小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第八十四話『決勝直前』



Side〜一夏〜

ウリアの叱責を受け、俺は控え室に戻った。

「あ、お帰り一夏」

「ああ、ただいま」

「……何かあった? 吹っ切れたような顔してるけど……」

どうやら、俺はここを出る前は、簪さんがそう感じるほどに表情が隠せてなかったみたいだ。
ポーカーフェイスにはそれなりに自信があったんだが……。
まあいいや。

「ウリアに叱られてな。 おかげで吹っ切れたよ」

「ウリアさん、気づいてたんだ」

「気づかないわけが無いってさ。 ホント、ウリアは凄いよ」

だからこそ、俺は更なる高みを目指す。
ウリアに相応しい、最高の騎士になるために。
たとえ最強になれなくてもいい。
俺が求めるのは、最強ではなく最高であることだ。

「さあ、行こう。 次の試合が最後だ。 ラウラとシャルのペアは強敵だぞ」

あの二人なら先輩ペアにも匹敵する、もしくはそれ以上の敵になるかもしれない。
ラウラは、何か目標や目的があると、普段よりも強くなるし、シャルもそんなラウラに完璧に合わ

せれている。
俺と戦いたい一心で決勝まで来た二人が、強敵でないはずが無い。

「大丈夫。 私だって、頑張ってきたから、お姉ちゃんに勝った私たちが負けるなんて、赦されない



そう言う簪さんの瞳は、とてもいいものだった。
そう簡単に揺るぐことの無い、強固な意思の籠もった瞳だった。

「そうだな。 楯無さんに勝った俺たちが、負けるなんて赦されない。 勝とうぜ、簪さん」

「うん……!」

俺たちは、最高の試合をするために、アリーナへと足を向けた。


Side〜一夏〜out


Side〜ラウラ〜

いよいよだ。
ようやく、お兄様と戦える!

「ねえラウラ。 そんなに一夏と戦えることが嬉しい?」

シャルロットが私にそう言ってきた。
まったく、この私を見てわからんとはな。

「当たり前だ。 お兄様やお姉様ほど、心踊る戦いは無い」

「まあ、それは僕も同感かな。 一夏もウリアさんも強いし、戦い応えがあるから、戦うと誰よりも

楽しいよね」

そうでない方がおかしい。
お兄様はまさに騎士。
素晴らしい剣技とスピードは、見る者を魅了します。
そして、お姉様はあらゆる武器に精通し、その腕は若くも達人の域にまで達し、どのような状況に

も動じず、瞬時に対応します。
その戦闘は美しき舞であり、激しい戦闘の中でも気品を見せ付けてくれます。
こんな二人と戦って、心躍らないほうがおかしい。

「お兄様とペアを組んでいる更識簪と言うあの女、お兄様とペアを組むだけのことはあるな。 油断

できない敵だ。 なぜ今まであのような者の名前を聞かなかったことが不思議でならん。 奴ほどの

実力ならば、機体が未完成だったにしろ、一度くらい名を聞いてもおかしくはないと思うのだが…

…」

「多分、あの子は戦闘よりも、機体を完成させることを目標に頑張ってきたからだと思うよ。 だっ

て、普通専用機持ちなら、クラス代表になるだろうしね。 目立つことよりも、機体のことを思って

いたんだよ」

「そうかもしれんな。 まあ、今度お姉様かお兄様に聞いてみるとしよう」

今は奴の事情よりも、奴とお兄様の試合についてだ。
楽しみで仕方が無い。

「とりあえず、簪って子の≪山嵐≫は要注意だね。 あれと一夏の攻撃を組み合わされたら、性質が

悪すぎるよ」

確かに、あの複雑な三次元躍動にお兄様の鋭く重い剣戟が加われば、対処は非常に困難になる。
むしろ、あのミサイルの嵐の中、お兄様の神速の居合が混ざれば、もう無敵のコンビネーションだ



「更識簪をいかに早く倒すかが、勝負の分かれ目だな」

たとえ倒せないにしても、≪山嵐≫だけは撃たせてはならない。
撃たせたら最後、お兄様の恰好の餌食だ。

「あ、そろそろ時間みたいだ。 行こ、ラウラ」

「うむ」

お兄様に、強くなった私を見てもらうのだ。

「勝とうね」

「ああ」

お兄様と更識簪は強敵だ。
だが、だからと言って、負けるつもりは毛頭無い!


Side〜ラウラ〜out


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