小説『Zwischen』
作者:銀虎()

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(侠・蹂狂恋壊慣壊日常)


百足衆機動部隊・翼猫。百足衆で最速最自由の部隊。味方には協力を惜しまず。大型バイクをそろえた。圧倒的速度で救援増援に駆けつける。しかし、紅葉や竹雀と違う美学の持ち主たちで、リンチや女子供に手を出す事などを忌み嫌う。しかし、
そんな、ある意味での特殊部隊である翼猫のトレードマークは、ヘルメットに刻まれた赤格子の模様。
865cc空冷パラレルツイン、漆黒のボディーカラー英国老舗バイクメーカー・トライアンフNEWBONNEVILLEの独特のモーター音。壱が待つ市民病院にそのバイクは止まった。
「紅葉から情報はあるかや。」
壱は、渡されたヘルメットを被りながら言った。
その声かけに首を横に振る。
「そうか。利家の居場所は」
「紅葉からの連絡を待っています。」
「わかった。わっちらと違って人海戦術が基本じゃからな。待ち合わせ場所は。」
その声かけには頷いて落合場所があるそうなので壱はそこに向かった。

東方がくたばってしまった頃、利家は。
「はぁはぁ。」
142人目の男を、叩きのめしたところだった。圧倒的な強さ最初の数人は、ボでいいブルー一発でKOしていたがここにきて拳や額から血が流れ出し止まらなくなってきていた。
「いやいや、圧巻だよ。伊達総長。」
下卑た笑みを浮かべる大井は、伊達にそう呼びかける。
「東海最強も数の前には、ただの人間かよ。」
利家は、143人目の鉄パイプをよけ続けながらそれを聞いていた。
ジャッジ
その鉄パイプが、利家の額を深くかする。

ニッッ
鉄パイプを振り回し手いつやつの顔に油断が浮かぶ。
グツ
その隙を見逃さず利家は、男の股間に長い足を蹴り上げる。金的に走る激痛に男の体は、くの字に曲がる。
ガン
この男の頭を、膝を肘に挟み込み強く潰す。
「がっっ」
男は失神して即興リングに横たわる。それを利家は掴みあげると、
ダカッ
リングの外へと放り投げる。
「一人ずつじゃ拉致があかねぇ。2,3人まとめてこいよ。」
利家は、大井のプライドへの蹂躙行為をやめない。
「それじゃ、リンチになっちゃうでしょ。僕たちはリンチ嫌いなの。だからいやだ。やらない。」
大井は数人がかりのリンチでは、利家の武器を拾わせるスキができてしまう危険性をこわがっていた。そして、最強の名が高い伊達利家を倒したという称号に強い執着が有った。そして、自分がただタイマンを張っても勝てないという事実にもしっかりと確認し自覚していた。だからこそ、こうやって多くの人間を使うことにより、利家の体力を十二分に減らしていく作戦だった。闘わせている手下には、アトランダムに胴に鉄板を仕込ませて、ボディブローなどの攻撃では、逆に利家の拳が壊れる様に算段を整えていた。その甲斐あって利家の両拳からは血が流れ出して止まらない状態だった。フットワークも鈍いのは膝蹴りで膝にダメージを負ったのだろう。ここまでうまくいくと笑いが止まらない。こらえるのに必死だ。
「つぎはまだかい?」
しかし、利家の顔から狂気は消えずそして、笑みも消えることはなかった。
絶対的な余裕。鉄板があるかもしれないという危機を無視して、躊躇なくボディブローや膝蹴りを見舞う利家井の前にはもう不能の人間の山が積みあがっていた。そして、毛鉄板のある人間に限っては、頭部への攻撃しかやらなくなっていた。それも、強力なものばかりで鉄板を仕込んでくる奴の頭部からは鼻と頬骨がなくなってしまうほどだった。
「116人もまだ残ってるんだぜ。」
大井は、叫ぶように言った。半分の峠は越えたものの、まだ三桁の人数が残る。大井が優位性はまだグラツウほどではない。しかし、利家には関係のないものらしい
「だぁかぁらぁ。早くしろっての面倒だから。」
まるで、やっつけ仕事でもしているかのようにせかすのは利家。
「早く次行って来い。」
そう大井が叫ぶとやっと144人目が出てきた。リングに立つとすでに腰が引けていた。

パッシュ

右フック一閃
糸の切れたマリオネットのように144人目が倒れた。今、115人を支配するのは、大井の恐怖と利家の狂気それはまだ均衡を保っていたが、それは、ギリギリのバランス。崩れかけの均衡。
「残りは、115人だ。」
利家の狂気は止まらない。狂った笑顔は止まらない。

そのころ、海浜公園周り松林。
そこに止まっているのは、金羊毛と漢字が毛筆体で書かれたビックスクーターの群れ。おおよそ、20台。
 「大井さんがリングに向かって歩きだしたら一台に二人構成で一気に突撃。後ろのやつが利家にフックのついたロープを引っ掛けてあたりを引きずり回す。」
 紙に書いてあることを読むクレイジークロッグ柄の入ったTシャツを着た男。
 「なんで、いちいちそこまで待つんスか。今からやちゃえばいいじゃないですか。」
 その男が言うと近くの男が
 「相手は、利家だからな、用心を重ねて動きが鈍ってから、作戦を実行するとのことだ。」
 「へぇ〜。なるほど、策士ですね。あっ、自分トイレ行ってきます」
 その男は帰ってこなかった。そしてそのことにだれも気付かなかった。
 
