第六話『ウリアVS一夏 そして……』
Side〜ウリア〜
「織斑、アインツベルン、そろそろ時間だ」
「「わかりました」」
一夏のISの一次移行も終わり、私の休憩時間の三十分が終わろうとしていて、千冬さんが声をかけてきてくれました。
「さて、いい試合をしましょうね、一夏」
「おう。 勝てなくとも、一矢報いるくらいはやってやるさ」
「では、私だけの力で戦いましょう」
<誰の力を使うつもりなのですか?>
(今回は宝具は使いません。 サーヴァントと私自身の力で戦います)
英霊の力を使うには『サーヴァント』本来の姿を変えるが、今回のこの試合では、本来の姿で戦いたい。
<わかりました。 ですが、あまり無理をなさらないように>
(わかっています)
さて、時間ですね。
「行きましょう、『サーヴァント』」
私を纏うのは、先ほどとは違い、雪のように真っ白な装甲。
これが『サーヴァント』の本来の姿。
私の純粋な技術だけで戦う姿です。
「あれ? さっきのとは違うな」
「私のISは大分特殊でして。 この姿が本来の姿になります」
「そうなのか。 んじゃ、戦うか」
「そうですね」
私と一夏は一緒に飛び立ち、アリーナの上空で向かい合う。
一夏のISは『白式』。
その名の通り、純白の装甲に包まれています。
「一夏、操縦の方は大丈夫ですか?」
「まあな。 二回目でこれだけ動かせるのも、ウリアのおかげだ」
「そうですか。 では、始めましょう」
ブザーが鳴り響き、私と一夏の試合が始まります。
ISから知れる情報から、一夏の持つ武器は、近接特化ブレードだというのがわかりました。
世界最強の名を持つ千冬さんが、現役時代に使っていたの後続武器。
もしもの能力をも受け継いでいるのなら、少々厄介ですね。
「行きますよ、一夏!」
「来い、ウリア!」
私は両手に黒鍵を持ち、接近する。
ギィィィン!
私の黒鍵と一夏の雪片がぶつかり合う。
「手数では私のほうが上です。 どう捌きますか?」
両手の黒鍵は合計で六本。
本来黒鍵は剣としての性能が低く、主に投擲に使われる武器ですが、私は近接武器としても使っています。
黒鍵は投擲したりも出来るため、近接戦闘しか出来ない一夏の方が不利です。
そもそも、私と一夏では技術の差が圧倒的にあるので、一夏は絶対に不利なんです。
「双剣との戦いも一応はわかってる!」
「私の武器はこれだけじゃないですよ!」
鋼糸で鷹を作り上げます。
「な!?」
「驚いてはいけませんよ、一夏」
鷹を一夏に向けて飛ばします。
これは、ISを自動追尾するため、私が操作をしなくても扱える。
だから、私は鋼糸の操作に思考を使わなくて済むんです。
「私と鋼糸、二つの攻撃をどう捌きます?」
「ちっ! 厄介だな」
鋼糸の鷹は独立して一夏を狙い、私自身も一夏を狙う。
両手の黒鍵と一夏の雪片が幾度もぶつかり合う。
「隙ありです、一夏」
「なに!?」
鋼糸で出来た鷹が鋼糸に戻り、一夏を拘束する。
「この鋼糸は剣でもあるんです。 締め付ければ締め付けるほど、シールドエネルギーは削られる。 そして、私は自由に動けます」
両手の黒鍵で鋼糸を断ち切らないようにしながら切り裂く。
「ぐっ! あっさり負けて堪るかぁ!」
雪片の刀身が光を帯び、巻きついていた鋼糸を断ち切った。
やはり、その能力も受け継いでいましたか!
