第六十二話『一夏の誕生日パーティー』
Side〜ウリア〜
「せーのっ」
『一夏(さん)、誕生日おめでとうっ!』
シャルロットの合図に、一斉にぱぁんぱぁんっとクラッカーが鳴り響きます。
「お、おう。 サンキュ」
今の時刻は夕方の五時。
場所は織斑家、なんですが……。
「この人数は何事だよ……」
一夏が返答で一瞬詰まったのはこの所為でしょう。
ちなみに、メンバーを整理すると、今日の主役の一夏に、私と、いつもの面々である箒、鈴、セシリア、シャルロット、ラウラ。
それと、弾さんに蘭ちゃん、そして一夏と弾さんの男友達の御手洗数馬さん。
さらに、生徒会メンバーの楯無に虚さん、虚さんの妹でのほほんさんこと本音ちゃん。
それとなぜかいる新聞部のエース・黛さんがいます。
……ほんと、どうしているんですか?
後は、霊体化している英霊たち。
英霊たちを含めないにしても、物凄い数ですね。
「凄い人数ですね」
「だな。 まさかここまで集まるとは思ってもいなかった」
今回、一夏の誕生日パーティを開くことになったきっかけは弾さんの一言でした。
『今年はパーティ開くのか?』と、一夏と電話で話していた弾さんがそう言ったそうです。
仲が良かったからなのか、一夏がよく一人でいるからなのかは知りませんが、去年一昨年と誕生日パーティを開いていたそうなのです。
一夏は最初は私と二人っきりで過ごそうと考えていたようなのですが、せっかく開いてくれると言うことで、私の後押しもあり、こうして開かれることとなったのです。
それに、ちょうどいいですしね。
あんなことがあったから、今ははしゃぎたいと言う気持ちも、きっとあるのでしょう。
「久しぶりだな、数馬」
彼が御手洗数馬さんのようです。
優しそうな雰囲気の男の子でした。
「ああ、久しぶり。 少し見ないうちに変わったんじゃねーか?」
「まあ、今まで以上に鍛えられたし、彼女も出来たしな。 少しは変わったんじゃないか?」
「みたいだな。 弾から聞いていたけど、本当に凄い可愛い娘だな。 彼女が一夏がずっと思い続けていた娘なんだよな?」
一夏がずっと私を思っていたというのは、意外に知られているようですね。
いえ、一夏の友達なら知っていてもおかしくはありませんか。
「ああ、そうだぜ」
「初めまして。 私はウリアスフィール・フォン・アインツベルンと言います。 皆はウリアと呼ぶので、ウリアと呼んでもらって構いません」
「ご丁寧にどうも。 俺は御手洗数馬。 俺のことも数馬でいいっすよ」
「では、数馬さんと呼ばせていただきますね」
「念のために言っておくが、もしもウリアに手を出したらいくら数馬といえど容赦はしないからな」
「バーカ。 誰が手を出すか。 確かにすっげぇ惹かれるけどさ、お前が何年も思い続けてきた相手に手を出すかよ。 俺はお前の努力を知っているし、そのお前の彼女に手を出すほど、俺は落ちぶれてはいねーよ」
「ははっ。 だったらいいんだよ。 まあ、お前がそんなことするわけねえよな」
数馬さんはやはりいい人のようです。
一夏の友達はいい人ばかりのようです。
「んじゃま、俺は邪魔になるからまたな」
「ああ、またな」
数馬さんはそう言うと去っていきました。
気を遣わせてしまったみたいです。
「いい奴だろ、あいつ」
「そうですね。 一夏の友達に悪い人はいないんですか?」
「さあな。 でも、弾と数馬は普通にいい奴だぞ。 だから今でも仲良くしてるんだけどな」
一夏は笑いながらそういいました。
一夏の楽しそうな笑顔を見ると、私も自然と笑みがこぼれます。
「あの、一夏さん。 私、ケーキを焼いてきました! よかったら食べてください!」
「おお、蘭か。 わざわざありがとな。 ……うん、美味い。 料理上手だな、蘭は。 振ったような俺が言えることじゃないんだが、いい嫁さんになれるぞ」
一夏は蘭ちゃんが作ったケーキを受け取ると、そのチョコケーキを食べて感想を言いました。
「ありがとうございます。 一夏さんにそう言っていただけると自信になります」
一夏は料理万能ですからね。
その一夏に高評価をされることは自信に繋がるでしょう。
「そういえば、途中で滅茶苦茶になっちまったけど、今日は楽しめたか?」
実はあの時、蘭ちゃんと弾さんに招待チケットを渡していたのです。
二人には直接会いませんでしたが、ハサンをつけておいたので問題はありませんでした。
まあ、楯無が対応していたので、後でお礼を言っておきませんとね。
「はい! とっても凄かったです! ですけど、どうしてウリアさんは出なかったんですか?」
蘭ちゃんは私が出なかった理由を聞いてきました。
ああ、そういえば言っていませんでしたっけ。
「ああ、それか」
一夏は苦笑しながら反応した。
「それはな、ウリアが俺たち一年の中で―――いや、学園最強だからだ。 ウリアは学園の誰も倒せないほどに強いから、ウリアが出るとレースする意味が無いんだよ。 だって、俺たちがどんなに抗ったところでウリアには勝てないんだから」
まあ、一度世界最強の千冬義姉さんに勝っていますからね。
「そ、そんなに強いんですか? ウリアさんって」
「ああ。 一応学園最強の証である生徒会長も瞬殺だ。 まあ、ウリアは生徒会長になってないけどな」
「私よりも楯無の方が適任ですよ。 私がやるのなら恐怖政治になってしまいますからね」
楯無との試合で見せたギルガメッシュの力。
あれでも全然本気は出していなかったのですが、あれを見てしまった他の生徒たちが脅えないわけがありません。
楯無は学園最強と知れていましたが、その楯無が一切手も足も出ず、ただ恐怖に脅えながら戦っていた、あの光景を見てしまっては、脅えないでと言っても無駄でしょう。
「まあ、そんな感じでウリアの参加は認められないんだよ。 ホント、もっと強くなりたいものだ」
一夏は十分強いんですよ?
まだ私や千冬義姉さんには勝てませんけど、一夏は国家代表並か、それ以上の実力を持っているんですよ?
「と、とりあえず、ウリアさんはやっぱり凄いってことはわかりました」
蘭ちゃんは、そう言いました。
まあ、私が強いのは英霊たちのおかげなんですけどね。
私は一人で戦っているのではなく、いつも英霊の力を借りて、その力で強いだけ。
そもそも、私個人の力では、きっと千冬義姉さんには勝てませんよ。
それだけ、私の持つ英霊というアドバンテージは大きいんです。
Side〜ウリア〜out