小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第七十八話『タッグマッチ! 一夏VS楯無』



Side〜一夏〜

簪さんは頑張った。
楯無さんを超えるために、簪さんはまた一つ成長した。
それは楯無さんに大きなダメージを与えることは出来なかったけど、楯無さんの心には届いていただろう。

「楯無さん。 悪いけど、簪さんに勝ってと言われたんでな、本気で行かせてもらうぜ」

「来なさい。 ダメージはあるけど、それでもそう簡単に負けるほど、生徒会長は弱くないわよ」

楯無さんは大型のランスを構える。
その構えに、隙は無い。
流石楯無さんだ。
でも、ウリアと比べると滅茶苦茶見劣りするな。
……負ける気がしないな。

「ふぅ……」

俺は小さく息をつき、雪片を構える。
長々とやるのは白式は不利だ。
だから、俺がやることは一撃必殺。

「っ!」

先ほどと同様に、雪片を腰に持ってくる。
楯無さんは、俺が何をしようとするのかわかったらしく、ランスについているガトリングガンを撃ちながら接近してくる。
ただまっすぐ直進しているわけでなく、複雑な軌道を描いて接近してくる。
やっぱりさっきのを見ていたのか。
『瞬閃』の的にされないように、せめてもの抵抗をしているみたいだ。
だが、『瞬閃』が静止からの攻撃だと思っていたら間違いだ。
動いていても、集中さえ出来れば、出来ないわけではないのだ。
……まあ、まだそれでは100%の威力は出せないけど。

「居合・瞬閃」

「っ!?」

俺たちの技はどれも、『バリアー無効化攻撃』を持つ雪片がある攻撃力は、たった一回の直撃でも致命傷だ。
それはたとえ、掠るだけでも、超速斬撃はエネルギーを大きく抉る。
だからこそ、ダメージを負っている相手になら、100%の威力が出せなくても俺たちの居合で最低威力の『瞬閃』で事足りる。
最も、他の技じゃあ未完成だから、威力がばらつくから『瞬閃』以下の威力になることも多々あるけど。

「見えなかった……けど、まだ戦えるみたいね……」

楯無さんまだ耐えていた。
本能かどうかは知らないけど、ランスともう片方の手に展開した蛇腹剣を滅茶苦茶に振るい、それが偶々雪片の刃に掠り、斬撃の速度を遅くした。
それが功を奏し、削りきれなかったのだ。
超速斬撃ゆえに、一度攻撃を始めたら狙いを変え辛いのだ。
だからその邪魔を受けてしまったのだ。

「やっぱり凄いよ。 まさか瞬閃を受けてまだ戦えるなんてな。 俺はまだまだ未熟だけど、初見で、しかもこの剣で削りきれなかったのは、俺の師が言うには二桁にも達してないんだぞ」

もう一人の俺曰く、瞬閃を、その派生技を初見で防いだのは、二桁にも達していないらしい。
その筆頭が未来のウリア、そして千冬姉、後は好戦的な英霊だったり、敵だったり、とにかく普通じゃない人だけだと言っていた。
俺はまだまだ未熟だけど、そんなとんでもない剣技を、まぐれでも耐え抜いた楯無さんは凄いと思う。

「だから、この先にある技で終わらせる」

まだ未完成の技の中で、最も完成に近い技をやろう。
今の俺なら、完成させれる。
そう思えるから、俺は敬意を持って、楯無さんに止めを刺そう。
俺は再び居合の構えを取る。

「はあああああっ!」

楯無さんは、最後の攻撃と言わんばかりに突っ込んできた。

「居合・瞬輝(しゅんき)

一瞬の輝き。
『瞬閃』の超速斬撃を、二度超速で放つ技だ。
ただでさえ速い斬撃を、二度放つのは非常に困難だ。
『瞬閃』の斬撃を増やすだけのこの技は、最も完成に近い技だった。
だが、今この瞬間、『瞬輝』は完成した。
一瞬の間に、二度の閃光が奔った。

『更識楯無、シールドエネルギーエンプティーにより、リタイア。 よって、第一試合、織斑一夏&更識簪ペアの勝利!』

アナウンスが流れると、観客がどっと沸いた。
この試合、俺たちが得た物は、想像以上に多かった。
これはいいことだ。


Side〜一夏〜out



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