第七十四話『完成』
Side〜ウリア〜
「どうにか間に合いましたね」
「ウリアさんのおかげ、です。 ウリアさんがいなければ、まだ完成の目処が立っていなかったでしょうから……」
簪の『打鉄弐式』が完成しました。
武装も、システムも、稼動データもばっちりで、簪が動かしやすいように合わせてあります。
ちなみに、明日が本番です。
「流石ウリアだな。 俺だけじゃあ絶対完成させることは出来なかった。 マルチ・ロックオン・システムの完成なんて、夢のまた夢だった」
「一夏が手伝ってくれたからですよ。 本音も、ありがとうございます」
「ウー様に褒められた〜」
のほほんさんは独特な渾名をつけます。
『ウー様』が私の渾名で、一夏には『おりむー』という渾名がついています。
にしても、どうして様付けなのでしょうか?
初めてやった楯無のお仕置きが原因なのでしょうか?
……本音に言ったところで、きっと変わりませんね。
考えるのはやめましょう。
私が思うに、束さんと通じるところがあるので、放って置くことが得策だったりするんですよね、本音って。
「さ、明日は本番ですから、今日はもう休みましょう。 明日体調を崩しては、元も子もありませんからね」
機体なら完成しましたし、戦い方なら、話し合いはしていましたし、一夏なら簪にも合わせれるでしょう。
今の一夏なら、楯無以外には勝てるでしょう。
楯無は……彼女本来の実力が測れていないので(私に脅えて、楯無本来の実力がわからない)、実質楯無の実力は未知数です。
☆
「何とかなったな。 ウリアがいなかったら間に合わなかった」
「さっきも言いましたけど、一夏たちが手伝ってくれたからですし、頑張ってくれたからです。 私は、その気持ちに応えただけです」
自室に戻り、一夏と話しています。
私はただ、必死な一夏と、やる気に満ちた簪を応援しただけです。
あんな二人を見て、手を抜けるわけがありません。
コンコン。
また来ましたか。
気配からして、まず間違いなく楯無でしょう。
最近よく来るので、予想通り、と言った感じです。
「入ってください」
「失礼します」
扉を開けて入ってきたのは、やっぱり楯無でした。
まあ、気配が楯無のものでしたから、楯無以外考えられないんですが。
「本当によく来ますね。 そんなに簪が気になりますか」
「気にならないわけがないじゃないですか」
本当に楯無はシスコンですね。
……まあ、私もあまり人のことは言えませんが。
「……それで、簪ちゃんの機体は……?」
「完成しましたよ」
「本当ですか!?」
嬉しそうですね。
まあ、楯無は影ながら簪を見てたんでしょうし、シスコンですし、わからなくはありませんが。
「ええ、本当です。 簪も頑張っていましたよ」
「よかったぁ……」
安堵するようにほっとする楯無。
そこまで間に合うか心配だったんですか?
「ついに、明日は本番ですね」
「そうですね。 一夏君と簪ちゃんと戦えるのを楽しみにしてます」
「ははっ、それは俺もです。 生徒会長の実力、実際に体感したかったですから。 でも、俺と当たる前にラウラに負けないようにしてくださいよ。 ラウラ、滅茶苦茶やる気でしたから、油断してると足下掬われますよ」
確かに、ハサンにラウラの様子を見に行かせたら、いつも以上にやる気を迸らせて、シャルロットと訓練してましたからね。
「あら、そういう一夏君もね。 まあ、まだ対戦表は決まってないからどうなるかはわからないけどね」
生徒会長である楯無なら、対戦表を仕組むことも出来そうですが、今回は完全にランダムみたいです。
「ああ、楯無さん」
「何かしら?」
一夏は、好戦的な目で言います。
「楯無さんならないと思いますけど、俺を……簪さんを甘く見ないほうがいいですよ。 もしも油断をしているのなら、それは改めてください。 でないと、痛い目を見ますよ」
「安心なさい。 君たちを甘く見るほど、私は落ちぶれてはいないわ」
「そうですか。 それならよかったです」
一夏は安心したように言いました。
確かに、一夏がIS学園内でどれだけの強さを持っているかは気になりますね。
本気の楯無と戦うのなら、それもちゃんと測れるでしょう。
Side〜ウリア〜out