小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第四十八話『出し物決めと謝罪』



Side〜一夏〜

ウリアをあのまま寮に戻って寝かして、俺は教室に戻った。
本来なら、俺が側にいてあげるべき何だろうけど、今はウリアへの偏見を少しでも緩和させるだけだ。
やっぱり、ウリアはやりすぎたことに後悔しているのだろう。
だから、俺はウリアを支える。

そして今は放課後の特別HR。
クラスごとの出し物を決めるために、盛り上がっていてもおかしくは無いのだが、あの試合が原因なんだろう。
あまり盛り上がっていない。
見ていない者はウリアがいないことを疑問に思い、見た者はあの恐怖が忘れられないのだろう。
まあ、このクラスの人たちは、普段のウリアを知っているから、他の人たちよりも回復は早いだろう。
俺は、このクラスの絆を信じる。

(にしても、どうしてこんな内容なんだ……)

今出されている案は、『織斑一夏とホストクラブ』『織斑一夏とツイスター』『織斑一夏とポッキー遊び』『織斑一夏と王様ゲーム』って……。

「却下」

「「「ええええええー!!」」」

クラスからの大ブーイング……って当たり前だ。
ウリアの許可なしにこんなもんにしたらどうなるかわからねえし、もしかしたらあの試合以上に怒るかも知れねえだろうが。

「異論は認めんぞ。 というかもっとマシな案を出してくれ」

このままじゃあ、余計に駄目になる気がする。

「ではお兄様。 メイド喫茶はどうでしょう?」

「は?」

そんな意見を言ったのはラウラだった。
変わったとはいえ、ラウラがメイド喫茶?
メイド喫茶を知っているのか?!
あのラウラがそんなことを言ったので、クラスはフリーズしている。
ウリア……ラウラは俺たちの知らない内にいろいろ成長しているぞ……。

「客受けはいいでしょう。 それに、飲食店は経費の回収が行えます。 確か、招待券制で外部からも入れるはずでしたよね? それなら、休憩場としての需要も少なからずあると思います」

ラウラが言っていることは正論だ。
にしてもメイド喫茶か。
……ウリアのメイド姿……いいなっ!
うん、いろいろとクリティカルだ。
ウリアならきっと着てくれるはずだ!

「皆はどう思う?」

まだ復活していないのか、女子たちはきょとんとしていた。

「いいんじゃないかな? 一夏には執事か厨房を担当してもらえばオーケーだよね」

そう言ったのはシャルだった。
あれを見ても変わらずウリアに対して偏見を持たない人の一人だ。
といっても、専用機持ちたちはウリアの本気に感心していた。
ウリアの力の強大さに俺も驚いたのだから、皆も驚いていたのだけど、終わっても恐怖心を抱いていない人たちだ。
戦闘中はウリアの殺気に恐怖していたけど、今は『やっぱり凄い』で終わっている。

「織斑君、執事! いい!」

「それでそれで!」

「メイド服はどうする!? 私、演劇部衣装係だから縫えるけど!」

俺が執事をやるのが決定しているのか、女子たちは一気に盛り上がりを見せた。
……きっと、皆ならウリアを受け入れてくれるよな。
そんな気がする。
ウリアは魔術で記憶を書き換えたりはしないから、ありのままを受け入れて欲しいはずだ。
だから、俺はウリアのフォローに回ろう。

「メイド服ならお姉様に聞いてみましょう。 執事服があるかはわかりませんが」

「ああ、そうだな。 ウリアに聞いてみれば手に入るかもしれないな。 執事服はあるかわからねえけど、俺からも頼んでみる。 無理でも怒らないでくれよ」

俺がそう言うと、『怒りませんとも!』と断言する女子たち。
というより、その発言だとウリアを受け入れているよな。
そういえば、冬木のアインツベルン城でメイドさんを良く見たけど、執事は見た記憶が無いな。
エミヤシロウが執事みたいなことをしていたのは見たけど。
にしても、かの英霊が家事をするって、なかなかシュールだったな。
まあ、そんなことだから、執事服があるかはわからないな。
後でウリアに聞いてみよう。
そんなこんなで、一組の出し物はメイド喫茶改め『ご奉仕喫茶』になった。




