小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第八話『ウリアVS千冬 交際の行方』



Side〜ウリア〜

「……今、なんて?」

「私とウリアが戦うんだ」

もう、束さんの所為で、ばれちゃったじゃないですか。

「なんで! なんでウリアと千冬姉が戦うんだよ!」

「それは、私と一夏との交際を認めてもらうためです」

「それってどういう……」

「私はお前とウリアが付き合うのは嬉しい。 だがな、お前は私の唯一の家族だ。 だからこそ、私は強き者にしか、お前の相手には認めない。 認められない」

「ということらしいです」

「大丈夫なのか……?」

心配そうに私を見る一夏。

「安心してください、一夏。 私は、負けるつもりはありませんから」

一夏と別れるなんて、絶対に嫌ですしね。

「……わかった。 絶対千冬姉を認めさせてくれよ」

「任せてください。 一夏の期待に応えて魅せます」

たとえ相手が千冬さんであろうと、勝ってみせます。

「束、もういいか?」

「完璧だよ、ちーちゃん!」

「ではやるぞ、ウリア」

「はい」

私と千冬さんは各々のISを纏う。
私はサーヴァントを【英霊・アルトリア・ペンドラゴン】で展開します。
この姿は、かの騎士王『アーサー・ペンドラゴン』の正体である『アルトリア・ペンドラゴン』の力を使えます。
当然、かの剣も使えます。

「それは……」

千冬さんが纏うのは、白と桜色の美しい機体でした。

「これは私が現役時代に使っていた『暮桜』だ。 束に頼んで第三世代並のスペックに上げてもらった」

「準備とはこのことでしたか」

「いきなり『暮桜を強化してくれ』って言われたときはビックリしたぜぃ」

相手は最強であったときの姿そのもの。
いくらアルトリアの力を使えると言っても、一瞬の油断でも命取りですね。

「では、始めましょう」

私と千冬さんはアリーナ上空で向かい合います。
千冬さんの手には、一夏の(雪片弐型)の元になった刀、(雪片)が握られています。
私は、アルトリアの不可視の剣を持っています。

『二人とも、準備はいいかな〜?』

「大丈夫です」

「始めろ」

『オッケー! んじゃ、試合、開始っ!』

開始直後に私は千冬さんに向かって飛ぶ。

ガギィィィン!

「見えない剣か。 厄介だな」

この剣は、『風王結界(インビジブル・エア)』という宝具で剣を覆い、大気を圧縮させて光を屈折させ、剣本来の姿を隠しています。
刀身が見えない分、刀剣の長さが掴めないため、剣のリーチがわからなくなっている。
相手が強くても、初見の相手なら相当厄介でしょう。

「はぁああ!」

「くっ!」

「避けるではないか」

アルトリアの直感は未来予知にも近い危機を察知するので、アルトリアの状態だと、私自身もそれなりに直感が働いています。
流石に未来予知とまでは行きませんが、この直感はとても助かっています。

「さて、その剣の姿を見せてもらおうか!」

「!」

雪片の刀身が光る。
あれは『零落白夜』!
まずい!

「逃がすか!」

「くっ!」

瞬時加速(イグニッション・ブースト)で急接近してきたため、『零落白夜』を不可視の剣で防ぐ。
そして、『零落白夜』のエネルギー無効化により、『風王結界』の風が乱され、刀身があらわになります。
これで、アドバンテージがなくなりました。

「その剣の長さは見切った。 これで惑わされずに済む」

まずいですね……。
千冬さんの剣の腕は達人級で、なおかつIS操縦者の頂点に立っている人です。
まだ真名開放がありますが、それでも私が少々不利です。
いくら私がISの適正値が千冬さんよりも上でも、千冬さんは歴戦の猛者です。
その経験から見出される物は、私のそれと大差ないでしょう。

<大丈夫です。 ウリアスフィールは強い。 私は、彼女と互角だと、そう信じていますから>

(ありがとうございます、アルトリア。 そうですね、弱気になっていたら、認めてもらえるものも認められませんね)

<その意気です>

(行きますよ、アルトリア。 私たちの力、見せてあげましょう!)

<はい!>

勝つには、相手の流れにされないこと。
そして、切り札の真名開放を出す瞬間を間違えないこと。
アルトリアが言ってくれたように、単純な能力なら私と千冬さんは互角です!

「っ! ふっ、いい眼だ。 来い、ウリア!」

「はい! これからが本当の戦いです!」

再び互いの得物でぶつかり合う。
“アレ”を放つには一瞬でも時間が必要になります。
その時間を作る手はありますが、それをやる隙がないんですよね。
流石は千冬さんですね。
ですが、隙がないなら、自分の手で作ればいいんです。

「どうした! 隙だらけだぞ!」

「いいえ、それは貴女の隙です」

「なに!?」

私は、自ら隙を作りそこに攻撃を誘導させたのだ。
だからこそ、反応も出来るし、次への一手に繋げれる!

