「研究所を出る?」
「あァ。不本意だが、“アイツ”と一緒になァ。」
「ぷっ。それは、タイヘンだねぇ。」
「チッ、他人事だと思いやがって。」
「それにしてもなんでまた急に?こっちに来てまだそんなに経ってないのに。」
「元々此処に来たのはテメェとの顔合わせの為だったンだと。だからそれが済ンじまえば此処に居る意味も無ェって訳だ。」
「成程ね。じゃあ、ここでお別れか。」
「ケッ、何がお別れだ、また会うハメになるだろォ。“お互い”バケモンなンだからなァ。」
「いや、お前に言われたくはねーよ。」
「何言ってやがる。オマエなンて底どころかまだ淵すら見せてねェくせに。」
あ〜らら。何故かバレてるんだけど。
「何で分かったの?此処の人ですら気づいてないのに。」
「俺の能力の本質は、『ベクトルの観測による現象の逆算によって理論値を求める』事だと思ってる。
だから此処のヤツ等が気付かなくても俺には分かる。
オマエの能力はオカシイ。」
ひどい言われようだな。おい。
「おかしいってどういう意味だよ。そんなにおかしい使い方じゃないと思うけど?」
「普通現象という結果には、そこに至るまでの何らかの過程があるもンだ。物が燃えて灰になるとかなァ。
だか、オマエの能力は違う。オマエの能力は、その途中の過程を全てブッ飛ばしていきなり現象という結果を引き起こしてる。
そンなフザけた能力を持ってるヤツがバケモンじゃねェと?それこそオカルトみてェなもンだよ。」
・・・あながち間違ってないんだよな。
「この狭い世界だ。俺達二人、“アイツ”も含めて三人が会わずに居られる筈がない。」
「じゃあ、また今度。ってことで。」
「今度会った時には絶対にオマエを地面に這いつくばらせてやンよォ。」
「是非とも二度と会いたくないんですけど!」
あいつ最後になんてこと言いやがる。まあ、なんとなくだけど打ち解けたような感じだからいいか。
さてこれからどうするかな。何だかんだ言って一方通行がいると、暇が潰れて良かったんだよな。
またこれから実験終わったら暇になっちゃうな。
取り敢えず、剛に言ってみるか。何かしてくれるかもしれないし。
◆◇◆◇◆◇◆
「という訳なんだけど。」
「そりゃそうだよね。零もまだ子供だし、此処には娯楽なんて無いから。
う〜ん。そうだな・・・・よし。じゃあ同じくらいの年の子がいる所に連れて行ってあげるよ。」
「よろしく〜。」
〜〜〜〜移動中〜〜〜〜
「此処は?」
「此処は、君と同じ置き去りの子達を一時的に預かって、勉強なんかを教えているところだよ。」
「へ〜、全然知らなかった。」
確かに学校みたいだな。
「零が実験してた場所とは反対側になるから知らなくて当然だよ。
で、どうだい?此処なら暇も潰せるかな?」
「ま、良いけど。」
誰かと話してれば時間も潰れるし。
「もう少ししたら授業も終わると思うから、その時紹介するね。」
「あいあい。」
〜〜〜〜十数分後〜〜〜〜
「・・・はあ、編入生ですか。」
「ええ。この子は実験の被験者なんですが、時間を持て余している、との事なので一時的に此処に転校という形で他の子達と一緒に面倒見てほしいんです。」
「それは構いませんが・・・一体何の実験なんですか?」
「実験と言うより、この子の能力の調査ですよ。
この子も置き去りなんです。」
「それならすぐにこちらに移されるのでは?」
「この子が見つかった状況が少し奇妙だったんですよ。その為詳しく調べていた、という訳です。」
「・・そうでしたか。」
そう言って今度は俺の方を見る。
髪は茶髪で長い。ただ、手入れがされている訳ではなくて伸ばしっぱなしといった感じだ。
顔は整っていて美人と言って良いだろう。目の下の隈がなければ完璧なのだが。
「・・・君、名前は?」
「あ、篠崎 零です。」
「そうか、私は木山 春生。不本意だが、此処で教師のようなことをしている。宜しく。」
「よろしくおねがいしま〜す。」
「それじゃあ、零を任せていいかな?」
「ええ。構いませんよ。」
「それじゃあ零君。これから教室に行って、挨拶してもらう。良いね?」
「は〜い。」
「それじゃあ呼んだら入ってきてくれ。」
うわ、地味に緊張してきた。ど〜しよ。
『え〜、今日は此処に新しい子供が来ることになった。』
『えー!だれだれ〜?おとこのこ〜!?おんなのこ〜!?』
『・・はあ。今から呼ぶから静かにしてくれ・・・。』
『は〜〜〜い!!』
『まったく・・・(だから、子供は嫌いなんだ。)
入ってきてくれ。』
「は〜い。
今日からここで一緒に勉強することになった篠崎 零で〜す。よろしく〜。」
「じゃあ、君の席は・・・窓側の一番後ろの席だ。」
「は〜い。」
お、すげ〜いい席。ラッキー。
「ねえねえきみどこから来たの〜!」
「なにが好きなの〜?」
「能力って持ってるの〜?」
「・・・・それでは、転校生が気になるとは思うが、授業を始めるぞ。」
「「「「「は〜〜〜〜い!!!」」」」」
◆◇◆◇◆◇◆
俺が木山先生のクラスに編入?してから1ヵ月が経った。
・・・え?急に時間が飛んだなって?仕方ないだろ。だって・・・
「ここはくりあがりでこうなるから・・・」
よくよく考えれば分かったことだが、いくら学園都市だからって小学校低学年のレベルなんてたかが知れてるよな。
『キーンコーンカーンコーン』
「それでは今日はここまで。」
「きり〜つ。きをつけ〜。ありがとうございました〜。」
「「「「「ありがとうございました〜〜!!」」」」」
はあ、やっと終わった。さっさと帰ろっと。
おいそこ!今友達いないとか言った奴ちょっと出てこい。俺の七色のスープレックスで全員犬神家にしてやンよォ!
