小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第八十五話『タッグマッチ決勝戦!』



Side〜一夏〜

「お兄様と戦えるこのときを、待ちに待っていました」

ラウラは、凄く興奮したような声質で言ってきた。

「そうか。 俺も楽しみにしていた」

はっきり言って、俺も興奮している。
まあ、表面には出してないけどな。

「僕も楽しみにしてたんだ。 全力で戦おう」

「私も、忘れられちゃ困る」

「貴女を忘れるほど、僕たちは落ちぶれていないよ。 貴女は強い。 それは間違いないんだから」

確かに、簪さんは強い。
ウリアの特訓を受けていないのに、ラウラやシャルロットと互角くらいの実力を持っている。
もしももっと早くから専用機が完成したのなら、もっと早くからウリアの特訓を受けていたのなら。
そう考えると、末恐ろしいものを感じる。

「さて、この試合、楽しもうぜ」

「はい、お兄様」

「うん。 負けないよ、一夏、更識さん」

「……負けない」

みんな、大分昂っているな。
まあ、俺も昂っているしな。
この試合、楽しまないと損だ。
そして、試合開始時間となり、アリーナが静まり返った。
これだけ女子がいて、ここまで静まり返るなんて、そうそうない。
それだけこの試合を期待しているのか、それとも別の何かがあるのか……今の俺にそんなことを考える暇はないな。
今は、この試合のことだけを考えるんだ。

『決勝戦、織斑一夏&更識簪ペア VS シャルロット・デュノア&ラウラ・ボーデヴィッヒペア。 試合、開始!』

ドンドンッ!

開始早々、ラウラが俺に接近しながらレール砲を連続で撃ってきた。
俺はそれを危なげなくかわそうとして―――後方へと飛翔した。
直後、先ほどまで俺のいた場所は、爆風に包まれた。

(砲弾の影に隠してグレネードを投げ込む……しかも、ラウラは一切速度を落としていない……パートナーへの絶対の信頼と、自分の技術に自信を持っていなければ出来ない芸当だな)

二人がしたことは、互いに信頼をしていなければできないことだ。
なぜなら、グレネードの爆発する位置と爆発の威力を知らなければ、ラウラが速度を落とさずに接近するなんてことはできない。
それに、ちょうど俺の死角になる位置から、グレネードを投げる技術もだが、砲弾でグレネードを隠すという離れ業に感心した。

「やっぱり避けるよね……」

「ああ。 だが、危なかったぞ」

「はあっ!」

爆発によって発生した煙の中から、ラウラが突撃してきた。

「させない……!」

突撃してきたラウラの勢いを削いだのは、簪さんの『打鉄弐式』に搭載されている二門の連射荷電粒子砲≪春雷≫による射撃だった。

「やはり一筋縄ではいかんか」

そういうラウラは、面白そうに笑っていた。
この戦いが楽しくて仕方がないみたいだ。

「んじゃ、そろそろ反撃させてもらうぜ!」

俺は雪片を握り直し、一気に瞬時加速なしで出せる最高速度まで引き上げる。
俺は特訓の末、ゼロ→MAX、MAX→ゼロの切り替えがウリアほどではないが出来るようになった。
だから、回避も接近も、相手の意表を突き易い。
しかも、これはほとんど見せていない。
故に、見切ることは困難だ。

「っ! 速い!」

ラウラは咄嗟にワイヤーブレードとプラズマ手刀を展開し、ワイヤーブレードで雪片と俺の速度を落とし、プラズマ手刀で俺にカウンターをしてきた。

「いい動きだ。 だが、それでもまだまだ甘い!」

俺は接近する際に溜めていたエネルギーを放出し、加速する。
瞬時加速による、後出しの速攻だ。
通常のMAXスピードからの更なる推進力により、姿勢を変え、剣の軌道を変える。
ラウラのプラズマ手刀を避け、ラウラの懐に雪片の刃が届く。

「させない!」

そこに、シャルロットがグレネードを投げてきて、俺とラウラを巻き込んで吹き飛ばした。
瞬時加速を使っていなければ避けれたんだが、まさか纏めて吹き飛ばすとは思ってもいなかった。
あそこからの回避は、ラウラには不可能だった。
それを知っていたから、大ダメージになる雪片が当たる前に、グレネードで纏めて吹き飛ばしたんだな。
ラウラにもダメージを与えることになったが、それでも零落白夜で大量に削られるよりかはマシだ。

『ごめん、一夏……止めれなかった……』

簪さんが、シャルロットによるグレネード投擲を止めれなかったことを謝ってきた。

『いや、大丈夫だ。 驚いたが、ほとんどダメージはない』

あの爆発によるダメージは、ほとんどなかった。
おそらくあれは、威力よりも風を巻き起こすためのものなのだろう。
たぶん、二人はこうなることを推測していたんだろう。
だから、緊急離脱用の爆弾として、あえて威力の低いグレネードを入れていたのだろう。

『やっぱり、俺への対策は取ってあるみたいだ。 だから簪さん。 情報量の少ない簪さんは、二人にとっても難敵のはずだ』

『頑張る……』

『頑張ってくれ。 俺だって、このままやられたまま終わるつもりはないしな』

さて、ここまでやられてばかりだが、俺だって負けるわけにはいかないんだ。
ここからが本番だ。
覚悟はいいよな、二人とも?


Side〜一夏〜out



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