第十三話 九鬼家にお宅訪問ですか。
サイド:四季
どうも、前回初めて実践を経験した、篠宮四季です。
今俺たち篠宮一家はとあるお宅にお邪魔しています。
「ふははははは。どうだ四季殿。我が家を見た感想は?」
「すごく…大きいです。て、いうか殿はやめてくれっていったろ英雄。」
「む。しかし我は尊敬できる人間に対してはこんな感じなのだがな。」
「それでもだよ。同年代に敬語を使われるのはどうもなあ…。」
「むう…。それなら四季、でよいのか…?」
「ああ、それでいい。」
「じゃあぼくも小雪って呼んで〜。」
「うむ、ならば我のことも英雄でいいぞ小雪よ。」
まあ、今の台詞でわかるとおり、今回訪問したのは、九鬼英雄君のお宅である。
…いや、まず英雄って誰だよって?
おいおい、ちゃんとこの話読んでろよ。
俺がジョン・ドゥと戦ってる時に観戦していた?印の少年がいただろ?(後で聞いたら同年齢だったけど)
あの子だよ、あの子。
名前は九鬼英雄。確か日本三大名家っていう、やんごとなき身分の家柄とか。……そんなもんあったとは知らんかった…。まあ興味ないからいいけど。
ただ…
「しかし驚いたぞ。四季。まさか、お主の父上が
我の父上と友人関係だったとは…。」
…うん、それだよ。
俺は後ろを振り返る。そこには、
「ふははははは。久しぶりじゃねえか、奉山よー」
「本当に久しぶりねぇ。前に店の仕入れに海外に行った時に会った以来かしら?ヒュームちゃんも久しぶり。」
「うむ。お主とは四季が生まれる前に一度死合った以来だな。どうだ、また一死合?」
「いやあよ。前やった時は山が半壊したじゃない。呂家の皆に怒られたんだから」
「ふむ、それは残念だ。俺としてはお主とヒュームの勝負を見たかったのだが。おお、そういえばあんたも久しぶりだな。どうだ?体の調子は?」
「ええ、おかげさまで。最近はすこぶる調子がいいです」
「うむ、それは重畳。しかし無理はいけないぜ?」
もの凄いオーラを出してる中年二人と談笑している俺の父親と母親の姿が。
そう、あの二人は前話の最後(メタ発言)にでてきた例の二人である。
金髪で髭を生やしていて燕尾服を着ている男性の名前は、ヒューム・ヘルシング。
こちらは別にいい。この人の名前は鉄心さんからも聞いたことがある。確か父さんと鉄心さんのライバル的存在だったはず・・・。その強さは溢れ出る気の量からも推察できる。
そして、もう一人。名前は九鬼帝。英雄の父親であり……九鬼家の当主である。
その九鬼家の当主、どうやら俺の父さんの友人だったらしい。…俺の父親はいったい何なんだろうか。いつもは少しおかしい居酒屋の店主のくせに、呂家なんて組織の幹部だったり、武神なんて呼ばれている鉄心さんと互角の戦闘力だったり、しまいには日本三大名家なんてとこの当主と友人だったり。
「?どうした四季?」
「い、いやなんでもない。」
いけない、いけない。どうやら考えこんでいたらしい。とりあえず、父さんは後でO・H・A・N・A・S・Iだな。
後ろから父さんの、「なんで!?」という声を無視して、俺は九鬼邸の中に入って行った……。
ここは九鬼本家の応接室。
俺達、篠宮一家は全員ここに通されていた。
この家の外見から考えると意外にシンプルな部屋の造りだが、よく見ると質のいい家具が備わっており、品の良さを感じられる。
同じ金持ちでも、良くドラマなどででてくる金に者をいわせた下品さが、全く感じられなくて、本当の金持ちはこうなんだというものを感じさせられるような部屋である。
そこには帝さんとヒュームさん。英雄やあの時の給仕さん、忍足あずみさんもいた。
