小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第九十話『開催の理由』



Side〜ウリア〜

「にしてもウリア」

「何ですか?」

乾杯の音頭をした後、一夏が尋ねてきました。

「どうしてこんなパーティーにしたんだ? 俺はてっきり、専用機持ちだけだと思っていたんだが」

「それはですね、初めてちゃんと終わった行事だからです」

「……ああ、確かにそうだったな。 思い返してみれば、これが初めてだったな」

今回のパーティーを一般生徒も参加にしたのは、私たちが入学してからの行事で、初めて無事完遂することができたからでもあるんです。
初の行事であるクラス対抗戦は暴走無人機の襲撃があり中止。
次の学年別トーナメントでは、ラウラのシュヴァルツェア・レーゲンに仕掛けられていたVTシステムが起動して中止。
臨海学校では暴走無人機群の襲撃と、銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)の暴走があり、臨海学校どころじゃなくなって、学園祭では亡国機業が襲撃してきて、キャノンボール・ファストでも亡国機業が襲撃してきてレースどころじゃなくなってしまいました。
だから、行事で何事もなく終わったのは、今回のタッグマッチが初めてなんです。
だから私は、特に一年生徒には参加してほしかったんです。
無事に行事を終われたことを、祝いたかったんです。

「納得だよ。 確かに、それならこうなったのもわかるよ。 でもウリア。 これだけの量を作るのは、大変だったろ?」

「ええ、まあ。 でも、一人で作ったわけじゃないですよ」

流石に、この量を一人で作るのは無理がありますしね。

『まさか、リグレッターとかに手伝わせたのか?』

一夏は、念話に切り替えて尋ねてきました。
まあ、英霊の名を出すには、少々まずい場所ですしね。

『その通りですよ。 食堂で働いている方々には、今日はお休みを上げて、私たちだけで作っていたんですよ』

シロウとリグレッター、そしてメディアに料理を作るのを手伝ってもらって、ディルムッドとハサンたちに料理を運ぶのを手伝ってもらいました。
おかげで、とてもはかどりました。
これが出来たのも、食堂で働くおばさんたちに、お休みを上げたからなんです。
でないと、こんなこと出来ませんし。

「この料理、すっごいおいしい!」

「流石はアインツベルンさん! 料理も万能ね!」

「アインツベルンさん、とってもおいしいよ!」

「アインツベルンさん、今度料理教えて!」

「構いませんよ。 時間があえばやりましょう」

私たちの作った料理に舌鼓を打つ生徒たち。
料理なら、一夏にも負けない自信があります。
まあ、リグレッターには負けてしいましたが。

「お姉様、お兄様」

「あ、ラウラ。 どうです、料理は?」

「とても美味しいです。 流石はお姉様ですね。 料理までも完璧です」

「ありがとうございます。 でも、私一人で作ったわけじゃないですよ」

「やはりそうでしたか。 いくらお姉様でも、この量を一人で作るのは無理があると思っていたので。 ですが、これほどの料理を作れる料理人など、お兄様以外ではそうはいないはずですが……」

ラウラは、ここにいる料理人のレベルを知っているようでした。
まあ、学校としては上等ですが、一流料理店のシェフには遠く及びません。
一応私は、親馬鹿ですが、お父様たちからのお墨付きを貰っているので、勝っている自信はあるんです。

「私には、信頼できる仲間がいますから」

「……ああ、なるほど。 納得です」

ラウラは私の言いたいことがわかったようです。
流石は私の義妹ですね!

「さて、私たちも楽しみましょうか」

「そうだな」

「そうですね」

先輩の話を聞いたり、皆で騒いだり、やることはいっぱいです!


Side〜ウリア〜out


Side〜千冬〜

「織斑先生は混ざらないんですか? というより、止めなかったんですね」

食堂の外で、私と真耶は騒ぎを眺めていた。

「ふっ、私が混ざってどうする。 あれは、あいつらのパーティーだ。 それに、事情も事情だ。 騒がしてやれ」

ウリアもちゃんと許可を取りにきたし、あいつの言うことも確かだ。
学園の行事では、ことごとくあいつらに頼りっぱなしで、行事そのものが無事に終わったのは、今回が初めてだ。
あいつらが騒ぎたくなるのも、わからんではない。
まあ、ウリア以外の連中で、どれほどそれに気づいているかは知らんがな。

「それに、ウリアはいつも背負いすぎている。 日常の中でも、非常時の対応でもな。 だから、たまにはウリアに羽目を外させてもいいだろう。 あいつのやりたいようにさせてやれ。 それくらい、させてやるべきだ」

「そうですね。 私たち教師陣も、アインツベルンさんには何度も助けられていますしね。 あれくらい、する権利はありますよね」

ウリアには、私自身助けられている。
特に授業では、あいつが声を掛けているおかげで、いつもスムーズに進む。
あいつがクラスの、学年の、時には学園の中心でいてくれるおかげで、生徒たちは纏まっている。
おそらく、生徒の中では学園で一、二を争うほどに、あいつは学園で信頼を得ているだろう。
そんなあいつの癒しの大半は一夏とラウラだ。
たまには、一夏とラウラ以外の癒しも必要だろう。
だから、私はこれを許可したし、他の先生たちも、誰も止めようとはしなかった。

「にしても、織斑先生はアインツベルンさんには甘いですね。 織斑君の彼女だからですか?」

「山田先生、私は身内でからかわれるのは嫌いだ」

「あっ! す、すみません! ……って、あれ?」

普段なら、ここでヘッドロックやらアイアンクローをするのだが、今は機嫌がいい。

「ウリアは一夏の彼女でもあるが、それ以前に問題を起こさない。 それに、いつも誰よりも頑張っている。 山田先生も知っているだろう。 放課後の練習を」

「はい。 専用機持ちたちが、一生懸命頑張っていますよね」

「あれの練習メニューを考えているのはウリアだ。 それに、自分自身も鍛えている。 この学園であいつほど、何かに頑張っている奴はいないだろう」

普段はさりげなくクラスを纏め、専用機持ちたちのレベルアップのために練習メニューを考えて、相手をして、それで自分のレベルアップも図っている。
それに、最近は更識の妹の専用機の完成にも手伝っていた。
私は、ウリアが過労で倒れないか、時々心配になる。
あいつなら大丈夫だろうが、それでも心配になるのだ。
ウリアの働きぶりにな。

「さて、私たちは仕事をしよう。 ウリアに助けられてばかりでは、教師としての面目がないからな」

「そうですね」

だからまあ、今は思いっきり羽を伸ばせ、ウリア。


Side〜千冬〜out


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