第七十九話『試合間』
Side〜ウリア〜
「二人とも、お疲れ様でした。 とてもいい試合でしたよ」
私は、一夏たちの試合が終わると、一夏と簪の元へ向かいました。
「簪さんが頑張っていたからな」
「一夏が励ましてくれなかったら、私はもっと簡単に負けていた。 一夏のおかげです」
ああ、急に簪の雰囲気が変わったのはその所為でしたか。
「にしても、驚きましたよ。 あんな技、いつ覚えたんですか?」
「ああ、あれか? 夏休みにな。 ウリアがいない時に教わっていたんだ。 まあ、夏休みだけじゃあ『瞬閃』すら出来なかったけど。 ウリアを驚かせようと思ってな、ずっと隠れて練習していたんだ」
「そうだったんですか」
私はいつも一夏とリグレッターの修行の様子を見ていたわけではありません。
時々見ていたくらいで、私は私で自分の修行をしていたんです。
その間に、一夏は物凄く成長していたみたいです。
あの居合、とても素晴らしい物でした。
「一夏は私の知らない内に、どんどん強くなっていますね。 私も嬉しいです」
「俺はまだまだだよ。 あの程度じゃあ、まだウリアには到底勝てない」
「あれでも勝てないの……?」
簪は間近に見ていた分、よりあの剣技の凄まじさを感じているんでしょう。
私の見立てですが、あの剣速なら、流石の私でも、あれを完璧に避けきるのは難しいでしょう。
『いや、まあ確かにそうなんだろうけど、普通防ぐのも難しいはずなんだけど……。 未来のウリアもそうなんだけどさ、マスターは凄すぎないか?』
『あの速度ならまだ、反応できます。 まあ、私は普通ではないので、常識を当てはめてはいけない時もあるんですよ』
『いや、まあそうなんだけどさ? 俺が必死になって編み出し、習得した居合をさ、簡単に防がれるのはさ、流石の俺も泣きたくなるぜ? 頑張って剣速を上げても、数を増やしても、全て対処されるって、泣きたくなるものだぜ?』
『未来の私、そこまで化物に進化していましたか……私も頑張りませんとね』
『いや、今以上強くなられると、結局俺はマスターを守れないんだが……』
いくら一夏が強くなっても、同時に私も強くなれば、結局この関係は変わらない。
一夏が私を守りたいように、私も一夏を守りたい。
『言ったでしょう。 簡単に抜かれるわけにはいかないって。 それに、守られてばかりは嫌なの。 私だけ守られて、一夏が傷つく姿は見たくないの』
『未来のウリアもそう言っていたな。 まあ、俺がいるんだ。 俺よりもずっと早く、ずっと強くなれるだろうさ。 マスターを超えるほどにさ』
『そうなるかもしれませんね。 未来が必ず同じになるとは限りませんし』
『……そうだな』
リグレッターの世界には無いものが、この世界には溢れています。
必ずしも、リグレッターの世界のようになるとは限りません。
一夏が私よりも強くなることだって、ありえます。
「まあ、まだ俺は未熟だし、ウリアに届かないのも当然だな」
っと、リグレッターとの会話で、一夏たちとの会話について若干忘れかかっていました。
「……ウリアさんは、やっぱり凄い」
「伊達にアインツベルンの企業代表は名乗っていませんよ」
世界に名を馳せるアインツベルンの企業代表が、異常な成長速度を見せるとは言え、今年ISに乗り始めた一夏に、まだ負けるわけにはいきませんよ。
「さて、次はシード枠の二年と三年生コンビか」
「二人なら大丈夫ですよ。 私が保証します」
学園最強の称号である生徒会長である楯無を、一方的に倒せたんです。
それに、簪も楯無に喰らい付いていました。
いくら二年生と三年生のコンビと言えど、この二人なら十分勝てるでしょう。
「ウリアさんがそう言うなら、自信を持てます」
「それに、ラウラとの試合の前で負けていては、ラウラが怒りますよ?」
「はは、それもそうだな」
あそこまでやる気に燃えていたラウラです、ラウラは必ず勝ち上がってくるでしょう。
しかもパートナーがシャルロットである以上、鈴とセシリアでは勝てないでしょう。
まあ、今の状態を詳しく知らないので、最後に見た状態の推測でしかないですけどね。
まあ、一夏と私を除けば、ラウラとシャルロットのツートップですからね。
大丈夫でしょう。
「さて簪。 次の試合も勝とうな」
「うん……!」
「頑張ってくださいね」
私は、一夏とラウラが戦うのが見たいですからね。
Side〜ウリア〜out