 「なるほど、えげつないのう。」
警察署横の二四時間マンガ喫茶前で、大型バイク集団がクレイジークロッグのTシャツを着た奴から道を尋ねてそれに答えるほどの時間で情報を入れてもらった。
 「ありがとじゃな。紅葉。」
 「いえいえ、情報のスピードでも、翼猫に負けられないっすから。」
 「そうじゃな。弧の後の指示は紅葉の判断に任せると言っておいてくりゃれ。わっちらも、もう行かねばの。」
 そういって、格子模様のヘルメット集団は海浜公園周辺松林に向かう。」

ドチャ
159人目の男が利家の見事なワン・ツーのジャブからのストレートでノックアウト
「後、100人だよな。総長さん。」
血塗れで立つ男・両拳から滴り落ちるほどの流血量。強さのボルテージがあがっていく。それは、流血量に比例するように上がっていく。
「チョーシに乗りやがっテ。」
低い声がして、大きな躯が出てきた。2メーターを余裕に超えて。150キロを超えているだろう。高砂部屋とかにいそうな大きな朝鮮系の男。
「俺が、ケりヲつケてやる。」
192センチの利家を見下ろす。利家にとってあまりない経験。両拳から血が止まらない。膝の大きなダメージによるフットワークの鈍重。
「大きいな。化粧をするか。」
狂気に笑うと利家は、両拳を開いた。赤い赤い血は手のひらにたまる。
「百足の名前の由来を知ってるいか。」
恐怖から滲みでる音は、多分こんな声なんだろう。
「黒い長身痩躯それと、赤い髪の毛。」
大井は、静かに言った。
「それは、俺の本気の証拠。流血に比例する俺の不思議な特徴。」
たっぷり手のひらに血を貯めた利家はそれを髪の毛に浸み染める。
そして短い利家の髪は赤く染まり。それから流れ落ちる血で顔も赤くなる。
深漆黒の特攻服に、赤の頭そして、狂気の空気。恐怖の威圧。
百足と言う毒蟲。空気を汚染し相手の戦意を枯らし殺す。
「100人を目途に本気を出そう。」
百足は毒牙を剥く。
「リングに入っているんだ。もう、君に攻撃するのを俺は許される。」
曲の相手に利家はそう嗤いかける。
「うっっ。」
その狂気はそれまでの、狂気とは質が違った。先ほどまでの狂気を例えるなら、竹刀の様に、相手を打ちのめすだけの威圧。しかし、今の狂気は抜き身の日本刀。殺意に鬼畜に猟奇。相手を殺しても何も感じないだろう。

毒に侵される。

異質なパフォーマンスとジンクスが、金羊毛を包み込む。百足の毒はそうして、広まってく、感染していく。相手の抱く恐怖は、相手の攻撃力・戦闘力を大いに殺ぐ。

見下ろしているはずの大男が、いつの間にか利家に見下ろされている。
男の腰が引けて高さを損なっているのだ。男の本能が告げる警報は、大きな音を立てけたたましく男の中で鳴り響く。
「いくよ。」
そう告げられた瞬間後に、男の顔横には、利家の足が有った。
グチャ
肉の裂ける音と共に、血を噴き出しながら男は倒れ失神した。
ドガッッ
その巨躯が有ると邪魔なのだろう。倒れ切る前に顔面に拳が入る。倒れる方向を変えて巨躯はロープ側にもたれかかるように倒れる様な形になる
プチッッ
その股間をけり上げて、その巨躯はリング外に放りだされる。
「顔面右頬裂傷・鼻骨骨折・精巣破裂。まだやるのかい。金羊毛」
百足の毒は感染を広げ、威力も上がる。怖じ気の空気は爆発的に殺人的に拡散していく。大男が反殺しになってから次の挑戦者がリグに上がらなくなった。
「次の人は誰だい。」
赤頭の黒い長身痩躯が、ギラギラとした殺気帯びた眼差しが、99人の金羊毛に突き刺さる。

ゾワッ

 金羊毛の世界が歪む。警報が鳴り響く、打ち鳴らされる。
 
 ジリッッ
 
 二、三人が恐怖に耐えられずに、走り出し逃げ出す。それに、多くの人間が芋づる式につられ逃げ出す。

 バズッッ 
「糞共・動くな。」
大井は、手に持っていた大型サバイバルナイフが横の遊具の板壁に深々と突き刺さる。
「逃げ出した奴は・俺は直々に出向いて殺してやる。」
激昂の声を張り上げる。金羊毛500人をまとめ上げる大井のプライドと強さ。嘗められたら終わりのこの世界、大井の感情はもう、噴火を止められない。
「次は、郷裏・貴様だろ。」
サバイバルナイフの先の遠い先に射止められた。金髪の男、眼には怯えの色。進めば修羅がいて、引けば悪魔。地獄の板挟み。
 「郷裏くん。いやなら逃げればいい。」
 利家は穏やかに行った。
 「どうせ、夜明けには。羊は百足の腹の中だ。」
 撫でつく毒は、郷裏を包み込む。
 「大井、てめぇの傘下はもう使えねぇンじゃ、ないか。」
 利家はリングのロープに背を預ける。
「もう、そろそろ。繰り上げながらラスボスの登場にしないか。」
再び手を髪に撫でつけ、赤く染める。

わざっっ

その一言に99人の眼が、大井に向けられ突き刺さる。
がっつ

サバイバルナイフを暦の縛りるけられている柱、暦の頬に水平に、頬の数センチ、の深く突き刺す。暦の長い髪が、切れて落ちる。
「お前が勝てたなら、この女はすきに持っていけ。お前が動けなくなったら、お前の半死の眼の間で好きにさせてもらう。」
大井はそういうと、腰から大振りのナイフを出して、逆手に持つ。
リングも方に、大井が歩く。

ボォロロロロッロオ

プロペラ音の様なエンジンの音が、辺りに響き、周辺の人間の聴覚を支配・占領する。

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