・・・オホン、失礼。少し取り乱して一方通行なキレ方をしてしまいました。
でも仕方ないじゃん。精神年齢はもうかろうじて青年・・か?位の歳なんだぞ?そんな俺が小学生のノリとテンションについていけると思うか?
だから俺はいつも授業が全て終わると、すぐに帰る。
その代わりと言ってはなんだが休み時間は全力で皆と遊ぶ。テンションを無理やり上げて。だからクラスの皆とは仲が良いんだぞ!ホントだぞ!!
「あ、れいくん。じゃ〜ね!!」
「ばいば〜い!!」
ほら見ろ!?俺は別にサミシイ奴じゃねーんだよ!
・・・・なんか剛に申し訳なくなってくるな。自分で頼んでおいて、前とほとんど変わらない生活してるわけだし。
「篠崎君。ちょっといいかな。」
お?木山先生からの呼び出し。
「なんですか?」
「そんなに身構えなくてもいいさ。ただの連絡だ。」
「はあ。」
「実は明日は、クラス全員の検査で、授業がないんだ。だから明日は来ても誰もいないから来なくていいよ。」
「分かりました。」
「・・・君と話しているとなんだか大人と話しているような感覚になるよ。」
「それは光栄です。」
「何が光栄なんだ?」
「・・・・なんだろ?」
「ふふ。君は面白いな。それじゃ、確かに伝えたからね。」
まあ、実際年上だけどね。にしても明日、どうするかな〜。ま、部屋に帰ってから考えればいいや。
◆◇◆◇◆◇◆
「え?俺も明日検査?」
「別に変じゃないだろ?どうせなら検査はまとめてやってしまった方が効率がいいだろ?」
「そりゃそうだ。」
「ま、あの子たちと君が受ける検査は全然違うから変わらないけどね。」
「おい!!」
どうせ明日は暇だからいいんだけど。
「じゃあ、明日の朝呼びにくるから。」
「は〜い。」
◆◇◆◇◆◇◆
「今日は何すればいいの?」
「いつもと同じさ。飛んでくるボールを能力で避けてもらう。」
「いつもと同じか〜。飽きたな〜。」
ここで言ういつもの実験とは、まあ簡単で五分間実験室の壁から発射されるゴムボールをひたすら避け続ける、というものなのだが、ただそれだけなので、すぐ飽きてしまうのだ。
「そう言うと思って今日は速度、数を倍にしたから。」
「は?」
そう言ってモニターからサムズアップしてくる剛。っていうか数・速度倍ってどこの弾幕ゲー?まず速度に倍って使わないよね!?
「スタート♪」
「ちっくしょおおおおおおお!!!言わなきゃ良かったぁああああ!!」
◆◇◆◇◆◇◆
「・・・・ん、ここは?」
見たところ病室みたいだが・・・。
「お、気付いた?
いや〜零はすごいな。まさか全部避けるなんて。」
「殴っていいよね?うん、殴っていいよね?」
結果俺はボール全てを避けることが出来たらしい。でその後、能力の使いすぎでブっ倒れたらしい。
「やっぱり零の能力は脳への負荷が大きいみたいだね。」
「さっきのでどれ位の時間能力を使ってたか分かる?」
「AIM拡散力場の状態を見ると・・・・4分9秒だね。まさか4分ちょっとでこんなに負荷がかかるなんてね・・・。」
「まあ、自分で分かってたからね。能力使うとシンドイから。」
「でも何でこんなに負荷が大きいんだ?確かに空間移動系は演算負荷が大きいが、しかし(ブツブツ)・・・・」
ああ、自分の世界に入っちゃった。ああなると暫く戻ってこないんだよな〜。どうすっかな〜・・・・ん?
『ビーーー!!!ビーーー!!!ビーーー!!!』
「警報・・か?」
何の警報だろ?
「剛・・・はダメか。じゃあ見に行ってみるか。」
「こっちの方だったよな〜っと。お?ここか?」
とりあえず中に入ってみますか。