小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第七十二話『取材(後編)



Side〜ウリア〜

(一夏はどんな服を着るんでしょうか?)

どうやら、出版社側は私個人に選ばせるようにしたようで、私は数あった服を自分で選んで、それに着替えています。
メイクはしてくれたんですが、メイクさんがどうしたらいいか悩んでました。

『マスターのルックスは、手を施すことがなくとも綺麗だからな。 どうすればより綺麗に見えるか、考えていたのだろう』

リグレッターは、メイクさんが悩んでいた理由を推測したそうです。
でも、そのメイクさんは腕がよく、綺麗に仕上げてくれました。
ちなみに、私が選んだのは、ミニスカートにブラウス、カーディガンを羽織っています。

「さて、行きますか」

着替え終えたので、スタジオに行きましょう。




 ☆




(……視線が多いですね)

一夏はまだ来ておらず、私はスタジオの椅子に座って待っています。
そんな中、私を見る視線が。
主に男性スタッフで、熱っぽい溜息を漏らしています。
その中には女性もおり、羨望の視線を感じます。
もうこんな視線には慣れていますが、気にならないわけではありません。

「すみませーん、遅れましたー。 織斑一夏君、入りまーす」

来たようです。

「うーん、なんかこれ変じゃないですか?」

一夏はどんな服を着ているんでしょうか?

「ぜーんぜん! 超似合ってるわよ。 十代のスーツ姿っていうのもいいわねぇ」

スーツ、ですか?
私は一夏の方を見ると、カジュアルスーツを着こなした一夏の姿がありました。
私の目から見ると、とても格好よく見えます。

「悪い、待たせちまったな」

「いえ、大丈夫ですよ」

一夏は私に近づくと、謝ってきました。
そして一夏は、謝ると私の全身を一瞥しました。

「……やっぱり、ウリアには何でも似合うな。 綺麗だ」

「一夏も格好いいですよ。 あまりスーツ姿の一夏をイメージしたことはありませんでしたが、似合っていますよ」

「そうか? ありがとな」

私と一夏は普段とあまり変わらない会話をします。
ですけど、一夏がスーツ姿ということもあり、新鮮な感じがしますね。

「はーい、それじゃあ撮影始めるわよー。 時間押してるから、サクサクいっちゃいましょう!」

渚子さんが手を叩いて仕切ります。
写真撮影が始まりました。


Side〜ウリア〜out


Side〜一夏〜

ウリアの姿を見て、俺はドキッとした。
いつもはしないメイクをしていて、いつも以上に綺麗で、可愛かったからだ。
男性スタッフがウリアを見ていたが、それは仕方が無いだろう。
だって、ウリアはそれほどまでに綺麗だったのだから。

(ウリアの恋人でいれて、本当に良かった)

俺は心の底からそう思う。
長年片思いでいたウリアに、何の因果か(といっても、俺のことに関してはどうせ束さんの仕業だろう)IS学園に入学して再開した。
しかも、そこでウリアと両思いになれた。
俺は今までの人生の中で、一番嬉しかった瞬間がそれだ。
ISの特訓の時も、IS学園で視線を浴び続けても、それでもウリアと一緒にいれるだけで、俺は幸せでいれる。

「織斑君、もっとアインツベルンさんによって」

「あ、はい」

俺たちは指示通りにポーズを変えていた。
今は同じソファーに座っているので、俺は指示通りにウリアに近づく。

「うーん、並んで座っているだけっていうのも味気無いわねー。 織斑君、アインツベルンさんの腰を抱いて」

肩が触れ合うくらいに近づいているのだが、それだけでは満足しないようだ。
だけどまあ、俺はそれをやる。
いつもやってることだしな、恥じらいなんて無い。

「んー、もう少しオーダーしてもいい?」

まだ足りないのか。
俺はウリアを見る。
俺は構わないが、ウリアがどう思うかわからないからだ。
ウリアの目は、『構わない』と言っていた。

「大丈夫です」

「じゃあ、アインツベルンさん。 織斑君の首に腕を絡めてくれる?」

「わかりました」

ウリアは返事をすると俺の首に腕を絡め、俺を見つめる。
俺もウリアを見つめ返す。
俺とウリアの顔の距離は十センチにも満たないだろう。
だが、そんな距離でも、俺とウリアは見つめ合う。

カシャッ!

