第五十六話『結果発表と亡国機業』
Side〜ウリア〜
「先日の学園祭ではお疲れ様でした。 それではこれより、投票結果を発表します」
一夏の争奪戦は結局続行になった、っていうかさせていたんです。
なので、体育館に集まっている全校生徒がつばを飲みます。
……まあ、多分私の予想通りの結果になるでしょうけど。
「一位は、生徒会主催の観客参加型演劇『シンデレラ』」
「「「……え?」」」
ああ、やっぱり。
「卑怯! ずるい! イカサマ!」
「何で生徒会なのよ! おかしいわよ!」
「私たちがんばったのに!」
楯無は生徒たちのブーイングを手で制して言葉を続けます。
「劇の参加条件は『生徒会に投票すること』よ。 でも、私たちは別に参加を強制したわけではないのだから、立派に民意と言えるわね。 それに、参加者以上に投票数があったのだから、劇を見て票を入れた人もいるのよ。 身に覚えのある生徒も多いのではないかしら?」
楯無は馬鹿ですけど、馬鹿ですけど! こういうのにイカサマはしません。
その所為か、生徒たちのブーイングも小さくなりました。
やっぱり、身に覚えのある生徒が多いみたいですね。
楯無曰く、票が全校生徒の半分近く入っていたみたいなので、多くの生徒が自分の意思で投票したことは明白です。
「と言うわけで、織斑一夏君は生徒会に入ることが決定しました。 はい拍手!」
ぱちぱちと周りから拍手が聞こえます。
どうやら論破?できたのでしょう。
とりあえず、私は影ながら生徒会のサポートでもするとしましょう。
Side〜ウリア〜out
Side〜三人称〜
「まったく、恐ろしい物ね、貴方たち英霊は」
とある高層マンションの最上階。
薄い金色の髪の女性がそう“虚空に”言った。
そして、その虚空から声が返ってきた。
「それが伝説、伝承になった英霊と言う存在だ。 まあ、俺ァ反英霊ってとこだがなァ」
虚空から現れたのは奇抜な服装を着た美青年だった。
「ねえマグス。 オータムと戦った相手のこと、何かわかるかしら?」
マグス。
過去にウリアたちが推測したように、この男は『ハーメルンの笛吹き男』であった。
そして、オータムとは葉王に倒された女である。
「さっぱりだ。 あいつのような伝承はどこにもねぇ。 あんな化物みたいな奴がいたんなら、必ず語り継がれるはずなのによぉ」
「アインツベルンが作り出した英霊……ってことは考えられないのかしら?」
「流石にそれは無理だろぉよぉ。 いくら英霊召喚の第一人者たるアインツベルンだろうが、英霊を作り出すってのは無理なはずだァ」
葉王の存在がわからないのは当然だ。
そもそも葉王は、この世界の存在ではなかったのだから。
「そうね……オータムを倒した相手は、私たちにとって最大の壁になるでしょう。 どうにか排除したいところね……」
「おそらくあいつぁ俺の笛でも操れねぇだろうなァ。 あいつも俺と同じキャスターのクラスにいる。 しかも、俺なんかよりもずっと高位のなァ」
マグスと女……スコールは葉王の存在が邪魔であった。
ISを意図も簡単に破壊し、あらゆる物を溶かす火力が、マグス自慢の宝具を無効化しうる存在が邪魔であった。
「まったく、面倒なものね……」
「そんなもの、すべて殺せば意味は無い。 殺せばすべて終わりだ」
そこに現れたのは少女であった。
この少女こそがサイレント・ゼフィルスの操縦者なのだ。
「貴女もわかっているでしょう? 私は魔力を持つけど魔術は使えないの。 それに、英霊は現代の兵器ではダメージを与えれない。 こういうのもあれだけど、マグスは宝具が効かない相手には雑魚でしかないのよ」
「確かに事実けどよぉ、はっきり言われると癪だなァ」
マグスはスコールの本音にぼやく。
「……ならばそのマスターを殺せばいい。 英霊はマスターからの魔力供給がなければ消えるのだろう?」
「ああ。 だが、すぐに消えるわけじゃねぇ。 それに、相手のマスターはスコールとは違って本物だァ。 俺たちは最悪、手も足も出ずに殺られるだけだァ」
魔術師と、魔力を持つ者では、天と地ほどの差がある。
所詮、スコールは魔力を持つだけの存在である。
本物の魔術師には勝てない。
「ふん。 もう少し見所のある奴だと思っていたが、期待外れだな」
そう言うと少女は部屋を出て行こうとする。
「エム、ISを整備に回しておいて頂戴。 『サイレント・ゼフィルス』はまだ奪って間もない機体だから、再度調整が必要よ」
「わかった」
エムと呼ばれた少女は部屋から出ると、胸のクロケットを握り締めて瞼を閉じる。
(もう少し……もう少しだ……)
ずっと、待っていた。
焦がれたときは、もうすぐ側まで来ている。
(これで私の復讐がはじめられる……。 そう、やっと―――)
やっと会うことができる。
(……織斑千冬……)
少女の口元は邪悪に歪むのだった。
Side〜三人称〜out