あずみさんだが、あの後ヒュームさんに「英雄」に仕えたいという旨を伝えたところ、無事英雄の護衛に抜擢されたようだ。
まあ、本人の実力ももちろんあるだろうが、英雄本人の希望でもあるというのが決め手となったのだろう。とても嬉しそうだったなあ。「恋する乙女」のごとく英雄の良さを語られ始めた時はどうしようかと思ったけど。…あんたまだ英雄と出会ったばっかだろうに。
あと、英雄や帝さんに似た雰囲気の女性と少女…幼女か?が二人。おそらく帝さんと英雄の家族なのだろう。…額に☓印あるし。
「ふむ、話の前にとりあえず俺の家族を紹介しておこうか」
そういって帝さんは隣にいる女性に目で催促し、その女性が立ちあがる。
「我は九鬼局。英雄の母じゃ。そしてこっちが。」
「われはくきもんしろじゃ!よろしくたのむぞ!!」
局さんが静かに、そして紋白ちゃんがげんきよく挨拶してくれた。
「今回は我が息子、英雄の命、救っていただき礼をいわせてもらおう。ありがとう。」
そういって、九鬼家の面々が頭を下げた。…俺にむかって。
(…え、なにこれ…)
突然のことに混乱した俺。一緒にいたあずみさんや九鬼家の従者っぽい人たちが息を呑む姿がまたそれを拍車させる。
「あ、頭をあげてください。俺は当然のことをしたまでですから。」
ありきたりな言葉だが俺の本心だ。俺は積極的に人助けをしたりはしないが、目の前で起きそうになっているころを放っておくほど人でなしではないつもりだ。
「…それでも息子が助かったことには変わりない。なにか礼をしてえんだが…。」
「いや礼なんていりませんよ。いい稽古にもなりましたし。」
これも本心。確かに命がけだったが、それまで稽古の仲での試合しかやっていなかった俺にはいい刺激になった。
あの経験は俺の糧になってくれるだろう。
「だがなあ…」
帝さんはそれでも引き下がる様子はない。義理がたいのいいけど本当にいらないんだけどなあ。
…そうだ!
「じゃあ、一つだけいいですか?」
「おう。俺のできることなら」
じゃあ、遠慮なく。
「おいしいご飯が食べたいです。」
―――シーン。
「………は?」
「俺の家は居酒屋だけど料理も作ってるじゃないですか。だから今のうちにいろんな料理を食べておきたいんですよねえ」
九鬼家なら珍しい料理もでてきそうだし。あわよくばレシピを教えてもらおう。
「僕も食べる〜。」
「そうか、じゃあいっしょにたべような」
「うん!!」
俺が帝さんのほうに視線を戻すと、
「……あれ?」
皆俺のほうを信じられないようなものを見る目で見ている。あれ、俺なんかやらかした?
「…ふ、ふ、ふははははははははははははははははははははははははは!!!」
帝さんが突然笑い声を上げた。あ、あれ?良く見ればヒュームさんや局さん。父さんたちまで笑ってる。
え、俺なんで笑われてんの?
「ふふふ、すまんすまん。まさかそんなことを要求されるとは思わなくてなあ?いいだろ!九鬼家の名にかけてとびっきりの夕食を用意しておこう」
「は、はあありがとうございます…」
なにか釈然としないものを感じながら俺は帝さんにお礼をいった…。
話が終わって皆で談笑していると、英雄が思い出したように帝さんに尋ねる。
「そういえば、父上。姉上はどうしたのです?」
「姉上…?」
ここにいるので全員じゃないのか?
そんな俺の考えがわかったのか、帝さんが教えてくれた。
「実は俺たちにはもう一人娘がいてな?社会勉強のために今はイギリスに行かせてるんだ。だが連絡はしたからもうすぐ、ふむ予想より早かったな」
―――――ドドドドドドドド…!!
激しい物音とともに、巨大な気が近づいてきた!