フラッシュ音が聞こえた。
どうやら、満足してくれたようだ。

「んん〜。 今までで一番良い絵が撮れたわね。 二人とも、ありがとう」

とても満足げな渚子さん。

「お疲れ様! じゃあ、二人とも着替えちゃって。 あ、服はそのままあげるから、持って帰っちゃって!」

「「わかりました」」

この服はもらえるようだ。
貰えるのならありがたく貰っておこう。

「えーと、ディナー券は後日携帯にデータ転送してあげるから、帰る前にアドレス教えてね。 それじゃあお疲れ!」

「「お疲れ様でした」」

渚子さんは画像データを抜き取り、もう携帯端末で眺めていた。
薫子さんの姉だと言うのは納得だな。

「んじゃ、ウリア、着替えようぜ」

「そうですね」

とりあえず、今は着替えよう。
でも、時間はあまりないから、食事くらいしか出来そうに無いな。


Side〜一夏〜out


Side〜ウリア〜

「何か、新鮮な体験だったな」

「一夏からしてみればそうですね。 私は何度かしているのであまり感じるものはありませんでしたが。 でも、一夏と一緒にやれたことは楽しかったですよ」

取材からの帰り道、私たちは来る時同様に腕を組んで歩いていました。
私たちの手には紙袋があり、今日貰った衣装が入っています。

「時間も時間だし、飯くらいしか食えないな」

「そうですね」

もう夕食時です。
今から寮に戻れば、ギリギリの時間になるでしょう。

「でも、今からだとどこも混んでるか」

今日は日曜日ですし、大抵の場所は混んでいるでしょう。

「雰囲気とかへったくれも無いけど、五反田食堂に行かないか?」

「五反田食堂ですか? いいですね。 あそこは美味しいですから」

五反田食堂とは弾さんたちの家庭で営んでいる定食屋で、以前食べた時はその味に驚きました。
あれが隠れた名店と言うものですね。
はっきり言うと、あの味ならもっと高くても十分やっていけます。

「じゃあ行くか」




 ☆




歩くこと三十分、目的の五反田食堂に着きました。
店内に入ると、席は半分ほどしか埋まっていませんでした。
あんなに美味しいのに、勿体無いですね……。

「お、弾だ」

「あれ!? 一夏にウリアさんじゃん!」

エプロンをした弾さんが料理を運んでいました。
お手伝いでしょうか。

「じゃあ、注文決まったら呼んでくれ」

そう言って弾さんはカウンターに戻っていきます。

「ウリア、どうする? 俺は『焼き魚とフライの盛り合わせ定食』にするけど」

前回は(といっても初めて)『業火野菜炒め定食』を頼んだので、別のがいいですね。
一夏の食べたものを少し貰いましたが、どれも美味しかったので、どれも食べてみたいんです。

「そうですね……今日は『生姜焼き定食』にします」

「わかった。 おーい、弾ー。 注文いいか?」

「ほいほい」

弾さんは一夏が呼ぶとすぐにやってきました。

「俺は『焼き魚とフライの盛り合わせ定食』で、ウリアが『生姜焼き定食』で」

「ん、了解。 じゃあちょっと待っててくれ」

伝票を書いた弾さんは、それを持って調理場へと持って行きます。
そこで、五反田食堂の店主で、弾さんと蘭ちゃんの祖父である厳さんが私たちに気づきました。

「ん? 一夏に譲ちゃんじゃねえか!」

「あ、どうも。 お邪魔してます」

「また来ちゃいました」

「譲ちゃんみたいな娘はこんな店よりも似合う店があるだろうに」

「ここの料理は美味しいですし、何度も食べたくなりますから」

「おうおう、嬉しい事言ってくれるじゃねえか」

本当にここの料理は美味しいですからね。
ここを教えてくれた一夏には感謝です。

「おーい! 蘭! おーい!」

二階に向けて大声を出す厳さん。
どうやら蘭ちゃんを呼ぶみたいです。

「なにー?」

「店に来い! 急いでな!」

「なんでー?」

「いいから来い!」

無理矢理な厳さんです。
二分後、それでも蘭ちゃんは来ました。
視線を気にしているようですが、私服のままでした。

「おじいちゃん、何? 私、宿題やってたんだけど―――って一夏さんにウリアさん!? どうしてここに!?」

私たちがいることに驚く蘭ちゃん。

「どうしてって、飯食いに来たんだよ」

「ここの料理は美味しいですからね」

蘭ちゃんはこの店があまり好きではないみたいですが、もっと誇るべきだと思います。

「そうなんですか。 あ、ウリアさん。 ご飯食べ終わったら話聞いてもらってもいいですか?」

「構いませんよ」

私は蘭ちゃんの相談役をしていて、よく蘭ちゃんの話を聞いています。
蘭ちゃんの役に立てるかはわかりませんが、アドバイスもしています。
そもそも、以前約束したことですしね。

「おい、蘭! 料理できたから運べ」

しばらくすると、厳さんが蘭ちゃんに声をかけました。

「あ、うん、わかった」

カウンターで料理を受け取った蘭ちゃんが料理を運んできます。

「お待たせしました」

「お、来た来た。 んじゃ、いただきます」

「いただきます」

私たちは料理を食べ始めました。




 ☆




「今日は楽しかったな」

「そうですね」

私たちがいるのはIS学園の自室です。
蘭ちゃんの相談を聞いた後、帰ってきたんです。

「ってか蘭の奴、これどうするんだよ……」

一夏が持つのは一枚の紙。
その内容は、蘭ちゃんの通う『聖マリアンヌ女学園』の学園祭の招待チケットです。
蘭ちゃんは『来なくても結構です』って言ってましたけど、貰った以上は行くべきなのでしょう。
ですが問題は、その日が『取材報酬のディナーと同じ日で、招待券が一枚しかない』ということです。
聖マリアンヌ女学園も、IS学園同様に一人一枚の招待チケットが配られるようで、それを渡してきたのです。
一枚しかないと言うことはつまり、私か一夏、どちらかしかいけない、ということです。

「蘭ちゃんはどうにかして私と一夏が一緒に入れるように頑張ってるみたいですけど、そう上手くいかないでしょう」

蘭ちゃんは生徒会長みたいですけど、そう簡単に学校側が決めたルールを覆せないでしょう。

「まあ、蘭のことだし何か考えがあるんじゃないか?」

「そうかもしれませんね。 まあ、その招待券についてはもう少し考えるべきでしょうね」

「だな」

とりあえず、今は簪のことです。


Side〜ウリア〜out



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