第七十五話『タッグマッチ開催』
Side〜ウリア〜
翌日、大会当日の朝。
「それでは、開会の挨拶を更識楯無生徒会長からしていただきます」
今はタッグマッチの開会式の真っ最中で、一夏は生徒会メンバーなので、司会用マイクスタンドから一歩下がった虚さんの後ろに整列しています。
私は所詮お手伝いなので、クラスの列に加わっています。
「どうも、皆さん。 今日は専用機持ちのタッグマッチトーナメントですが、試合内容は生徒の皆さんにとってもとても勉強になると思います。 しっかりと見ていてください」
相変わらず、人の前に立つのに慣れている楯無。
楯無が人気なのは、そのカリスマ性と、無駄にノリが良すぎるからでもあります。
「まあ、それはそれとして!」
楯無が扇子を開くと、そこには「博徒」の文字が。
……ノリがいいのは悪いことじゃないですけど、悪ノリしたら大変なことになるので、悪ノリしない程度に抑えておかないと。
「今日は生徒全員に楽しんでもらうために、生徒会である企画を考えました。 名付けて『優勝ペア予想応援・食券争奪戦』!」
わああああっ! と、整列している女子のほとんどが騒ぎます。
まあ、やることは単なる賭けなんですけどね。
……まったく、よく賭け事をやることを教師陣に認めさせましたね。
千冬義姉さんは頭が痛そうにしています
……お疲れ様です。
「では、対戦表を発表します!」
楯無がそう言うと、楯無の背後に大きな空中投影ディスプレイが現れます。
そこに表示されたのは―――
「……楯無が細工したんじゃないんですか? これ……」
私がついこぼしてしまう内容でした。
―――第一試合、織斑一夏&更識簪 VS 篠ノ之箒&更識楯無―――。
いきなり簪の大本命。
楯無との試合です。
……大丈夫ですよね?
ちなみに、ラウラとシャルロットのペアと当たるのは、順当に勝ち上っていけば決勝戦に当たることになります。
ラウラ、頑張ってくださいね。
Side〜ウリア〜out
Side〜一夏〜
さっき黛さんが来て、オッズを見せてくれた。
本来の目的は、まあ当然の如く取材で、オッズを見せて、写真撮って、一言聞かせたら走り去っていった。
黛さんも忙しいようだった。
ちなみに、オッズの順位は俺と簪さんは三位だった。
一位は当然の如く楯無さんと箒のペア。
流石は唯一の国家代表だな。
人気が違う。
二位は二年と三年のペアだった。
四位にラウラとシャルのペアで、簪さんの実力が未知数と言うこともあるんだろう、僅差で俺たちが勝っていた。
そして、五位にセシリアと鈴のペアだった。
以外に俺が高評価のようだ。
これもウリアのおかげだな。
「………………」
「簪さん、大丈夫か?」
俺たちは着替え終え、ピットで集まっていた。
簪さんは黙って俯いていた。
「簪さん。 今日まで頑張ってきたことを、楯無さんに見せ付けてやろう。 強くなったことを見せ付けてやろう。 簪さんの努力を認めさせてやろう」
「うん……」
簪さんは顔を上げ、俺はその表情を見て安心した。
その瞳はしっかりと前を見据え、迷いが無いように見えた。
これなら簪さんは大丈夫だ。
楯無さんにも臆することなく立ち向かえるだろう。
「実際にあわせるのは今日が初めてだけど、この試合はコンビネーションとか考えなくていい。 簪さんは、楯無さんと思いっきり戦ってくれ。 俺は二人の邪魔をしないように、箒を抑えておくから。 気兼ねなく、何も気にすることなく、楯無さんに今の簪さんを見せ付けてくれ」
この試合は簪さんがもっと先に進むための、もっと高みに上るための試合だ。
俺はその邪魔をしないし、するつもりもない。
だから、邪魔するものは全て俺が背負ってみせる。
「……あ、ありが、とう」
「気にすんなって。 俺は簪さんのためにやってるんだからな」
それが今の俺に出来る罪滅ぼしだ。
全力で簪さんをサポートしてみせる。
「そろそろ時間か。 簪さん、準備はいいな?」
「……うん」
俺は白式を、簪さんは完成した打鉄弐式を纏って、楯無さんと箒と戦うアリーナ上空へと飛んで行った。
Side〜一夏〜out