「『風王鉄槌(ストライク・エア)』!」

剣を覆っていた風を解放し、威力の持った暴風へと撃ち出す。

「くっ! これしき!」

『風王鉄槌』を『零落白夜』で断ち切り、それでも荒れ狂う風により飛ばされ、体勢を崩しました。
生まれた大きな隙と時間。
これを逃せば、必殺の一撃を放つ瞬間は失われるでしょう。
この、最大のチャンスを勝利の為に!

「これを最後の攻撃にします!」

『風王結界』が解除され、剣から風が吹き荒れます。
それよりも目立つのが、その現れた刀身から放たれる眩いばかりの黄金の光。

「この攻撃は、一夏との交際を認めてもらう為に! 大好きな一夏と別れない為に! だから!」

私は光を放出する剣を頭上に上げます。

「この一撃に、私たちの勝利を約束させる!」

この一撃は、私と一夏の思いを乗せた一撃。
この一撃は、私と私を助けてくれる英霊たちの一撃。
この一撃は、私たちの勝利を約束してくれる一撃!

「いいだろう! 受けて立つ!」

千冬さんは体勢を立て直し、雪片を構えます。

「<約束された勝利の剣(エクスカリバー)ァアアアアア!!!>」

「零落白夜ぁあああああ!!!」

膨大な光による『究極の斬撃』と、あらゆるエネルギーを絶つ『究極の剣戟』がぶつかり合う。

「「<はあああああああっ!!!>」」

私たちは雄叫びを上げながら、自身の武器の力を信じて、ぶつかり合う。



















『試合終了! 勝者―――











ウリアスフィール・フォン・アインツベルン!』

『究極』の攻撃同士の戦いは、私たちの斬撃の勝利で終わりました。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

私は息も絶え絶えですけど、千冬さんはエクスカリバーを受けたため、気絶していた。
エネルギーが尽きたことで暮桜が解除され、ISの補助を失った千冬さんは、重力に従って落下していった。
助けなきゃ。
だけど、身体が重くて速さが出ない。
このままじゃあ千冬さんが……!

<私に任せろ>

一瞬サーヴァントが光り、サーヴァントから放たれた光が千冬さんへと向かい、千冬さんが地面に当たる五十センチほどのところで光が晴れ、光から現れた男性が千冬さんを助けた。

「ありがとうございます、シロウ」

「まったく、後先考えて行動しろと前にも言ったはずなんだが……」

彼が、赤い外套を纏った浅黒い肌の男性こそが、エミヤシロウです。

「まあ、今回は目的が目的だったな。 まあ、私はマスターに従うまでだが」

「じゃあ、千冬さんを運んでください」

「了解した」

私とシロウは、ゆっくりとピットへと戻っていく。

「お疲れ、ウリア。 千冬姉は大丈夫なのか?」

戻ると一夏が心配していました。
まあ、あんな光景を目にしたら、心配しますよね。

「気絶しているだけだ。 もうしばらくもすれば眼を覚ますはずだ」

「ありがとうございます、シロウ」

「では、私はこれで戻るとしよう」

シロウは光り、サーヴァントへと戻った。

「ウリア、あの人は?」

「彼は私のサーヴァントに宿る英雄の霊、英霊の一人です。 私のISは、彼らのおかげで装甲の変化などが起こるんです」

「だから姿が変わったのか」

「そうなんです。 にしても、やりすぎてしまいましたね……」

認めてもらいたい一心で、無我夢中でつい思いっきりやってしまいました。
死んでしまわないように、設定しなおして制限を掛けたのですが、まだ威力が高かったようです。
真名開放は、やっぱり控えた方がいいでしょうか。

「……んっ」

「ちーちゃん!」

「束、離れろ……」

束さんは目を覚ました千冬さんに抱きついていました。

「すみません、千冬さん……」

「気にするな。 あれは事故であって、お前の所為ではない」

「しかし……」

「気にするなと言っておろうが。 まあいい。 私は言っていたとおり、お前たちの交際を認める」

「「っ!」」

「……お前らも盛んだからな、やるな、とは言わん。 だが、避妊はしろよ。 在学中に妊娠なんて堪ったものではないからな」

「「千冬さん(千冬姉)!?」」

絶対顔が赤いです……。
た、確かにしたいですけど……。

「うんうん。 初々しいねぇ」

束さん……何てのんきな……。

「まあ、節度は守れよ」

「わかってます///」

うー、顔が熱い……。

「では、私は戻る。 少し疲れた」

「私たちも戻りましょう、一夏」

「そうだな」

「束さんも帰るよ。 じゃあ、またね、ちーちゃん、いっくん、ウーちゃん!」

束さんはどこかに走り去っていきました。

「改めて、よろしくね、一夏」

千冬さん公認になれた。
私の両親にも今度ちゃんと言っておかなきゃね!

この日は、私は部屋に戻ってからはぐっすり眠った。
千冬さんとの戦いは、今までの模擬戦の中で、一番疲れました。


Side〜ウリア〜out



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