小説『あぁ神様、お願いします』
作者:猫毛布()

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長かった様な6月4日も終わり数週間。
小学生には夏休みというものがあり、ソレに入る前に担当教師が通知簿を付けなくてはならない。

「じゃあ、テスト返すぞ」

その昔は怖かった通知簿を付ける為に非常に簡単な方法がある。
生徒の成績が出るテストだ。
‐この時期になると一気にくるな
‐仕方ないさ、教師も困ってるんだから
‐しかしながら嫌になる
当然の如く、マトモに考えればこのレベルのテストなら満点を取れる。少なからず応用問題がないからだ。

「御影」
「…はい」

受け取ったテストを素早く折り、溜め息を吐かないように席に座る。
‐予定通りの点数だ
‐うむ、実に素晴らしい
‐別にこの点数に意味など無いけどな
‐普通より出来るけど満点でもない
‐点数配分考えて問題を解くのが楽しい
‐間違った答えを考えるほうが楽しい
カット。あんまり先生を困らせないようにしよう。








「御影君」
「………月村か」

昼休みに相変わらず図書室に入り浸ってる俺の前に、珍しくトリオ…いやカルテットじゃない月村が座った。
‐どうした?
‐いや、椅子の材質の復元というか擬態
カットカットカット。

「これ、言ってた本」
「……あぁ、あれか。お菓子の家の主を竈に落とす双子の話か」
「うーん。どちらかと言えば、拾った子供がお姫様だった羊飼いのお話の方が近いかな」
「喜劇か」
「…よくわかるね」
「つい最近に友人から『本中毒者』の称号を与えられたよ」

肩を竦めながら言えばクスクス笑われた。
‐こういう笑いが似合うね
‐お嬢様らしいからか
‐あれか、オゼウサマなのか
‐瀟洒で完璧なメイドもどうぞ
‐ただし忠誠心は鼻から出る

「私はわからないけどそんなに読んでるの?」
「さてね。一日一冊を消費する程度には読み続けてるよ」
「十分なんじゃないかな」
「重文はまだ読んでない」
「いつか見に行きたいね」
「所詮人間が決めたくくりだけどな」
「人が作ったんだもん、人の価値観でいいんじゃないかな?」
「……そうか」
「そうだよ、きっと」

そう言って月村との会話が途切れる。
‐この娘もなかなか頭が回るなぁ
‐こっちは分割思考の一つを会話に向けてるというのに
‐むぅ…椅子の材質を知る為に解析魔法を
カット。

「そういえば、テストどうだった?」
「よく言えば普通、悪く言えば普通」
「普通に言えば?」
「平均点の多少上」

少なくとも月村以上であるわけがなく、トリオ程平均点をあげてる訳でもない。


「えっと、じゃあ」
「ん?」
「教えてあ」「おぉすずか!ここに居たのか」

扉を思いっきり音を立てて開けたスメラギ君。
‐いやぁすずかタン可愛いな
‐椅子になりたい
‐すずかタンの座っている椅子になりたい
‐この変態!
‐ハッハッ、お前に言われたくないわ
開いていた本を閉じ、席から立ち上がる。

「月村、明後日には返す」
「あ、うん」

返却の日取りを決めて図書室から出ていく。
転生主人公の隣を華麗に素通りして教室へ向かう。
‐カット
‐カット
‐カット
カット。思考を割く事も煩わしい。









海外郵便で送られてきた手紙。差出人はプレシア・テスタロッサ。
‐今って裁判してるんじゃなかったっけ?
‐待った!
‐意義あり!
‐現実ではあり得ないらしいな

『裁判で頑張ってるフェイトを眺めてたらいつの間にか初公判が終わってたわ』

もう本当にこの親はこれでいいのだろうか。
‐不安すぎる
‐いや、流石に冗談って書いてあるよ
‐冗談にしては随分とまた

三枚程続く娘自慢を流し読みして、非常に疲れた後の四枚目。

『また研究職に戻れそう。もちろん罪を償う為のモノだが、気にせずにアリシアを治療する事にする』

「…………それでいいのか?」

俺個人としては構わないのだが、少しばかり管理局が心配になってきた。



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〜お菓子の家の―
親に捨てられた双子の話。見ず知らずのお婆さんに助けられ手厚く歓迎を受けた結果怖くなって竈に閉じ込めてギドニーパイを作った

〜拾った子供がお姫様だった羊飼い
悲劇で有名な作家様が書いた喜劇。毒薬を飲んだ二人もこれ程上手く行けばよかったのに

〜重文
重要文化財の略称。主人公が読みたいと言ったのは原本

〜スメラギ君
今回の犠牲者。残念ながら難産過ぎたので彼を出してしまう他なかった。すずかタンのフラグなんてなかったんや

〜テスト
1+1を0の概念から長々と書いていて、残り五分と言われた辺りから漸く回答用紙が白紙である事に気付き、平凡な点数を取るために適当に間違えた結果。馬鹿みたいに頭を間違った方向に使っている主人公が馬鹿な筈はない

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