第五話『ウリアVSセシリア』
Side〜ウリア〜
月曜日。
イギリス代表候補生セシリア・オルコットとの対決の日です。
(シロウ、準備はいいですか?)
私は、私の専用機『サーヴァント』に宿る英霊の一人に話しかけます。
<大丈夫だ。 君のほうこそ大丈夫なのかね?>
(問題ありません。 後は戦うだけです)
<では、行くとしよう>
(ええ)
「では、私は行きますね。 一夏は白式の一次移行は終えておいてくださいね。 それと、私の戦いをよく見ておいてください。 見るだけでも勉強になりますから」
ちなみに『白式』とは、一夏の専用機です。
「わかった。 絶対に勝てよ」
「もちろんです。 代表候補生に負けるほど、私は弱くありませんよ」
(行きますよ、シロウ)
<了解した>
私はサーヴァントを【英霊・エミヤシロウ】で展開します。
IS『サーヴァント』は、ISに宿す英霊の力を借りることで、さらなる力が発揮できる特別仕様の異常な機体です。
「それがウリアのISか」
「はい。 これがアインツベルンが私のために用意したIS『サーヴァント』です。 では、行ってきます」
ビットを飛び立ち、アリーナに飛びます。
そこには既にセシリア・オルコットがいました。
「来ましたか」
「はい。 あなたの鼻をへし折る為に来ました」
「言いますわね……。 絶対に見返して見せますわ!」
「やれるものならやってみなさい。 アインツベルン家次期当主の名において、代表候補生に負けることは赦されない。 ですので、私が勝ちます」
もしも負けるようなことがあれば、次期当主になる資格はありません。
『二人とも、準備はいいですか?』
「大丈夫です」
「私もです」
『では、試合開始!』
開始直後に私は『干将・莫耶』を投影します。
この戦い方は、シロウと同じものです。
「中距離射撃型のわたくしに、近距離格闘装備で戦う気ですか……。 つくづくあなたはわたくしを馬鹿にしたいようですわね」
「これが戦いやすいだけです。 それと、見た目に騙されていては、足元を掬われますよ」
私は両手の夫婦剣を投擲する。
「どこに投げてるんですか?」
「考えがあることは明白でしょう?」
私が投擲した夫婦剣『干将・莫耶』は互いに引き付けあい、オルコットさんの背後から接近する。
「壊れた幻想」
剣が爆発し、オルコットさんが爆風に巻き込まれる。
「剣の形をした爆弾ですか……」
「どう受け取るかはあなたの自由です」
再び『干将・莫耶』を投影する。
「また同じ剣」
「これは爆弾でしょうか? それとも普通の剣でしょうか?」
正解は両方。
エネルギーを籠めた剣を『壊れた幻想』によって爆発させたんです。
よって、剣として使うことも、爆弾として使うことも出来るんです。
「っく!」
悩んでますね。
まあ、私の判断次第なんですよね。
「行きます!」
私は接近します。
オルコットさんはレーザーライフルで撃ってくるが、八割近く【エミヤシロウ】の力を体現している『サーヴァント』の前では見切れます。
連続で撃たれるレーザーをことごとく避け、双剣で斬りかかるが、それは避けられました。
まあ、この程度避けてくれないと、代表候補生を名乗るには力不足ですからね。
私はオルコットさんの通り過ぎる際に、双剣を捨てます。
(壊れた幻想)
剣が爆発し、爆風で私は加速して離れ、オルコットさんはまた巻き込まれた。
「厄介な剣ですわね……」
「そろそろ第三世代の兵器を出したらどうです? ブルー・ティアーズの名前の由来である兵装を使わずに負けるつもりですか?」
「でしたら、遠慮なく!」
四基の自立機動兵器『ブルー・ティアーズ』を射出する。
四基のブルー・ティアーズ―――面倒なのでビットでいいですね―――はオルコットさんの命令を受けて接近し、レーザーを放ってくる。
私はそれを全て避ける。
―――ああ、もうわかりました。
オルコットさんはビットから撃つレーザーは全て背後、真上、真下の常人なら反応の遅いところを狙っていんですね。
そして、ビットを操っているときはオルコット自身が動けない。
ライフルで撃ってはいますが、その場から動けていない。
それに、データで見ましたが、後ビットは二つあるみたいですが、それでも余裕ですね。
「なんで当たりませんの!?」
狙いが簡単だからです。
まったく、教科書通りの射撃なんて、当たる訳無いじゃないですか。
さて、終わらせましょう。
『干将・莫耶』を投影し、投擲する。
それを移動しながら行い、アリーナには計五組の『干将・莫耶』が舞っている。
(壊れた幻想!)
ドォォォンッ!
先ほどまでの爆発とは桁違いの爆発が起こる。
その爆発により、四基のビットは破壊され、オルコットさんはボロボロになった。
「あれを受けてまだシールドエネルギーが残っているんですか」
「……ギリギリでしたわ。 ティアーズの操作を止めて動いてなければあれで負けてましたわ」
あれで終わらせるつもりでしたが、動いて爆発の直撃から逃げているとは。
正直言って、予想外でした。
代表候補生としては、合格ですね。
「これで終わらせましょう」
でも、もう終わりです。
私が投影したのはただの弓と剣。
このダメージを受けた状態で真名開放を使うと大変なことになります。
死にはしませんが、とても見ていられないような状態になります。
だから、ただの剣を矢として放つ。
英霊エミヤシロウの弓は百発百中。
ですから、外すわけにはいきません。
「せめて一撃でも!」
レーザーを撃ってきますが、それは避けながら矢を放つ準備を終える。
「これで終わりです」
構えた弓から放たれた矢は見事オルコットさんに当たり、シールドエネルギーが尽きた。
『試合終了。 勝者―――ウリアスフィール・フォン・アインツベルン』
私は、代表候補生相手に無傷で勝利した。
「アインツベルン、三十分の休憩後に織斑との試合を行う。 準備をしておけ」
「わかりました」
三十分後ですか。
あまり休憩はいらないんですけどね。
「一夏、一次移行は終わりましたか?」
「あと少しだな」
ああ、それで三十分の休憩なんですね。
「にしても、強いな、ウリアは」
「このISのおかげでもありますよ。 私の『サーヴァント』はかなり特殊ですから」
「そうなのか? でも、流石だよ」
「ありがとうございます」
やっぱり、一夏といると落ち着きますね。
Side〜ウリア〜out