第五十九話『高機動実習』
Side〜ウリア〜
「はい、それでは皆さーん。 今日は高速起動についての授業をしますよー」
山田先生の声が第六アリーナに響き渡ってます。
「この第六アリーナでは中央タワーと繋がっていて、高速機動実習が可能であることは先週いいましたね? それじゃあ、まずは専用機持ちの皆さんに実演してもらいましょう!」
山田先生がそういって手を向ける先には、セシリアと一夏と私がいます。
「まずは高速機動パッケージ『ストライク・ガンナー』を装備したオルコットさん!」
BT兵器をすべて推進力に回しているのが、セシリアのパッケージの特徴です。
「それと、通常装備ですが、スラスターに全出力を調整して仮想高速機動装備にした織斑君! そして当日は不参加になりますが、高機動型のモードの『サーヴァント』を展開したアインツベルンさん! この三人に一周してきてもらいましょう!」
私は『サーヴァント』を【英霊・クー・フーリン】で展開しています。
単純な速度では『サーヴァント』の中ではトップですからね。
瞬間的なものも含めれば多少上下しますが、それでも速いんです。
「では、……3・2・1・ゴー!」
山田先生のフラッグで私たちは一気に飛翔、そして加速をして音速を突破します。
そして、私はすでに飛び出ています。
単純な機体性能の差ですね。
「お先に失礼します」
私はさらに速度を上げます。
一夏たちからどんどん間を空けて、あっという間にかなりの距離が開きました。
ちなみに、私が不参加なのは操縦レベルが違いすぎるのと、機体性能にも差があるからです。
まあ、真名開放したら大抵は一撃で終わりますからね。
特に対城宝具の場合は。
一番えぐいのは、スタート直後に最後尾からの『約束された勝利の剣』で一掃ですね。
『約束された勝利の剣』は超威力ですし、広範囲ですし、避けるのも防ぐのも不可能でしょう。
飲み込まれて一瞬で決着が付きます。
『俺も負けてられないな』
一夏も速度を上げ、私を追います。
ですが、いくら白式が第四世代相当の機体であっても、英霊の馬力には勝てません。
その距離はほとんど縮まりません。
今は妨害は無しなので、機体性能の差が顕著に出ますね。
それに、私はまだ全力は出していないですし、単純な速度だけを競う物でしたら誰にも負けません。
私はタワーから折り返し、地上へ戻った数秒後に一夏、そのさらに数秒後にセシリアが戻ってきました。
「はいっ。 おつかれさまでした! 三人ともすっごく優秀でしたよ〜」
ぴょんぴょん跳ねる山田先生。
……その胸が揺れています。
……あの大きさは反則だと思います。
「いいか。 今年は異例の一年生参加だが、やる以上は各自結果を残すように。 キャノンボール・ファストでの経験は必ず生きてくるだろう。 それでは訓練機組の選出を行うので、各自割り振られた機体に乗り込め。 ぼやぼやするな。 開始!」
毎年の恒例行事であるキャノンボール・ファストは本来、整備課が登場する二年生からの参加のイベントなんですが、今年は予期せぬ出来事に加えて専用機持ちが多いことから、一年生時点で参加することになったのです。
まあ、私は出ませんが。
訓練機部門はクラス対抗戦となるため、例の如く景品が出るようです。
「よーし、勝つぞ〜」
「お姉様にいいとこ見せなきゃ!」
「勝ったらデザート無料券! これは本気にならざるを得ないわね!」
生徒たちはやる気満々で燃えており、それに触発されてなのか教師たちの指導にも熱が入っています。
特に山田先生はいつも以上のやる気を見せています。
……空回りしないといいんですが。
『やる時はやるんだけどな……』
リグレッターのつぶやきに賛同します。
いつもああだといいんですが、普段はちょっとあれなんですよね……。
それが残念なんですよね、山田先生って。
「相変わらずウリアは凄いな」
そこにやってきたのは一夏でした。
「まあ、ずっとやってきたことですしね」
「それでも、いろんなことに万能でいれるのが凄いんだよ」
ひたすらにやってきましたからね。
魔術に体術に剣術に槍術に弓術etc.
ありとあらゆるものを、その道のプロ(英霊たち)に教わってきましたので、それなりに万能になれますよ。
「ところで一夏。 白式はやっぱり雪片は封印ですか?」
「ああ。 今回は雪羅と近接格闘だけでやる。 相手の攻撃は避ければ問題ないしな」
一夏は瞬間的な零落白夜を体得しているので、零落白夜のデメリットはあまり気にしなくてもいいのですが、一夏はそれでも封印するようです。
まあ、一夏は雪片無しでも十分強いですしね。
本番が楽しみです。
Side〜ウリア〜out