小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第七十三話『機体の状態』



Side〜ウリア〜

「大分出来上がってきましたね」

「……ウリアさんが、手伝ってくれたおかげです」

簪の打鉄弐式は、あと少しで完成といったところです。
残りは稼動データの収集と、マルチ・ロックオン・システムです。
簪の打鉄弐式の武装の一つで、高性能誘導ミサイルを搭載しています。
計六基からなるそれらは、一度に八発の高性能小型ミサイルを備えているポッドで、最大で同時に四十八発を一斉射撃を行える代物ですが、『四十八基全てを独立稼動させる』というシステムが、マルチ・ロックオン・システムになります。
それを完成させるのは、流石の私も困難です。
出来るにしても、時間は掛かりますが、私の思った以上に時間が掛かっています。

「とりあえず、稼動データを取ろうぜ。 システムの方が間に合わない可能性がゼロじゃないんだし、機体だけは完璧にしておいた方がいいだろ?」

一夏はそう提案してくれました。
確かに、私もまだ作った事の無いシステムなので、タッグマッチ当日までに完成させれるかはわかりません。
それなら、機体とそれ以外の武装だけは完璧に仕上げておいた方がいいですね。

「そうですね。 では、第六アリーナで一通り取るとしましょう」

「さんせ〜い」

ちなみに、協力者が一人。
それが通称のほほんさんこと布仏本音。
のほほんとしていますが、整備士としての腕は一年生にしては高いです。
流石は代々更識家に仕える布仏家の人間ですね。
……まあ、普段の様子からはまったく想像できませんが。

「では、行きましょう。 私と本音でデータを取っているので、二人は軽く模擬戦でもしてみたらどうでしょう」

「そうだな。 簪さんの実力を見るにはちょうどいいし、やってみるか」

「……お、お手柔らかにね……?」

一夏の実力を知っているのでしょう。
簪はおずおずと言った様子で言いました。

「大丈夫大丈夫。 軽くだから」

一夏は簪を安心させるように言いますが、そんな軽い調子だと、逆に不安になりませんか?

「……軽くだからね?」

ほら、再確認してます。

「大丈夫だって。 完璧に完成しているわけじゃないんだし、もしものことを考えるととてもじゃないが本気は出せない」

「そ、そう……」

安心したように息をつく簪。
そんなに心配していたんですか。
一夏はそういうところはちゃんと弁えているので心配など無用です。

「さ、時間は限られているんですから行きましょう。 やることはまだまだあるんですから、急ぎますよ」

「おう、そうだったな。 行こうぜ」

そう言って歩き出す一夏。
私たちも行きますか。


Side〜ウリア〜out


Side〜一夏〜

『一夏、簪、準備はいいですか?』

アリーナについて、俺と簪さんが空中で向かい合うと、ウリアはコントロールルームから声をかけてきた。

「大丈夫だ」

「……私も、大丈夫です」

『では、始めてください』

俺と簪さんがそう言うと、ウリアは開始を促した。

「簪さんから来な。 今回は簪さんの実力と、機体のデータ収集が目的だから、基本俺は迎撃だけだ。 だから、遠慮なく来い!」

俺は雪片を展開して、簪さんへと叫ぶ。

「……わかった」

「っ」

簪さんの纏う雰囲気が変わった。
内気な簪さんと同一人物だとは思えないほどに、鋭い物だった。
簪さんの纏う雰囲気は、代表候補生の名に恥じない物だと俺は感じている。
いや、並の代表候補生以上だ。
機体が無い所為で今まで聞くことのなかったが、簪さんはかなりの実力者だ。
はっきり言って、予想以上だ。

「……行くよ」

これは、機体が完成したら本気で戦いたいな。


Side〜一夏〜out



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