小説『とある科学の零回帰』
作者:トムヤム()

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はい、どーも。毎度お馴染み篠崎(しのざき) 零(れい)です。
この前の能力開発から約1ヵ月、みっちり実験して俺の能力について調べた。
その甲斐あって俺の能力の詳細が分かった・・・・・訳ではなかった。とりあえず、何故なのかという説明から入りたいと思う。

ハイ、回想ド〜ン!!



◆◇◆◇◆◇◆


俺の能力が分からない、というのは調べ始めてすぐに問題になった。

「で、俺の能力の詳細はともかく、なんで能力名すら付かないの?」

やっぱり厨二病って言われても二つ名って欲しいよね。っていうか厨二病って結構馬鹿にされたりするけどなんだかんだ言って皆ハ〇ー・ポ〇ター、好きなんだよね。

「さあ?」

ガスッ!!

「痛ったーーー!!思いっきり脛を蹴ることないじゃないか!?冗談だろー!!」

「うるさい。イラっときたんだからしょうがないだろ。」

「まあ、冗談はさておき、君の能力の研究が進まないのは仕方がない部分が少なからずあるんだ。何せ君は世界に50人程しかいない原石(げんせき)の1人だからね。この学園都市でも原石の研究はほとんど進んでいなくて原石はまだ未知の存在とも言えるんだよ。
だから君の能力についての研究も手探りでやるしかないんだよ。」

「ふ〜ん、じゃあ、しょうがないね。」

「だからしばらく、そうだな・・・少なくとも1ヵ月位はこんな感じでやっていくしかないと思う。」

「結構掛かるね。」

「ある程度の実験が終わればもう少し進んだステップの実験に入れるから。そうすれば零の能力もはっきりしてくると思う。」

「そっか。」


◆◇◆◇◆◇◆


「という訳で1ヵ月経った訳だけど研究は少しは進んだ?」

「どういう訳か分からないんだけど・・・。とりあえず零の能力についてだけど、御免ね。まだほとんど何も分かってないんだ。」

「まあ、いいけど。で、前に次の実験に進むとか言ってたけどあれはどうなったの?」

「ああ、その話。あれならもう準備は整ってるよ。後は零の意思次第だけど・・やる?」

「良いよ別に。俺だって自分の能力について知りたいし。」

「そうか。それならついてきてくれ。」

そのまま俺は剛の後についていく。



〜〜〜〜〜〜〜移動中〜〜〜〜〜〜〜〜

「ここだよ。」

そう言って連れてこられたのはいつものような実験機材が並んだ部屋ではなく、何もない広い、縦横それぞれ100m位の正方形の部屋だった。その部屋の真ん中には俺と同じくらいの子供が1人立っていた。

「あン?誰だテメェ。」

「え〜と、あの子は誰?」

俺は剛に尋ねる。

「あの子は、一方通行(アクセラレータ)と言って君と似たような子なんだ。原石ではないけど、発現した能力の特殊さからこの研究所に来ることになったんだ。」


「へえ〜。で何でその一方通行のいる部屋に連れてこられたの?」

なにかとてつもなく嫌な予感がするんですけど・・・

「それはね、零と一方通行で戦闘してもらう為だよ。」

おかしくね?なんでそうなるの?

「え、え〜となんでそうなるのかな?だって俺の能力を調べる為だよね?なんでそれと戦うことにつながるの?」

「能力開発を受けたのなら能力の強弱に関係なく、能力を発現している。これは知ってるよね?」

「ああ。無能力者(レベル0)判定は能力が小さすぎて観測できないから、だっけ。」

「そう。じゃあ、なんでそんなに違いが出るのか?それは思いが足りないからだと思うんだ。」

「・・・なんか急に非科学的になったね。」

「まあ、人間や生命についてはほとんど何も解明されてないから仕方ないでしょ。」

「そうかもしんないけどさ・・・。」

「能力に必要な自分だけの現実(パーソナルリアリティ)は人の思いと密接に関係している事が報告されている。
そこで零に質問。」

あれ?なんか似たようなシーンに出会ったことがあるような・・・

「人の思いの中で一番強いと言われているのは何だと思う?」


「彼女が欲しい、とか?」

「・・・・・・・生への執着だよ。」

どっかで聞いたことあるよね、うん。間違いなくあるよね。

「火事場の馬鹿力ってよく言うよね。あれは科学的に証明されていて、普段はセーブされている人間の力を100%だしている状態なんだ。
だから、そんな状況になれば能力もはっきり発現するんじゃね?みたいな。」

