小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第九十六話『一夏への説明』



Side〜ウリア〜

私たちは帰ってきて、今はIS学園の自室です。
あの後起こった問題といえば、私がアインツベルンの人間だとばれたことです。
もうあれですね。
もうこれから認識阻害をかけるべきですね。
おかげでお店のオーナーや、ホテルの重役がやって来て、土下座を始められたりしましたから。
疲れました。
とにかく疲れました。

「本当にああいうのどうにかならないでしょうか……」

「多分、無理だろうな。 アインツベルンは世界中で有名だからな。 潰されたくないから、死に物狂いで謝罪とかしてくるだろ。 だからああなるんだろうな」

「こういうとき、本当に困ります……」

私が気にしないといっても、その大きすぎる名前の所為で、いろいろと過剰になるんですよ。
もう、本当に認識阻害を多用してしましょうか……。

「まあ、認識阻害程度ならいいんじゃないか? 魔術を隠してはいるけど、一般人は認識阻害なんて気付かないだろうしな」

口に出してないのに、心で思っていることに対して的確な答えを言ってきました。
一夏は心が読めるんでしょうか。

「ウリアの考えてることなら、大体わかる。 まあ、ウリア限定だけどな」

私も、一夏の考えはある程度読めるんですけどね。
でも、一夏ほど正確じゃありません。
……私は一夏のことがわかってないんでしょうか……。

「んー、多分、それは違うんじゃないか? 俺はただ、ウリアのことになると、人間止めれるんだよな。 多分、危機的状況で本当にウリアのためになるなら、千冬姉でさえも倒せる気がする。 ってか、英霊倒せそうな気がする」

「な、なぜか異様なほどにあるその説得力……。 でも、一夏なら本当にやりかねませんね……」

なぜか、一夏なら本当にやってしまいそうなので怖いです。
というより、一夏はとある未来では世界と契約してですが英霊になるので、英雄になる資格はあるんです。
英雄の果てにあるのが英霊なので、英霊に勝てるかもしれないですね。
まあ、それに伴うほどの実力がなければダメなんですが。

「……さて、そろそろ話しましょうか。 あの時の女性についてを」

「なんだ、話してくれるんだ。 てっきりあのまま有耶無耶にしたままにすると思っていたんだけどな。 まあ、話してくれるなら、俺は聞くよ」

「元々後で話そうと思っていましたから。 後々一夏にも大きく関係するはずなので、遭ってしまった以上、知っておいた方がいいでしょう」

「そうか」

スコールと出会わなければ、一夏に言うつもりはありませんでした。
余計な気を遣わせてしまいますからね。
そもそも、スコールは滅多に表立って出てこない。
スコールは幹部ですから、下を動かしていますからね。
だから、彼女が出てくるなら、それだけ本気ということ。
彼女が出てくるのは、まだ少し先でしょうしね。

「あの女性の名前はスコール・ミューゼル。 これから私たちの敵となる亡国機業の幹部で、襲撃などの軍事系統の指導者です。 普段は出てきませんが、相当重要なこととなれば、彼女は直接手を出してきます。 その時は覚悟したほうがいいでしょう。 彼女の実力は、少なくとも全盛期の千冬義姉さんとほぼ互角ですから」

「なっ! あの千冬姉と互角!?」

スコールの本気は、今の千冬義姉さんを超えます。
全盛期の千冬義姉さんで互角といったところでしょう。
現時点でスコールを倒せるのは、英霊を除けば私くらいでしょう。
千冬義姉さんが全盛期の勘を取り戻してくれれば、こちら側の戦力はさらに強固なものになるのですが、千冬義姉さんは教師の身。
そう言った時間は中々取れないでしょう。
ですから、私が頑張らなければなりません。

「厄介だな……俺がスコールとやりあうのは危険だな」

「それに、一夏にはマドカがいますからね。 スコールは私が相手をしますので、一夏はマドカを救ってあげてください」

一夏が敵側で気にしなければならないのは、亡国機業の頂点である一夏の両親と、一夏の双子の妹であるマドカです。

「ああ、わかってる」

「ならいいです。 そういえば一夏、気づきましたか?」

「気づいたって……まさか、スコールの魔力量についてか?」

どうやら、一夏は気づいていたようです。
ちょっと驚きです。

「ええ。 スコールは、一般人にしては異常なほどの魔力を持っています。 それこそ、一夏みたいに。 だから、私はスコールを誰よりも警戒しているんですよ。 もしもスコールが一夏のような存在だったら、という可能性が出てしまったので」

「……スコールが俺みたいに、英霊を持っているかもしれないということか……」

「はい。 リグレッターは学園で待っていてもらいましたが、私の『サーヴァント』の中にいる英霊たちは、外に気配を感じさせずに、英霊の気配を感じ取れるんです」

個人差はありますが、英霊は互いに、近くにいれば存在を感じ取れるという性質があります。
ですが、私の『サーヴァント』に宿る英霊たちは、ISという入れ物のおかげで、外にその存在を気づかせないんです。
まあ、相当のレベルの気配探知能力を持つ英霊なら、ISの中にいる英霊の気配をも感じ取れるでしょうが。
しかし、外の気配は中からでもわかるので、一方的に英霊の気配を感じれるんです。
それこそ、アサシンクラスの英霊でもない限りは、気づかないなんてことはありません。

「アルトリアたちは、誰一人として他の英霊の気配を感じ取ることはありませんでした。 ですから、あの時あの場に他の英霊はいなかったということになります」

「だからといって、スコールが英霊を持っていないという証拠にはならない。 束さんの造った無人機のコントロールを奪うほどの能力を持った者は、英霊である可能性が高いらしいし、敵である亡国機業の連中が保持している可能性も高い。 一番マスターとしてありえるのは、現段階でスコール、って感じか」

「その通りです。 まあ、どの道スコールを警戒するに越したことはありません。 英霊をもつ可能性が高く、個人の戦闘能力も非常に高いですからね」

それだから、私が相手にしないといけないんです。
英霊に対抗できるのは、高レベルの魔術師か、同じ英霊のみ。
そして、スコールの戦闘能力に対抗できるのは、私か千冬義姉さんくらいです。
それらを考慮すると、必然的に私が相手にしなければならないんです。

「まあ、相手がどんな奴であれ、ウリアに手を出すなら俺は本気で潰すだけだ。 とりあえず、今以上に強くならなきゃな。 俺がスコールを相手に出来るくらいに強く」

「凄い目標ですね。 でも、一夏はマドカですよ。 家族の問題は、自分で解決したいでしょう?」

「そのつもりだって。 今のは意気込みだよ。 それくらいのつもりでやらなきゃ、強くはなれないからな」

本当に、一夏は向上心が高いですね。
私も、負けないようにしませんとね。

「さ、もう寝ましょう」

「そうだな」


Side〜ウリア〜out



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