小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第七十六話『タッグマッチ! 一夏VS箒』



Side〜一夏〜

俺と簪さん、楯無さんと箒はアリーナ上空で向かい合う。

「来たわね」

「どうも。 その様子だと、大丈夫そうですね」

俺は、楯無の戦う姿をイメージできないでいた。
どうしても、ウリアのお仕置きのときのインパクトが強すぎるからだ。
おかげで、楯無さんがとてもじゃないが強く見えない。
だが、今この場にいる楯無さんは、間違いなく強い。
ウリアにあんなに脅えていた人とは思えないほどに、楯無さんは堂々としていた。
これが、楯無さんの本当の実力が出せる姿か……。

「一夏君、貴方と戦うには、全力で戦わないといけないわ。 それに、簪ちゃんと戦うのに、あんな醜態はとてもじゃないけど晒せないわ。 だから、私も本気で行かせてもらうわよ」

ウリアがいないときみたいにおちゃらけた様子ではなく、真面目な様子で、その雰囲気はウリアには到底敵わないが鋭いものだった。

『ほら、簪さんも楯無さんに何か言ったらどうだ?』

せっかくだから、宣戦布告でもさせようと思ったのでプライベート・チャンネルで言ってみた。

「……負けない」

簪さんは、そうとだけしか言わなかったが、楯無さんは少し驚いたような表情になりながらも、微笑を崩さなかった。

「全力でいらっしゃい。 お姉ちゃんが全力を持って相手をしてあげる」

「んじゃま、俺は二人の邪魔をしないように、箒の相手でもさせてもらいますか」

「一夏、前までの私だと思ったら、足下を掬われるぞ。 勝たせてもらう!」

俺がそう宣言すると、箒がやる気満々と言った様子で言ってきた。

「そう簡単に負けてやるほど、俺は弱いつもりはねえぜ」

でないと、ウリアを守るだなんて夢のまた夢だからな。
そして、試合開始の時間になった。

『第一試合、織斑一夏・更識簪ペア VS 更識楯無・篠ノ之箒ペア、試合開始!』

試合開始のブザーが鳴り響き、戦闘が始まる。
俺は真っ先に箒に突っ込む。

『簪さん、箒のことは気にしなくていいから、楯無さんに思いっきりぶつかってくれ!』

『……わかった』

そう短く、改めて言って、俺は箒と鍔迫り合いになる。

「悪いが、簪さんの邪魔にならないためにも、すぐに終わらせてもらうぜ」

「勝たせてもらうと、言ったばかりであろう!」

箒は紅椿の二刀流で連撃をしてくる。
この短期間で、よくもまあこれだけ攻撃の隙を無くせたものだ。
それに、攻撃も重くなっている。
それだけ頑張っていたと言うことか。

「箒、この短期間でよく強くなったな」

だが、俺からしてみればまだまだ隙だらけ。
それに、この程度の重さの攻撃なら、余裕で跳ね返せる。
もう一人の俺の攻撃と比べると、この程度の攻撃は苦にもならない。
まだまだ甘い。

「一気に仕留める」

だけど、短期間でここまで成長した箒を賞して、俺の全力で終わらせよう。

「くっ!」

俺は箒の攻撃に合わせて雪片を振るい、箒を弾き飛ばす。
そして、俺は雪片を腰に構え、居合の準備をする。
今からするのは、俺が今までの修行の中で覚えた技の中で、もう一人の俺から教わった技の一つだ。
そして、未だにウリアにも見せたことの無い技だ。

「させるか!」

箒は俺が何か仕出かすのを察したようで、体勢を即座に立て直して突っ込んでくるが、この技の準備には十分な時間は過ぎている。

「遅い!」

俺は瞬時加速を使って急加速し、箒の横を通り過ぎる。
そして俺は空中で停止し、一息つく。
本来ならタッグなのでしない動作だが、邪魔がないとわかっているからこそ、出来た動作だ。

「居合・瞬閃(しゅんせん)

その名の通り、一瞬の閃き。
これは最も単純な居合斬りだ。
抜刀して一閃するだけなのだから。
だが、箒はこれを視認出来ていない。
なぜなら、これは神速の斬撃だからだ。
これまでに俺の覚えた剣技はどれも超速斬撃だ。
『瞬閃』は一番最初に教わった技であり、同時に最も練習している技だ。
あれを基盤に派生系が存在するが、その派生系の技を習得するには、『瞬閃』の技術が必要なのだ。
だが、この技の欠点があり、対象以外にはあまり効果が無いと言うことだ。
対象には認識させないが、周囲の敵の大半には認識されている。
もう一人の俺ならば、その欠点を克服しているが、俺はまだまだ未熟。
俺はまだまだこの剣技を扱いきれていない。
今もなお練習しているが、まだまだもう一人の俺にはには遠く及ばない。
そもそも、俺は数ある技の中で『瞬閃』しか扱いきれていない。
派生技を覚えてはいるが、実用レベルに到達していないし、出来てもいないのだ。

『篠ノ之箒、シールドエネルギーエンプティーにより、リタイア』

あの一閃でシールドエネルギーが尽きた箒は、何が起こったのかわかっていないようで呆然としていた。

「な、何が……」

「箒、短期間でよく強くなった。 でも、俺は負けられない。 負けてやるわけにはいかないんだ」

―――俺はウリアを守ると、守ってみせると、そう心に決めたから。

(簪さん、後は簪さんが見せ付けるだけだ)

俺は心の中でつぶやいた。


Side〜一夏〜out



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