皆さん、お久しぶりです。
テストがあったりして、パソコンに触れることができず、更新が遅れました。
最後の最後でこけて萎えましたが、何とかモチベーションを上げて頑張りました。
第九十四話『遭遇』
Side〜ウリア〜
「今日は本当にありがとうございました!」
イベントが終わり、学園祭を時間いっぱいまで楽しませてもらい、私たちが帰る時間になると、蘭ちゃんがお礼を言ってきました。
ちなみに、学校側の私たちへのおもてなしが正直引くくらい徹底されて、ほんの些細なミスで怒られている人が多発していたりもいました。
もちろん、そんなことで怒られるのはその人にも悪いので、止めさせましたけど。
アインツベルンの名前は、やっぱり怖いものみたいですね。
「本当なら、もっとやりたいところなんですけど、これに関してはどうしようもありませんでした」
「いえ、よく私を呼ぶことを許させたことが凄いですよ。 いくら蘭ちゃんが私たちの友達とはいえ、アインツベルンの人間を呼ぶのは、学校にとっては恐ろしすぎるものですからね。 アインツベルンは、やろうと思えばどんな企業も潰せてしまいますから」
「もう、これは蘭の頑張りだよな。 俺も、まさか本当に学校側に了承させるなんて、正直驚いたよ」
「誘ったなら、お二人に一緒に回ってもらいたかったですから。 私、頑張りました!」
「今度、お礼をさせてもらいますね」
蘭ちゃんの頑張りのおかげで、私たちは一緒に楽しめたんですから、何かしてあげたいんですよ。
頑張った子には、ご褒美が必要だと思うんですよ。
「いや、悪いですよ! ウリアさんも予定にはなかった一夏さんもイベントに出てもらったんですから、それだけで十分です!」
「巻き込まれたけど、楽しかったから気にするな」
「私たちがしたいだけですから、蘭ちゃんは気にしなくていいですよ」
「そう……ですか? そう……ですね。 わかりました」
自分に言い聞かせるように呟いた後、蘭ちゃんは私たちに向けてそう言いました。
「また今度、お礼をしにいきます」
「じゃあな、蘭。 また今度、五反田食堂に行くよ」
「はい、いつでも来てください!」
蘭ちゃんに見送られ、聖マリアンヌ女学園を後にする私と一夏。
まだ三時過ぎですから、ディナーまで時間がありますね。
私たちは、取材のときに貰ったディナーを食べに行くんです。
「これからどうしましょうか?」
「そうだな、やっぱり戻るのも時間がもったいないし、このままデートしようぜ」
確かに、夕食時まで三時間程度しかありませんし、わざわざIS学園に戻るのは、時間がもったいないですね。
帰るくらいなら、このままデートの続きでもしたほうが有意義な時間になるでしょう。
もっとも、最初からそのつもりで、そのお店は正装でないと入れないので、私はドレス、一夏はタキシードを持ってきているんですけどね。
ちなみに、一夏のタキシードは、私の彼氏なら必要になるときもあるだろうということで、お父様が私の彼氏と認めたときに、一夏にプレゼントしたものです。
「さて、行こうか」
「はい」
時間は有限です!
☆
「似合っていますよ、一夏」
「おう、ありがと。 ウリアも凄く綺麗だぞ」
「ありがとうございます」
私はドレスに、一夏はタキシードに着替え、今回ディナーをいただくお店である、ホテル『テレシア』の最上階にあるレストランへと向かっています。
「……相変わらず視線が凄いですね……」
いつもの如く、視線が集まります。
私がドレスを着たときは、大抵こうなります。
「そりゃぁウリアは滅茶苦茶綺麗だし、しかも、今日はそのドレスも相まって、いつも以上にウリアの可愛さとか綺麗さとかが引き立ってるんだよ。 だから、目立つのは当然だろ」
いつも思うんですけど、一夏って気恥ずかしい言葉も、素で言いますよね。
まあ、それがいいんですけど、慣れてきた私も、たまにドキッとします。
「着いたみたいだな」
「みたいですね」
そうこうしているうちに、目的地であるレストランへと到着しました。
「いらっしゃいませ。 お二人ですか?」
レストラン入り口には、初老のウェイターが立っていました。
「はい。 これなんですけど、使えますか?」
一夏と私は、携帯にデータとして送られてきたディナー券をウェイターに見せる。
「ご確認させていただきます。 ……ええ、ご使用できます。 それでは、こちらへどうぞ」
ウェイターの後ろをついて歩いていると、私はとある人物に目が留まりました。
「っ!」
その人は、長い金髪で身長が高く、紫色のドレスを身に纏った、美女と形容すべき女性です。
私は、その女性を知っています。
なぜなら、その女性は、私たちの敵である亡国機業の幹部なのですから。
「どうした、ウリア。 何かあったのか?」
一夏は、私の些細な変化に気づき、声をかけてきました。
どうしましょう……彼女は敵ですが、ここは公共の食事の場。
ここでそういう話は、止めておくべき……でしょうね。
「いえ、何でもありませんよ」
「……そうか。 それならいいんだけど」
一夏は、私が言いたくないのに気づいてくれて、追求しないでいてくれました。
しかし、私が黙っていても、相手から接触して来ては、どうしようもありません。
「あら、久しぶりね」
まったく、どうしてそんな行動が出来るんでしょうか。
敵である私に、声を掛けてくるなんて。
「ええ、久しぶりですね、スコール」
彼女の名はスコール・ミューゼル。
亡国機業内で行動派の統括を任されている、いわば敵側戦力の指揮者。
そして、一般人としては異常なほどの魔力を持っている、不確定要素です。
「えっと、知り合いか?」
一夏は、私とスコールの会話から、そう判断したようです。
確かに、面識もありますし、対峙したこともあります。
「まあ、そんなところです」
ですが、私としては、ここで一夏と関わらせたくはありません。
せっかくのディナーが、台無しになってしまいますから。
「貴女から声を掛けてくるなんて、一体何のようですか?」
「特にないわ。 ただ、久しぶりに会ったから、声を掛けただけよ」
「そうですか。 悪いですが、私たちはこれからディナーなので、長々と話をするつもりはありませんよ」
「そうみたいね。 じゃあね、ウリアスフィール・フォン・アインツベルンちゃん。 また会いましょう」
そう言って去っていくスコール。
「……いやでも会うことになるでしょうけど」
私は、スコールが去った後にボソッと呟く。
私とスコールは敵。
いやでも再び合間見えることになるでしょう。
「……ウリア、行こうぜ」
一夏は、スコールと何かあるとわかっているはずなのに、聞いてくることはしませんでした。
私の思いがわかっているのか、それとも触れるべきではないと判断しているのかは定かではありませんが、今の私からしてみれば、とてもありがたいことです。
「そう、ですね」
今は、スコールのことは忘れましょう。
せっかくの料理が、美味しくなくなってしまいます。
Side〜ウリア〜out