小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第八十六話『タッグマッチ決勝戦! 一夏&簪VSラウラ&シャルロット』



Side〜ラウラ〜

「っ!」

お兄様が口角を上げた直後、その顔を見た直後、私は身震いした。
その表情は楽しげで、嬉しそうで、それでありながら恐ろしいものだった。

「強くなったな、二人とも」

元より静かな声質が、より静かなものに聞こえた。
それは私の幻聴かもしれなかったが、とても幻聴なんかには思えなかった。

「俺も、全力を出して応戦しよう」

全力。
すでにお兄様は本気だ。
だが、全力ではなかった。
もしも全力ならば、私たちはもう敗北しているからだ。
はっきり言って、この雰囲気は、過去に一度だけ受けたことのある、お姉様と同質のものだった。
それに、今のお兄様の奥底に見える気は、ISに乗り始めて一年も経っていないのに、私がお姉様の本気の全力を受けたときと同等以上のものに感じます。

これは……恐怖ではない。
歓喜だ。
あの時恐怖に苛まれた私ではない。
あの時のお姉様と同等の力を持つお兄様に対して、心が震えている。
嬉しい。
楽しい。
もっと激しい戦いをしたい。
もっと血の滾る戦いをしたい。

私は、これから起こるであろうことに、心を震わせ、期待をしている。
自然と、口角がつりあがる。

「……行くぞ、ラウラ、シャルロット」

これは、心躍る!


Side〜ラウラ〜out


Side〜一夏〜

「……行くぞ、ラウラ、シャルロット」

俺がそう言った直後、簪さんは俺の意思が伝わっていたかのように、動き出していた。
対複合装甲用超振動薙刀≪夢現≫と荷電粒子砲≪春雷≫による攻撃の嵐を、シャルロットに繰り出していた。
シャルロットは、あまりの攻撃の激しさに、先ほどまでとは違い、防戦一方となっていた。

俺も簪さんが動き出した直後に動き出し、ラウラに雪片を振り下ろす。

「っ!」

ラウラはまたワイヤーブレードで俺の攻撃を逸らそうとしたが、今回は間に合わなかった。
なぜなら、俺の剣速が跳ね上がっていたからだ。
俺の超速の居合から分かるように、俺の最高剣速は、大抵の人間の反射神経では認知されないほどに速い。
最高速度を出すには、俺では居合の形になるが、それでも通常の斬撃でもそれなりに速くすることは出来る。
だから俺は、ラウラの反応速度を上回る速度の斬撃を放てたのだ。

「まだまだ甘いな、ラウラ」

「……お兄様、なぜ今ので倒さなかったのですか?」

険しい表情でそう言ってきたラウラ。
まあ、今のが直撃したのに、未だにシールドエネルギーが残っているからな。
本来なら終わっていたが、残っているのは単純で、零落白夜を使っていなかったからだ。

「俺の剣速にどれだけ反応できるか、見ただけだ。 それに、さっきまでのお前なら、抜けるとわかっていたからな。 そんなことで、この試合を終わらせるのは惜しすぎる。 それに俺は、お前に本気を見せたいんだ。 本気を見せた上で、全力で戦いたいんだ」

俺はただ、ラウラと戦いたいだけだ。
本当の本気で、全力全開の戦いを。
すべてを出し切るラウラと戦いたいんだ。
だから、さっきの一撃に零落白夜を使わなかった。

「お兄様……」

「俺に勝ちたいなら、今以上に気を引き締めろ。 そして、一瞬たりとも気を逸らすな。 お前の攻撃が、俺に届くかどうか、見せてみろ!」

「はい!」

ラウラは、嬉しそうに、だが厳しい目付きになる。
当然だが、負ける気はないみたいだな。

「行くぞ、ラウラ!」

「はい、お兄様! 絶対に負けません!」

俺に超速の居合を抜かせれるか、見せてもらうぞ、ラウラ!


Side〜一夏〜out


Side〜簪〜

やっぱり、一夏はボーデヴィッヒさんとの戦いに燃えてるみたい。
まあ、予想通りかな。
ウリアさんの義妹で、一夏の義妹みたいなものらしいから、当然だよね。
だから私は、一夏の戦いに邪魔はさせない。
デュノアさんも一夏と戦いたいみたいだけど、今回は我慢してもらうしかないかな。
だって、私が倒すから。

「僕が勝つ! 絶対に、負けたくない!」

私に圧されていたデュノアさんに、勢いが戻ってきた。
状況判断能力が復活したのか、それとも、負けたくないって言う意思が、能力を向上させているのかはわからにない。
でも、どちらであろうとどうでもいい。
理由はどうであれ、デュノアさんの勢いが増してきたことは、私にとっての脅威でしかないのだから。
今の私は、一夏の邪魔をさせないために、この場でデュノアさんを倒すという目的のために動いているだけ。

「私だって、負けない……! 一夏の、邪魔はさせないんだから……!」

私と打鉄弐式の最大火力≪山嵐≫は今は使えない。
なぜなら、ここで放てば私もただでは済まないから。
それに、姉さんとの試合で見せたことがある以上、デュノアさんは警戒している。
あれだけの火力を持つミサイル群を、撃たせるつもりはないだろう。
ここで放とうものなら、間違いなくカウンターを決められて負ける。
まだ、撃つ場面じゃない。
だから私は、ウリアさんに教えてもらった薙刀の技術を行使して、≪春雷≫の砲撃を行使して、ウリアさんたちのおかげで完成した、この『打鉄弐式』のすべてを行使して、そして、私自身のすべてを持って、デュノアさんを倒す。
私が、安心して一夏が戦える環境を作るんだから!


Side〜簪〜out



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