私は一夏から一端距離を取り、黒鍵を投擲します。
ですが、それは避けられ、防がれる。
「やっと動ける!」
一夏が急接近してくるのを、私は新たな黒鍵を展開して迎え撃つ。
「うおおおおっ!」
「はああああっ!」
直進してくる一夏の斬撃を右手の黒鍵三本で逸らし、左手の黒鍵で一夏を斬る。
『試合終了。 勝者―――ウリアスフィール・フォン・アインツベルン』
それで一夏のシールドエネルギーが尽き、私の勝利で終わった。
◇
「強いな、ウリアは」
「一夏もとても二回目とは思えない動きでしたよ。 まさか鋼糸が断ち切られるとは思いませんでした」
「逆に俺は、鋼糸に縛られるとは思わなかったぜ」
「あの鋼糸は相当な強度があるんですけどね。 あれが雪片の力ですか」
「そうだ。 の特殊能力『零落白夜』の真価は『バリアー無効化攻撃』。 相手のバリア残量に関係なく、それを切り裂き本体に直接ダメージを与えることが出来る。 あの鋼糸、エネルギーが籠められていたのだろう?」
千冬さんが答えてくれました。
「はい。 あの鋼糸にはエネルギーを通わせて自立追尾を可能にしました。 そして、そのエネルギーで、鋼糸の硬度も高めていたんです」
「零落白夜は斬る対象がエネルギーである限り、それを消滅させる。 まあ、エネルギー装備に対しては最強だ」
今はそんなにエネルギー兵装はありませんけどね。
「そんなに凄いのか」
「だが、当然欠陥もある。 あれは自らのシールドエネルギーを攻撃に転化させているのだ。 つまり、諸刃の剣だ」
でも、いくらエネルギーに対しては最強だとは言っても、消滅対象が零落白夜の消滅させれるエネルギー以上の攻撃だったら通用するはずです。
宝具の真名開放ならば、いくら零落白夜と言えど、消滅させるのは容易ではないでしょう。
「なんにしても、今日はこれでおしまいだ。 帰って休め」
では、戻りますか。
「あーアインツベルン。 少し話がある」
「話ですか? わかりました。 すみませんが一夏、先に戻っていてください」
「俺なら待ってるぞ?」
「長引くかもしれん。 先に戻っておけ」
「ということらしいです」
「わかった。 先に戻ってるからな」
一夏はピットから出て行き、いつの間にかここには私と千冬さんしかいなくなった。
「ウリア」
名前、と言うことは、プライベートみたいですね。
「もしかして、一夏とのことですか?」
「ああ。 私はお前と一夏の行動を見ていた。 お前ら、付き合っているのか?」
「……はい。 私と一夏は付き合っています」
「私はお前の気持ちも、一夏の気持ちも知ってはいた」
千冬さんがドイツ軍で教官をしていたときに、何度かあって話をしたんです。
そのときに言ったんですよね。
私が一夏のことが好きだって。
「正直言って、私はお前たちが繋がってくれて嬉しい。 だがな、一夏は私の大事な家族だ」
「それはわかっています」
一夏と千冬さんは両親に捨てられてしまっている。
だから、一夏の唯一の家族なのだ。
「私を認めさせてみろ」
「……どのようにして?」
「ここはIS学園だ。 そして、お前は企業代表だ。 言いたいことがわかるか?」
「……つまり、ISで戦えと?」
「そうだ。 お前とお前のISの相性は世界最高だ。 それに、お前の実力も申し分ない。 その力を持ってして、私を倒して見せろ」
私が『サーヴァント』を使ったときのISの適正値のランクはSSSランク。
つまり、過去最高のSランク保持者である、モンド・グロッソのヴァルキリー、ブリュンヒルデ以上のランクです。
私は、ISの適正値に関しては、全世界の頂点に立っているんです。
ましてや、『サーヴァント』は伝説の英雄たちの力をも扱うIS。
英霊たちの力を貸してもらう以上、負けるわけにはいきません。
それに、一夏との交際も掛かっているんです。
何が何でも、負けるわけにはいきません。
「わかりました。 日時はいつでしょうか?」
「今週の日曜日だ。 私とて準備が必要だ」
「日曜日ですね? わかりました」
「私が伝えたかったことは以上だ。 もう戻っていいぞ」
「失礼します」
私は千冬さんに一礼し、ピットを後にしました。
相手はあの千冬さん。
現役時代よりも劣っていると言っても、世界最強であるのは変わらない。
でも、一夏との交際を認めてもらうため、絶対に負けるわけにはいきません!
Side〜ウリア〜out