が小さくなった。

「にしても、本当に姉妹のようだな」

「ああ。 可愛いもんだ」

やっぱり千冬姉もそう思うか。
元々髪の色も似ているし、瞳の色も似ているからな。

「お前にこんなにいい女が出来るとはな。 いや、ウリアがここまでいい女になるとは、といったところか」

「正直、俺もウリアと再会できるだなんて思わなくなってたな。 俺自身、ウリアが俺を覚えてるだなんて、夢のようなことだったし」

今でもウリアが覚えていてくれていた喜びを覚えているぜ。

「私もお前に言っておけばよかったな。 ドイツにいた頃に会っていたことに」

「マジかよ!?」

ってやべ!
つい驚いてでかい声出しちまった!

「一夏……?」

「お兄様……?」

「あー……悪い。 起こしちまった」

やっぱり起きちまったか……。
ウリアとラウラは目をこすりながら体を起こす。

「って、千冬義姉さんじゃないですか。 というより、今何時ですか?」

「四時過ぎだ」

「そんなに寝ていたんですか」

ラウラはまだ寝ぼけているのか、うとうととしている。
千冬姉にも気づいてないみたいだ。

「さ、ラウラ。 顔洗いましょう」

「はい、お姉様……」

「一夏、洗面所借りますね」

「おう。 場所わかるか?」

「さっき確認したので大丈夫です」

おう、いつの間に。
ウリアとラウラは洗面所に消えていった。
程なくして戻ってきたラウラは、もう完全に目が覚めていた。

「教官!? いつの間にお帰りになられていたのですか?!」

「やっと気づいたのか。 お前らが寝ている時だ」

ラウラはやっと気づいたのか、千冬姉に驚いていた。
千冬姉はそんなラウラに苦笑しながら答えていた。
さっきウリアが千冬姉のことを言っていたのだが、やっぱり寝ぼけていたか。

「そういえば千冬姉。 今更なんだけどさ、何か飲む? お茶でも淹れるよ?」

「本当に今更だな。 まあ、冷たいのを頼む」

「わかった。 あ、ウリアとラウラも飲むか?」

「あ、お願いします」

「私もお願いします」

「んじゃ、ちょっと待っててくれ」

あ、そういえば。
冷蔵庫の中を見て思い出した。

「朝作ったコーヒーゼリー、もう食べれるけど食べる?」

せっかく作ったのに、すっかり忘れてた。

「ああ、食べる」

「ウリアとラウラは?」

「いいんですか?」

「いいっていいって。 遠慮なんてしなくていいんだぜ」

「じゃあ、お言葉に甘えていただきます」

「私も頂きます」

うんうん。
何かいいな、こういうの。

「はい、お待たせ。 コーヒーゼリーは千冬姉好みの濃いめに作ってあるから、ミルクとシロップ使うなら使ってくれ」

「ありがとうございます」

俺は両方入れる。
じゃないと苦い。
ウリアとラウラは最初はそのまま食べたが、やっぱり苦かったのかミルクやシロップに手を伸ばしていた。
ウリアはミルクを少し入れる程度で、ラウラは両方結構いれていた。

「やっぱり苦いか?」

「予想以上に苦かったです。 食べれないことは無いんですけど、私としてはもう少し甘い方が好みですね」

「教官はこれほど苦いのによく食べれますね」

「これがまたいいんだ。 高校生にはまだ早い」

結構濃いからな、このコーヒーゼリー。
大人の味って奴だろう。

「うん、おいしいです」

「お兄様は万能ですね。 何でも出来ます」

「そりゃどうも。 でもまあ、それはずっとやってきたからだしな」

「お前が率先してやってくれたおかげで私は楽が出来たのだが……」

ちょっと気まずそうに言う千冬姉。

「その結果が今の千冬姉の家事の駄目さだよな」

その言葉に千冬姉は固まった。

「有能な弟というのもあれだな。 有能すぎると私が堕落する」

「もう堕落してるじゃん。 今じゃあ俺が口うるさく言ってるのに治らないもん」

「うぐっ。 そ、それはだな」

「反論するなら部屋の片づけくらいしてくれよ。 俺が部屋掃除するたびにビールの空き缶か下着のどちらかが毎回落ちてるんだからさ」

「そ、それはすまん」

俺に謝る千冬姉。
レアだ。
超レアだ。

「うふふ、千冬義姉さんが一夏に言いくるめられるなんて、珍しい光景ですね」

「教官が言い負かされるとは、初めて見ました」

それを見て、ウリアは楽しそうに笑い、ラウラは本当に驚いていた。
そんなこんなで、俺たちは楽しく過ごした。


Side〜一夏〜out



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