小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第五十話『受け入れと楯無の反応』



Side〜一夏〜

「ほ、本当に大丈夫でしょうか……?」

翌日、ウリアは弱気になっていた。
クラスメイトが受け入れてくれたけど、それ以外はまだだからな。

「大丈夫だって。 昨日皆来てくれただろ? それに、俺もついてるからさ。 ずっと引きこもってちゃあ何も解決しないぜ」

「そ、そうですけど……」

「じゃあ行くぞ」

俺は動こうとしないウリアの手を掴んで無理矢理引っ張っていく。
こうでもしないと、今のウリアは動かない気がする。

「あ、織斑君にアインツベルンさん、おはよー」

「アインツベルンさん大丈夫? 昨日急に休むから心配したよー」

部屋から出て食堂へと向かっていると、女子生徒に出会った。
彼女たちはウリアを見てもいつもみたいに接してくれていた。
きっと、試合を見なかった人なんだろう。
そんなこんなで食堂に到着。
ここに来る途中の生徒は普通に挨拶をしてくれた。
意外に大丈夫なのか……?

「あ、お兄様にお姉様。 おはようございます」

「おはよう、一夏、ウリア」

食堂にはラウラとシャルがいた。

「おはよう、ラウラ、シャル」

「お、おはよう、ございます」

ウリアは周りを気にしまくりだった。

「お姉様はもう大丈夫なのですか?」

「これを見ても大丈夫だと思うか?」

ウリアは俺の背中に隠れ、周りをきょろきょろと見ていた。

「……大丈夫そうではありませんね」

「いつものウリアとは全然違うよね」

いつもは気品があって堂々としているお嬢様だからな。
今は弱気なお姫様だ。
こんなウリアもありだけど、普段のウリアの方が好きだ。

「さて、何はともあれ朝食だ」

とりあえず、今は朝食だ。
朝食無しはきつい。

「……あ、アインツベルンさんよ……」

「……まさかあんな一面を持ってたなんてね……」

「……人は見た目に寄らないのよ……」

「……本当に怖かったわ……」

ひそひそと周りから声が聞こえた。
やっぱり、昨日の試合を見ていた人はいるな。
恐怖心は残っているのだろう。

「………………」

隣のウリアにも聞こえていたみたいで、俯いていた。
俺はウリアを抱き寄せる。

「おっはよう! アインツベルンさん!」

「今日は珍しく暗いね!」

「元気ださなきゃ駄目だよ!」

そこにやってきたのはクラスメイトの面々だった。

「あっ……おはよう、ございます」

少し気まずそうにするウリア。

「気にしなくていいって!」

「そうそう! 私たちはアインツベルンさんの味方だからね!」

「私たちも協力するよ!」

「ありがとう、ございます」

まだ元通りになるのは時間が掛かりそうだな。

「さ、飯食おうぜ」

「賛成〜!」

のほほんさんが元気にそう言った。
相変わらず、のほほんとしていたのほほんさんであった。




 ☆




「あ、織斑君にアインツベルンさん、ボーデヴィッヒさんにデュノアさんおはよー!」

教室に着くとすでにいた生徒に挨拶をされた。

「ああ、おはよう」

「お、おはようございます」

「うむ、おはよう」

「おはよう、皆」

やっぱり、戸惑っている感じの人がいるな。

「……あ、あの、アインツベルンさん」

「は、はい、な、何でしょうか?」

やっぱり少し脅えているな。
ウリアも、その人も。

「き、昨日のあれ、どうしたの?」

「あ、あれですか……? えっと、その……」

おどおどとしているウリア。

「……その、皆さんに怖い思いをさせてしまい、すみませんでした……」

ウリアは頭を下げた。
下手な弁解よりも、こっちの方がいいだろうってことだろう。
まあ、ウリアらしいかな。

「あっ、そんなつもりで言ったんじゃないの!」

頭を下げるウリアに慌てるクラスメイト。
じゃあ、どんなつもりで言ったんだ?