「みたいな。じゃないだろ!?何でそんなにアバウトなんだよ!?―――――――――ってもういねぇし!!」


『じゃ、頑張ってね〜零、死なないように。』

・・・・あの野郎、もう上のコントロールルーム?にいやがる。なんちゅう速さだ。


「まだ此処に居るってことは今度はテメェが俺と戦うってことでいいンだよなァ?」

「そうみたいだな。」


「ケッ。お前もかわいそうだなァ。こんな所で俺と戦う羽目になるなんてなァ。そうじゃなければもっと長生きできたのによォ。」

「え〜と、それは俺が死ぬってこと?」

「ヒャハハハッ。それ以外にあるっつーのかよォ。」

「・・・・・それは嫌だから逃げさせて貰います!!!」


『あ、逃げられないよ。そこは完全に封鎖したから。』

「だってアイツ完璧に俺の事殺すって言ってるんですけど!?」

『大丈夫だよ。君能力が判明し次第やめるから。・・・・それまで死なないでね?それじゃ、頑張って。』

「ふざけんなぁーーー!!」


「何言ってやがる。それじゃあ行くぜェ!!」

「ちょ、ちょっと待てよ。くそっ!!」

そう言ってかなりのスピードで突っ込んで来た一方通行を横に某狩りの達人ゲーのような緊急回避で避ける。

「へぶっ!!」

当然、回避後の事は何も考えてなかった訳で。

「・・・・いてぇ。」

「アアン?なンだテメェ?能力者なンじゃねェのか?」


「そうなんだけどさ、イマイチどんな能力なのか自分でも分からないんだよね〜・・・・だからすこ〜し手を抜いてほしいな〜なんて思うんだけど・・・」

「そンな事は俺には関係ねェよなァ!!」

「そうですよねーーー!?」

今度はさっきよりも速いスピードで突っ込んできた。

あ〜あ、能力が詳しく分かるまで使いたくなかったんだよな。何が起こるか分からないから。でも使うしかないよな。
零回帰(カウントゼロ)って言ってたよな。確か『あらゆるものの数値情報を0に出来る能力』だっけ?・・・・・・曖昧すぎるだろ!!上手くイメージ出来ないんだよ!!
まあ、愚痴を言っても仕方がないから、う〜んと数値情報を0にするんだろ?ってとりあえず避けなきゃ!

ヒュッ!


「・・・・テメェ一体何しやがった?」

「・・・・・・なにしたと思う?」


「ヘッ教える気はねェってか。」

いやいや、俺も教えてほしいんだけどね。
俺が立っていたのは確かに俺が避けた方向だった。ただ“10mも離れていた”が。

「(なンだ?何をしやがったアイツは。空間移動系か?いや、念動力で自分を動かした可能性もあるか・・・まァ、そのうちはっきりするだろォ。)
オイ。休んでる暇なンかねェぞォ!」

「いっ!!?」

また突っ込んで来やがった!まだ自分でも何をしたのか分かってねえっつーのに!
取り敢えずあいつは直線でしか攻撃?して来ないから横に跳べば避けられるけど・・・・

「甘いンだよォ!三下がァ!!」

「げ。」

流石に読まれて急に方向転換してきたし!

「くっそ!!」

あああ!能力よ!発動してくれーーー!

そう思いながら前に1歩踏み出そうとした瞬間、何故か“後ろにいた”はずの一方通行が、“目の前にいた”。

「・・・・へっ?」

「チッ。」

ヤベー!ヤベー!こんなに近かったら俺すぐ殺される自信あるわ!

そう思って後ろに跳ぶように離れると、また普通では考えられない距離まで移動していた。

・・・成程。だいぶ能力の使い方が分かってきたぞ。


「(今の移動の様子を見る限り、やはり空間移動系の能力らしいなァ。だが、ただの空間移動とは違うみてェだ。
まァ、どっちにしろ今のこの状況じゃ俺に攻撃する方法が無ェっつーのが事実。アイツが攻撃してくれば変わるかもしれねェが、ここには生憎空間移動させるようなモノはない。
・・・・チッ、手詰まりだな。この辺で止めねェと千日手だなァ。)」

どうすっかな〜。とりあえず、この瞬間移動擬きの使い方は分かって大体好きなところに移動できるようになったけど、確かアレだろ?一方通行はあらゆるベクトルを操るんだろ?・・・攻撃方法無いよね。流石、学園都市最強と呼ばれるだけあって半端ないな、こりゃ。・・・・あれ?急に止まって攻撃してこなくなったけど。

「ん?どうかしたのか?」

「オイ、実験はまだ続けなきゃ駄目なのかァ?」

『・・珍しいな。こっちがストップをかける前に君がそんなことを言うなんて。』

「ケッ。オマエらも分かってンだろォ。この実験内容じゃ、俺は攻撃方法が無ェ。だが、アイツは能力すらさっき分かったみてェな様子だ。」

『やっぱり分かったか。』

「アタリマエだろォ。俺を誰だと思っていやがる。」

『そうだったな。今日はもう休んでもらって構わない。』

「フン。」

・・・・・なんかいつの間にか実験が終わったらしい.

良かったーー!!俺生きてるー!
いやー、一時はどうなることかと思ったけど、能力も一部だけど使えるようになったし――――「オイ。」―――うおっ!?びっくりした〜。もうとっくに出て行ったのかと思ってたら、まだいたんだ。

「何?」

「オマエ、名前は?」

「篠崎 零。零って呼んで。」

「そォかい。」

「(アイツの能力。空間移動系の能力なのは間違いなさそォだが、まだ何か隠してやがる。
く、は、面白ェ。条件付きとはいえ、この世界に力を隠しながら俺と戦えるヤツがいたなンてなァ。)」

「名前聞いてきたんなら名前で呼べよ。」

「チッ。ウルセェなァ。・・・零。これでいいかァ?」

「それでよし。」

「ケッ。」

今度こそ一方通行は実験室から出て行った。



「いや〜お疲れ様、零。まさか一方通行相手に無傷とは流石に僕も驚いゴフゥッ!!」

俺の前に来るなり、こんな事を言い出した剛に全力でドロップキックをした俺は間違ってはいないだろう。

「・・まあ、過ぎたことは良いとして、俺の能力はどうだったの?」

「ああ。君の能力は空間移動系の能力のようだ、というのは君も分かっただろう?」

「・・・・・う、うん。」

恥ずかしっ。ずっと“瞬間”移動だと思ってた。“空間”移動だったんだな。

「君の場合、かなり特殊な能力のようだ。でもまあ、系統が分かればもう後はその系統の実験だけやれば良いわけだからすぐに分かるよ。」

っていうかまず、“零回帰”って空間移動系じゃないよね。・・・・まあいいか特に問題がある訳じゃないし。

「じゃあ、零ももう部屋に戻っていいよ。」

「りょーかい。」

じゃ、部屋に戻って寝るとしますか。異様に疲れたし。


-5-
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