小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

第四十七話『お仕置きと言う名の蹂躪』



Side〜ウリア〜

「さて、楯無」

「は、はいっ! 何でございましょうか?!」

そんなに私って怖いですか?

「さっきも言ったとおり、私に一撃攻撃を入れればその時点でお仕置きは終了です。 いいですね?」

「はい!」

戦闘となると、少しは私のトラウマは治まるようです。
流石は更識家当主と言ったところですか。
戦闘時に戦えなければ意味がありませんからね。
でも、それでも完全にはトラウマは消えていないようです。
僅かにですが、震えていますから。

「織斑先生。 お願いします」

『わかった』

千冬義姉さんは立会いに来ました。
私が忠告したにもかかわらず、思いの他観客が集まったことと、私がやり過ぎないかという監視のために来たみたいです。

『試合、開始!』

千冬義姉さんの合図と開始に、ギルガメッシュの象徴たる宝具『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』を発動します。
私の背後の空間が歪み、黄金に染まる。
そして、その黄金に染まった空間から出現する剣や槍、ハルバードなどの武器。
しかも、この武器全てが宝具です。

「さあ、逃げてください」

そういうと同時に、武器を一本高速射出する。

「っ!?」

楯無はそれを避けるが、その剣は大地を抉った。
その威力に、楯無は恐怖した。

「ほら、この『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』の射出から逃げてくださいよ!」

私は次々に射出していく。
楯無は、その嵐のような宝具の雨に、ただ逃げることしか出来ない。
楯無のIS『霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)』はエネルギーを伝達するナノマシンで水を操り、攻守に使えるのだが、今のところ防御にしか使っていない。
いや、攻撃に回す余裕が無いのでしょう。
だって、もう既に半泣きですもの。
元々『天の鎖(エルキドゥ)』は使う気はありませんでしたが、これならやっぱり使わなくてもいいですね。

「ほらほら、この程度ですか?」

楯無は先ほどから大型ランス(蒼流旋(そうりゅうせん))に内蔵されている四連装ガトリングガンでしか攻撃していません。
私がただのガトリングに当たるはずも無く、全て回避し、弾きます。

「楯無、貴女が本当にこの程度ですか? まったく、拍子抜けですね。 ……もう終わらせましょうか」

『『『っ!?』』』

楯無及びに観客全員が息を飲んだ。
なぜなら、先ほどまで展開されていた黄金の空間が一回り以上大きくなり、出現した宝具の数も倍以上になったから。
その数は47。
その全てが、Cランクの宝具です。
Bランク以上は、流石に可愛そうですからね。

「さあ、今の貴女に、この宝具の一斉掃射を避けれます?」

「ひぃっ!」

完全に脅えている楯無。
私はわかりやすく、軽く上げた右手を楯無に向ける。
その瞬間、47の全ての宝具が一斉に射出されます。
楯無はその宝具の雨に成す術無く飲み込まれました。

「ふふふ……」

楯無は大地に倒れ、ISも解除されている。
まあ、あれだけの宝具の雨を受けたんですから、当然と言えば当然ですか。

『……しょ、勝者、ウリアスフィール・フォン・アインツベルン!』

「あははっ!」

アリーナは静まり返り、誰も声を発することが、動くことが出来ないでいた。
そのアリーナの中で唯一笑い、動いているのは私だけです。
まずいですね……感情のコントロールが出来ていません。
……とりあえず、宝具を回収しましょう。
大地に突き刺さっている宝具は霧のように霧散し、これで回収は完了しました。
私は楯無を抱えてピットに戻り、アリーナに残ったのは宝具による被害の爪痕と、観客の私に対する恐怖心だけでした。
はぁ……、どうしてお仕置きとなるとやりすぎてしまうんでしょうか……。


Side〜ウリア〜out


Side〜一夏〜

あのウリアが会長相手に無双を、一方的な蹂躪をやってのけた後、俺はすぐにピットに走った。
まさかこんなことになるとは思ってもいなかった。
というより、観客が全員ウリアに脅えていた。
わからなくは無いが、ウリアも結構本気だった。
ウリアはあの人に対して本気の殺気をぶつけていた。
ウリアは会長のみに殺気をぶつけていたが、あまりにも大きな殺気が観客にも流れ、その殺気に中てられて気絶する人もいた。
あんな笑い方もしない。
とにかく、俺はウリアの元に走った。
あんなウリアは普通じゃない。

「ウリア! っ!」

ピットに辿りついて、ピットの中を見て俺は言葉を失った。
さっきあんなことを仕出かしたウリアが落ち込んでいた。
物凄く落ち込んでいた。

「う、ウリア?」

「……え、ああ、一夏ですか……」

反応が薄い。
今まで見たことが無いほどに落ち込んでいた。

「……すみません一夏……私、やりすぎちゃいました……」

「あ、ああ……」

あまりの落ち込みように、俺は未だに固まっていた。
はっとした俺は、ウリアを抱きしめる。
何がなんだかわからないが、とにかく抱きしめた方がいい気がした。

「私……お仕置きとなると見境がなくなってしまうんです……。 ……あそこまでやるつもりは無かったのに……」

「ウリア……」

ウリアはやりすぎてしまったことに落ち込んでいるんだ。
お仕置きだとしても、自分の中のイメージ以上にやりすぎてしまったのだろう。
自分の理性で抑えられない、あの黒い一面が、ウリアをより落ち込ませているんだろう。
それに、関係ない観客にも恐怖心を植え付けてしまった。
そのことに落ち込んでいるのだろう。
俺は、何か言わないといけない。
今何か言わなければ、ウリアが壊れてしまう気がしたから。

「大丈夫だよ、ウリア。 ウリアには俺がいる。 たとえ他の人に拒絶されても、ウリアには俺たちが、千冬姉やラウラたちがついている。 だから、そんなに脅えなくていいんだよ。 そんなに自分を追い詰めなくてもいいんだよ」

いざ言おうとしたら、すらすらと言葉が出てきた。
自分でも驚くほどにすらすらと出てきたが、これは紛れも無い俺の本心だ。
これが少しでもウリアのためになってくれればいいんだが……。

「だからさ、今はゆっくり休みな」

今のウリアは、精神的に弱っている。
今の状態で他の生徒に会わせると、ウリアの精神が壊れてしまうだろう。

「……はい……」

ウリアは俺に身体を預け、瞼を閉じた。
お休み、ウリア……。


Side〜一夏〜out



-49-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




IS (インフィニット・ストラトス) シャルロット・デュノア シルバーペンダント
新品 \12600
中古 \
(参考価格:\12600)