あずみさんが警戒のためにとっさに英雄さんを自分の後ろに隠そうとするが、心配ないと英雄はあずみさんをおさえる。
ドッパ―――――ンッ!!
もの凄い音で扉が開くと、そこに英雄たちと同じ額に☓印のついた美女(美少女)が現れた。
「ふはははは。九鬼揚羽降臨である☆」
突然の事態に固まっている俺にかまわず、その美女、揚羽さんは帝さんに詰め寄る。
「父上!英雄、英雄はどうなったのですか!!」
そんな揚羽さんに帝さんは冷静に対応する。
「落ち着け、揚羽。英雄ならほら、そこにいる」
そうして帝さんは英雄を指差した。
揚羽さんは英雄の姿を視界に収めると、
「英雄――――――!!」
飛びついた。
「なッ!?」
あずみさんは反応できない。油断していたのもあっただろうが、揚羽さんの動きがあずみさんの知覚能力を超えていたのだ。
(はやいッ!!)
見ればわかる。この人は強い。それも百代さんに匹敵するほどに!
俺が一人戦慄していると、いまだに英雄に抱きついたままの揚羽さんに帝さんが呆れたような声をかける。
「いつまで、そうしている揚羽よ。英雄が無事なのがうれしいのはわかるが、客人の前だ、自重しろ」
帝さんの声に揚羽さんは、ハッ!としたような顔になると若干頬を赤らめながらこちらにむき、
「ん、んん!失礼した。我の名前は九鬼揚羽。この度は弟を救っていただき…」
その視線が俺へと釘付けとなった。
「へ?」
え、え、なにこれ?
――――ツカ、ツカ、ツカ、ピタ。
ちょっとしたメダパニ状態の俺をよそに、揚羽さんは俺の目の前で止まる。
心なしか頬が赤い感じがする。
「お主、名前は?」
え?
「な、名前ですか?」
「うむ」
なんだろう、答えたほうがいいのかな。…でもなんか嫌な予感がするんだけど。まあ、名前くらいならいいか…。
「えっと、篠宮四季っていいます。よろしくおねがいします」
…これでいいのかな。結構無難に挨拶したつもりだけど。
おそるおそる揚羽さんの顔を見てみると、
「…………(ボンッ!」
真っ赤な顔になっていた。
…ってええ!?え、一体どういうこと?なんで急に顔真っ赤にしてんの!!?
今日何回目かのメダパニ状態に陥った俺。
ガシッ!
「…へ?」
急に揚羽さんに手を握られると、
「お主、我の婿となれ!!」
結婚を申し込まれた。
って、
「ええええええええええええええええええええええええ!?!?!」
俺の叫び声が、九鬼家の屋敷に響き渡った…。
〜おまけ〜
風間ファミリー秘密基地でのこと。
―――キュッピ――――ン!
「「ハッ!」」
そこで京と百代の二人が何かを感じとった。
「もぐもぐ。どしたの二人とも?」
ワン子が忠勝の作ったお菓子を食べている。四季がいないときは、彼が風間ファミリーの料理係になっている。
「おい一子、口元についてる」
「むー。とって、とって」
「ちッ。しょうがねえな」
そういってワン子の口元をぬぐう忠勝はどことなくうれしそうだ。
「それで、どうしたの姉さん?」
話が進まないとばかりにファミリーの軍師である大和が、自らの姉貴分である百代に尋ねる。
「なにか、また新しく四季がフラグを立てた気配がしたんだ」
「私も!」
どうやら京も同じものを感じたようだ。
それを聞いた筋肉担当のガクトが憤慨する。
「なんだよそれ!また四季ばっかかよ」
「いやいや、それよりまずそんな事がわかるモモ先輩たちにつっこむべきじゃないかな!?」
今日もモロは絶好調のようだ。
「フラグってなんだ?」
我らが永遠の少年キャップはフラグという言葉の意味がわからないらしい。そのまま純粋に育ってほしいものだ。
今日も川神ファミリー平和に楽しく過ごしていた…。