第九十二話『聖マリアンヌ女学園の学園祭』
Side〜ウリア〜
タッグマッチが無事終わり、パーティーで盛り上がった翌日。
私と一夏は、一緒にある場所へと向かっています。
「にしても、よく通したよな」
「そうですね。 そんなに聞きたいものでしょうか?」
「まあ、ウリアはアインツベルンの次期当主だし、聞きたい話はいろいろとあるんじゃないか? というより、マジで何とかした蘭に驚きだ」
私たちが向かっているのは、以前蘭ちゃんに招待された『聖マリアンヌ女学園』です。
招待券が一枚しかなく、私か一夏、どちらかしか行けないはずなんですが、蘭ちゃんは宣言通り、本当に何とかしたみたいで、こうして一緒に行けるわけです。
ちなみに、蘭ちゃんが何をしたかというと、私をスペシャルゲストとして、学園祭に招いたんです。
学校側は『アインツベルン社の企業代表なんて、とてもじゃないが呼べない。 そんなお金はない』と、言ったみたいですが、それに対して蘭ちゃんは『私はその人と知り合いなんです。 話してみる価値はあると思います』と、頑なに提言したそうで、あまりにもしつこく言ってきた蘭ちゃんに学校側が折れて、私にIS学園を通して連絡が来たんです。
私はそれに二つ返事に承諾したので、晴れて一夏と行けるということです。
そんな話をしていると、聖マリアンヌ女学園に到着しました。
「着きましたね」
「ああ。 にしても、歴史を感じさせるつくりだな。 IS学園とは大違いだ」
「ふふっ、それはそうですよ。 だって、IS学園は創立十周年も経ってないんですから。 それに、IS学園は何かと物騒ですから、最新鋭の設備じゃないとダメなんですよ」
IS学園が建てられたのは、ISが登場して、しばらくしてからです。
そして、ISが登場したのは十年前。
ですから、IS学園はまだまだ歴史のない学校なんです。
まあ、扱うものが扱うものなので、IS学園で起こった問題は他の高校よりも遥かに危険なものなんですけど。
「とりあえず入るか」
「そうですね。 連絡もしてありますし、蘭ちゃんが待っていますはずです」
生徒会長ですから忙しいはずなんですが、蘭ちゃんは私たちが来るのを待っていてくれるみたいです。
まあ、私がアインツベルン社の企業代表であることと、私の恋人が世界で最も重要視されている男性である一夏であるということが、学校側にそうさせた大きな原因でしょうけどね。
「招待券の確認をします」
私たちが校門に向かうと、修道女服を着た女性がそう声を掛けてきました。
「はい」
一夏が招待券を見せると、私の方を見た。
「あの、貴女は?」
「私はウリアスフィール・フォン・アインツベルンです。 五反田蘭さんを呼んでくれませんか?」
「あ、貴女がそうでしたか! よくお越しくださいました! すぐに連絡しますので、少々お待ちください!」
私が名前を出すと、即座に態度が丁寧になりました。
流石はアインツベルンですね。
っと、蘭ちゃんが来たみたいですね。
連絡するまでもありませんでした。
「あ、一夏さん、ウリアさん! 遅れてすみません!」
制服姿の蘭ちゃんは、初めて見ました。
似合っていて、可愛らしいですね。
「いえ、来た分なので構いませんよ」
「にしても、よく来れたな。 生徒会長なんだし、忙しいだろ?」
「いえ、ここの生徒会メンバーは優秀ですから、私がいなくても大丈夫なんです。 まあ、ウリアさんが来るから、先生たちに『くれぐれも怒らせないように』って言われたって言うのもあるんですけどね」
蘭ちゃんは苦笑しながらそう言いました。
やっぱり、学校側は私の名前が怖くて仕方がないみたいです。
「さてと、まだイベントまで少し時間がありますけど、どうしますか?」
「待ちますよ。 ここで目立っちゃったら、大変ですからね」
私の名前くらいなら、大抵の人なら聞いたことがありますし、私の姿に見覚えのある人も、それなりにいるでしょう。
現に、私たちは目立ってますから。
「そうですね。 じゃあ、こっちです。 ついてきてください」
私たちは、蘭ちゃんの後ろをついて歩いていきます。
蘭ちゃんは生徒会長ということもあり、知られており、そんな蘭ちゃんと一緒にいる私たちに好奇の視線を浴びせています。
まあ、白い髪なんていう特異なものがあれば、眼を引きますよね。
それに、その近くにいる一夏は格好いいですからね。
女子なら、気になるものですよね。
「凄い見られてますね」
この視線には、流石に気づきますよね。
「ウリアは可愛いからな」
「一夏は格好いいですからね」
私と一夏は、まったく同時にそう言いました。
それには、蘭ちゃんも苦笑してました。
「本当に息ぴったりですね。 羨ましいです」
「ははっ、そうか?」
「はい。 私も早くそんな恋人がほしいですよ」
「蘭ちゃんなら出来ますよ。 今はまだ、出会いがないだけです」
蘭ちゃんは可愛いですし、万能です。
世の男性からしてみれば高嶺の花ですが、出会いさえあれば、蘭ちゃんならいつでも恋人を作ることが出来るでしょう。
「そうですか? ウリアさんに言われると、自信が出ます」
「ならよかったです」
にっこり笑った蘭ちゃんに、私も笑みがこぼれます。
やっぱり、蘭ちゃんには、笑顔が似合います。
「さ、つきましたよ。 ここがお二人の控え室です」
ついたのは、応接室と書かれた部屋でした。
「えっと、私は少し出てきますけど、何かあったら遠慮なく私に連絡してください。 出来る限り、要望には応えますから」
「わかりました」
まあ、あまり要望はありませんけどね。
「仕事、頑張れよ」
「はい。 じゃあ、私はこれで! また来ます」
「おう」
蘭ちゃんは、応接室を後にしました。
Side〜ウリア〜out