第八十話『二試合目の前』
Side〜ラウラ〜
流石はお兄様です。
箒とあの女を一切寄せ付けないなんて、今や世界トップクラスの実力でしょう。
あの居合、私が『越界の瞳』を使っても反応できないかもしれない。
だが、それでこそのお兄様だ。
お兄様と戦うためにも、私もこの試合に勝たなければならない。
「ラウラ。 そろそろ時間だよ」
私の同居人であり、パートナーであるシャルロットが、声をかけてきた。
もうそんな時間か。
時が進むのは速いな。
「ああ、すまない。 お兄様の試合を思い出していた」
「あの試合ね。 やっぱり凄いよね、一夏は。 あの居合斬り、剣がまったく見えなかったもん」
あれは私も見えなかった。
ISのハイパーセンサー、ヴォーダン・オージェは使っていなかったが、たとえ使ったとしても反応できるかはわからない。
あれに反応できるのは、お姉様と教官、そしてお姉様やお兄様の従える英霊くらいだろう。
あれは、凡人がどうこうできる物ではない。
「それでこそのお兄様だ。 今の私が、お兄様にどれほど通用するかはわからんが、あの剣技を使わせてみせる。 お兄様と戦うのが楽しみだ」
「そうだね。 でも、その前にセシリアと鈴を倒せないといけないよ。 それに、一夏たちにはまだ試合がある。 しかも相手は二年生と三年生のペア。 いくら一夏でも、勝てるかはまだわからないよ」
「お兄様が負けるわけが無い。 お兄様は心身共に強く、そして譲れない信念を持っている。 そんなお兄様が、このような場所で負ける訳が無い」
お兄様は『お姉様を守る』と言う、誰にも譲れない、そして決して曲げれない信念を持っています。
そして、その信念を貫き通し、その信念を元に、今日まで自分を鍛え、強くなってきました。
そんな気高きお兄様が、このような場面で、いくら年上で経験の差があるとはいえ、所詮代表候補生でしかない相手に負ける訳がありません。
「それもそうだね。 あんなに頑張っていた一夏が、こんな場所で負けるなんて考えられないね。 でも、僕たちはそうはいかないよ。 僕たちが絶対勝つって言う保障は無いんだから、気を引き締めていこうね」
「当然だ。 お兄様と戦う前に負けるなど、とてもじゃないが出来ない。 私は持てる力の全てでお兄様と戦うためにも、私もこんなところで負けることは出来ない」
これもお兄様と戦うためだ。
セシリアと鈴には悪いが、是が非でも勝たしてもらう。
「さて、行こうか」
「うん」
私たちはISを纏い、アリーナへと飛び立った。
Side〜ラウラ〜out
Side〜シャルロット〜
僕たちの目の前には、同じくISを纏ったセシリアと鈴がいる。
一年生の代表候補生同士の戦いだ。
これに勝った方が、決勝に進める。
一夏と更識さんのペアと先輩ペアの試合で勝った方(きっと一夏たち)と中る。
ラウラは一夏との試合をとても楽しみにしているようだし、僕としても願わくば戦いたい。
だから、この試合には負けることは出来ない。
「悪いがこの試合、勝たせてもらうぞ」
ラウラは早速挑発(本人にその気があるかはわからないけど)していた。
「はっ！ 言ってくれるじゃない！」
「わたくしたちとて、強くなっています！ 負けませんわ！」
ウリアさんの教えを受けているのは一夏だけじゃない。
いつも着きっきりって訳じゃないけど、ウリアさんにメニューを考えてもらったり、時にはウリアさん自身が手を貸してくれたりしてくれている。
だから、僕たちも一夏ほどではないにしろ、成長している。
その成長度合は生憎わからないけど、それでも負けられない。
「お兄様と戦うのは私だ。 お兄様と戦うためにも、お前たちに勝つ」
「僕だって一夏と戦いたいんだ。 何が何でも勝たせてもらうよ」
「一夏と戦うのはあたしたちよ。 今日こそぎゃふんと言わせてやるんだから！」
「鈴さんと目的は違いますが、わたくしだって一夏さんと戦いたいのです。 ですから、お二人には悪いですが、勝たせていただきますわ」
一夏大人気だね。
まあ、一夏は自分を試したりするのに快く引き受けてくれるしね。
ウリアさんは強すぎるから、わからないんだよね。
っと、どうやら試合開始時間になったみたい。
『第二試合、シャルロット・デュノア&ラウラ・ボーデヴィッヒペア VS セシリア・オルコット&凰鈴音ペア、試合開始！』
さて、これも一夏と戦うためだ。
勝たせてもらうよ！
Side〜シャルロット〜out