「アインツベルンさんが何の理由も無しにあんなことしないのはわかってるから、どうしてああなったのか気になっただけなの」

なるほどな。
あれだけでウリアがあそこまで怒るのは考えにくいからな。

「えっと……それはですね、以前も楯無―――会長といろいろありまして、お仕置きをしたんですが、それが原因で彼女にはきつく当たってしまうんです」

「そっか……」

そのいろいろが気になるところだけど、ウリアが言わない限り、俺は聞かない。
クラスメイトも、何か感じ取ったのか、詳しく追求はしなかった。

「すみませんでした……」

もう一度頭を下げるウリア。

「ううん、いいよ!」

「アインツベルンさんにあんな一面があっただなんてビックリしたけど、何か理由があるって思ってたし!」

「怖かったけど、アインツベルンさんが優しいのは知ってるよ。 もうしばらく怖がる子もいると思うけど、きっと受け入れてくれるって」

「そうそう!」

どうやら、昨日いなかった人も、受け入れてくれたみたいだ。
皆、本当に優しいな。

「み、皆さん……」

ウリアはこんなに早くに受け入れてくれたことに驚いていた。

「ウリア、だから言ったろ。大丈夫だって」

「はいっ」

そう言うウリアの目尻には、涙を浮かんでいた。


Side〜一夏〜out


Side〜ウリア〜

私は一夏たちのフォローのおかげもあって、いつもの調子を取り戻すことが出来そうです。
ただ、楯無の脅えようは、自分がやった所為であっても流石に傷付きます。



〜〜〜回想開始〜〜〜

授業終わりで廊下を歩いていると、

「あ、ウリアスフィール様! ごめんなさいっ!」

出会い頭に土下座されて、

「た、楯無」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

話しかけてもごめんなさいと連呼されました。

「頭を上げて、楯無」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

「………………」

そして肩を掴んで顔を上げさせると、顔が恐怖で真っ青になっているんです。
それに加えてがちがちと歯がぶつかるくらいに唇が震えて、ずっとぶるぶると震えているんです。
これを見た人は、何て言ったらいいのかわからず、スルーするしかないのか誰もが見て見ぬ振りをしているんです。

「う、ウリア? な、何してるんだ?」

そこに顔を引きつらせた一夏も来ました。

「た、楯無が私を見た途端に土下座をしまして……」

「何がどうなったらそうなるんだ……?」

私のお仕置きがやりすぎた結果がこれなんです……。
前よりも酷いトラウマになってますよ、これ……。

「と、とりあえず、会長をどうにかしないと駄目だな」

「そ、そうなんですけど、これをどうしたら……」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

未だに延々と同じ言葉を吐き続ける楯無。
もうどうしたらいいのかわかりません……。

「……とりあえず、ウリアがいないほうが復活するだろう。 悪いけどウリア、先にアリーナに行っててくれないか?」

「わ、わかりました。 す、すみません、一夏……」

こんな楯無に、原因である私がいたら、回復するものもしませんよね……。
罪悪感に苛まれながら、私はアリーナへと向かいました。

〜〜〜回想終了〜〜〜



あの後は一夏が生徒会室へと楯無を運んで行って、虚さんに預けたそうです。
すみません、虚さん。
ご苦労をかけまして……。

「で、織斑君は執事で決定だとして、メイドは誰がやる?!」

「やっぱりアインツベルンさんは絶対でしょ!」

「それを言うなら専用機持ちたち全員で良くない?!」

そして私たちは、学園祭の一組の出し物『ご奉仕喫茶』の役割決めです。
私が寝込んでいる間に決まっていて、しかもこの提案者がまさかのラウラとは思いませんでした。
シャルロットが夏休みにラウラと『@クルーズ』という店でバイトをしたみたいで、見て見たかったです。
というより、一夏が執事なのは決定なんですね。
別に構いませんけど。
それよりも、私が絶対って何ででしょうか?

「それはアインツベルンさんが一番可愛いからに決まってるじゃん!」

そうですか?
というより、口に出していないはずなんですけど……。

「じゃあ、今決まってるのは俺とウリアにラウラ、シャル、そしてセシリアだな。 出来れば専用機持ち全員がして欲しいとのことだけど、後は箒なんだけど、お前はどうするんだ?」

専用機持ちは全員特に華がありますからね。
でも、性格的に箒はやらないと思いますね。

「むむむ……」

箒は周りの期待に満ちた目で見られて唸っています。
こんな目で見られたら、いくら箒と言えども断りづらいでしょう。
私もこんな状況下でしたら断れないかもしれませんし。

「……し、仕方が無い。 皆がそういうのならやってやらないこともない」

あ、折れました。
結構あっさり折れました。
意外にやりたかったのかもしれませんね。

「ということで、コスプレ接客組は俺とウリアにラウラにシャル、箒にセシリアの専用機持ち組で決定。 これでいいよな?」

『『『いええええい!』』』

クラスメイトは全員で賛成の声をあげました。
テンション高いですねー。

「じゃあ、後は調理班と雑務班だな。 それじゃあ、適当に決めてくぞー」

一夏は一夏で結構雑な決め方でした。


Side〜ウリア〜out


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