 ☆




「……というわけで、一組は喫茶店になりました」

場所は職員室。
今は千冬姉に報告をしている。

「また無難なものを選んだな。 ―――といいたいところだが、どうせ何か企んでるんだろう?」

「いや、まあ……コスプレ喫茶、見たいなものです。 はい」

「立案は誰だ? 田島か、それともリアーデか? まあ、あの辺りの騒ぎたい連中だろう?」

にやにやしている千冬姉。
でもまあ、言ったら意外に思うだろうな。
俺もビックリしたからな。

「ラウラです」

「………………」

きょとんとする千冬姉。
それから二度瞬きをして、千冬姉は盛大に吹きだした。

「ぷっ……ははは! ボーデヴィッヒか! それは意外だ。 しかし……くっ、ははっ! あいつがコスプレ喫茶? よくもまあ、そこまで変わったものだ」

「やっぱり意外ですよね。 俺もビックリしましたから」

「私はあいつの過去を知っいてる分、余計におかしくて仕方がないぞ。 ふ、ふふっ、あいつがコスプレ喫茶……ははっ!」

それからひとしきり笑って、千冬姉は目尻の涙をぬぐう。
意外なのはわかるけど、そんなに笑うか?

「ん、んんっ。 ―――さて、報告は以上だな?」

「はい。 以上です」

「ではこの申請書に必要な機材と私用する食材などを書いておけ。 一週間前には出すように。 いいな?」

「了解です」

面倒だけど、仕方が無いな。

「織斑、学園祭には各国軍事関係者やIS関連企業など多くの人が来場する。 一般人の参加は基本的には不可だが、生徒一人につき一枚配られるチケットで来場できる。 渡す相手を考えておけよ」

「はい」

渡す人か。
まあ、そんな奴と言ったら弾か蘭くらいだな。

「ところで一夏」

ここで名前を呼ぶか。
まあ、そうなったら話題は一つしかないか。

「ウリアの様子はどうだ?」

やっぱり心配してるんだな。
いつものウリアとは真逆の性格だったし、その後に寝込んじゃったからな。
さっき滞空回線(アンダーライン)で様子を見けど、どこかうなされていた。
すぐに戻らないとな。

「まだ眠ってる。 ウリア自身、相当気にしていたみたいだからな。 それに、精神的に大分自分を追い詰めていたよ。 俺が支えてあげないと」

「そうか。 ならばすぐに戻ってやるといい。 時間を取らせて悪かったな」

俺は一礼して職員室を出る。
すると、そこには眼鏡に三つ編みの女子生徒がいた。
この人、生徒会の人だ。
朝の朝会で司会をしていた人だ。

「織斑君。 お待ちしていました」

俺を待っていた?

「俺を? 一体何のようですか? 俺はすぐに戻りたいんですけど……」

ウリアが心配なんだ。
早く会いたい。

「今回はご迷惑をお掛けしました。 会長に代わり、私から謝罪します」

その女子生徒は頭を下げた。

「頭を上げてください。 別段気にしてませんから。 それよりも、会長って大丈夫なんですか? ウリアもやり過ぎてしまったみたいですし」

「ああ、会長なら今頃うなされています。 またしばらくウリアスフィールさんに脅える日々が続きますよ……」

女子生徒は呆れたような、疲れたような声を出す。

「またって、会長やウリアを知っているんですか?」

「ええ。 私は更識家に代々仕える布仏家の者ですから。 あ、申し送れました。 私は布仏虚と申します」

「布仏? まさかのほほんさん……じゃなくて本音さんのお姉さんですか?」

布仏なんて、そんな無い苗字だしな。

「はい。 布仏本音は私の妹です」

うわぁ、妹と姉で全然違うな……。
正反対だ。

「それで、またって言うのは?」

「ええ。 私も詳しいことは知りませんが、以前もウリアスフィールさんにお仕置きをされまして。 そのときは一週間ほどウリアスフィールさんに脅えていました」

「あの人は一体何をしたんだ……!」

ウリアがそこまでするなんて、滅多なことだぞ?
俺でも今日のあれが初めてだし……。

「それはわかりません。 会長はトラウマになっていますし、ウリアスフィールさんとは数回しか会っていませんので。 何があったのかを知る者はほとんどいないそうです」

「謎ってことか……」

気になるけど、ウリアがしゃべらないのなら、俺は聞くつもりは無いからな。

「今回の件のお詫びをしたいのですが、お急ぎのようですね」

「ええ、まあ」

お詫びなんて別にいいんだけどな。

「ウリアスフィールさんですか?」

「はい。 あの試合が終わってから、眠っているんです」

「確かに、いつものウリアスフィールさんとは別人のようでしたからね。 何か思うことがあるのでしょう。 では、私はこれで。 お急ぎのところ、申し訳ありませんでした」

「いえ。 じゃあ、俺は急ぐんでこれで」

俺は虚さんと別れて部屋へと急いだ。


Side〜一夏〜out


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