小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

第六十三話『一夏の誕生日パーティー(中編)



Side〜ウリア〜

「はい、一夏。 アンタのためにわざわざ作ってあげたわよ」

ゴトッ、とテーブルの上にどんぶりを置いた鈴。
その中身はラーメンで、とても美味しそうです。

「出来立てだから美味しいわよ。 何たって麺から手作りだからね」

「へぇ、手込んでるなぁ」

「ささっ、冷めないうちに食べなさい」

「おう。 じゃ、いただきます」

ずずずっと麺を啜る一夏。
鈴は、一夏の感想を待ちます。
一夏はもぐもぐと租借し、そしてごくんと呑み込みました。

「ど、どう……?」

鈴が一夏の評価を固唾を呑んで待ちます。

「……うん、美味い! また腕を上げたな!」

「よかったぁ〜」

鈴は気が抜けたようにそう言った。
どうやら、一夏は料理評論家として見られるらしいです。
まあ、一夏の料理の腕は高校生の域から脱していますからね。

「ウリアも食ってみろよ。 美味いから」

「私が食べてもいいの? これは一夏に作ってきたものでしょ?」

「いいわよ、食べても。 一夏に作ってきたんだし、それにもう一夏にあげたの。 一夏がいいって言うならそれを止める権利はアタシには無いわ」

止める権利はあるでしょうに……。

「では、いただきますね、鈴」

「どうぞ召し上がれ」

私は一夏が使っていた箸を受け取り、そのまま麺を啜ります。
スープは海鮮メインの出し汁で、とてもさっぱりして後味もいいです。
面も歯ごたえがあって、そこそこのお店にも出せるでしょう。

「美味しいです。 お店にも出せるんじゃないでしょうか?」

「一流までとはいかないけど、それなりの店くらいに匹敵するぞ」

「……褒められているのか貶されているのか今一わからないわね」

貶していません。
高校生にしては美味しいですから。

「褒めてるぜ。 一般人、しかも高校生でこれだけの味が出せてるんだ。 もっと誇るべきだ」

「そうですよ。 これならもう少し上達すればお店でも十分出せます」

「あんたら二人が言うなら間違いはなさそうね。 これからも練習しないとね」

「鈴ならもっと上を目指せますよ」

「料理が出来て損じゃないし、これからも練習していくわよ。 店を出すかどうかは別としてね」

鈴はそう言うと去っていきました。
とりあえず、私たちはラーメンを食べ終えました。
とても美味しかったです。
ラーメンの入っていたどんぶりを片付けるためにキッチンへ向かうと、そこには思い耽っているセシリアがいました。

「よ、セシリア。 楽しんでいるか?」

「あ、一夏さんにウリアさん。 ええ、楽しんでいますわ」

「それならいいんだよ。 にしても、何考えていたんだ? やっぱあいつのことか?」

そこを聞きますか……。

「ええ……」

「まあ、気にしすぎだ。 盗られたのは国の責任だし、お前が気にすることじゃない。 それに、力量差はそう簡単に埋まるものじゃない。 地道に努力して手にいれるものだ」

「わかってますわ……ですが……」

「自分の力が足りないのなら、仲間を頼ればいいでしょう。 自分一人で背負い込んでは、格上の相手には勝てませんよ」

「そうです、よね……。 ……ウリアさん」

「何ですか?」

セシリアが言いたいことは何となくわかります。

「これから、わたくしも鍛えてくれませんか? 弱いままでは、いつまでも皆さんの足手まといでしかありません。 ですから、わたくしも強くなりたいんです」

やっぱりですか。

「いいですよ。 ですが、覚悟はしておいてくださいね? 貴女が望む以上、私は容赦しませんから」

私は結構スパルタです。

「望むところですわ。 ウリアさんや一夏さんに追いつくためなら、どれほど辛くても耐えて見せますわ」

「ならば、明日からやりましょう」

「わかりましたわ。 よろしくお願いしますわ」

セシリアの目にはしっかりとした覚悟が宿っていました。
……いい目ですね。

「にしても、祝い事なのになんでこんな話になってるんだ?」

「一夏がそう振ったからでしょう」

「あ、そうだっけ?」

「一夏……」

流石にこれは私も呆れますよ……。

「ま、まあ! しっかりと楽しんでくれよな!」

「………………」

一夏はそう言いますが、私はジト目で一夏を見ます。

「う、ウリア。 俺が悪かったからそんな目で見ないでくれ。 そんな目で見られたら俺は……俺は……!」

このまま見続けたら、一夏は発狂しそうですね……。

「はぁ……。 ……こんな楽しむべき時に、そんな話題を振らないでくださいね?」

「お、おう!」

まったく、楽しむときは思いっきり楽しむものでしょう。
あんな話題で暗くしてはいけません。
私はふと楯無を見つけたので、楯無に今日のことのお礼を言っておきましょう。


Side〜ウリア〜out


-65-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える