小説『遊戯王 New Generation』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 「焼き尽せグレイス!『アルティメット・ブレイズバスター』!」
 「失せろ俗物共よ!」
 遊哉:LP3500   SC12
 極炎龍皇−グレイス:ATK3800

 「スターダスト・ライジング、穿て『アサルト・ライジング・バースト』!」
 「ショァァァァァ!」
 遊星:LP3600   SC12
 スターダスト・ライジング・ドラゴン:ATK3500


 ――バゴガァァァァァン!!


 「「「「「グワァァァァァァ!!!」」」」」
 ファントム軍団:LP0


 大量に現われたファントム軍団も遊哉と遊星の前にはまるで無力。
 数の上で圧倒的に有利であるにも拘らず、碌にライフを削る事が出来ていない。
 付け加えると、今潰したので軍団は3つ目……如何に凄まじいかが分かるだろう。


 言うなれば遊哉は『剣』で遊星は『盾』。
 夫々のエースの進化系を扱いつつ、スピードスペルと罠で絶妙な攻守のバランスが出来上がっている。
 この布陣を切り崩すことは、数に任せてであってもプログラムに過ぎないロボットでは不可能に近い。

 「ハッ!デュエリストの魂持たねぇロボットなんざ何匹来ようと相手じゃないぜ!幾らでも来いやコラァ!!」

 ……訂正、絶対に不可能であった。










 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel42
 『進化の時〜予兆〜』










 チーム遊戯王と他の参加者の奮闘でファントム軍団の暴走は鎮圧の兆しを見せていた。
 所詮ロボットではデュエリストの誇りを持つ者全てを数で圧倒する事は出来なかったという所だろう。


 「大体終わったか?」

 「如何だかな?終わった…と見せかけて更なる大群が出てくんのはお約束だが…」

 たった2人でファントム軍団3つ(計30体超)をぶちのめしたW主人公は警戒を解かずに疾走中。
 『勝って兜の緒を締めよ』の格言の如く、2人に油断は感じられない。


 其れも全てはデュエリストの勘が告げるからだ、『此れで終わりではない』と。



 ――キィィィィィン…



 「へっ、やっぱり御出でなすったぜ遊星!」

 「あぁ、しかも今までの比じゃないな。」


 其の勘が告げたとおりに、新たに物凄い数のDホイールが後方から追い上げてきた。
 正確な数は分からないが30体は居ると見ていいだろう。

 加えて、

 「ゲッ、ドイツもコイツもカタストル召喚してやがるのかよ!?」

 「それだけじゃない、色は黒いがサイバー・エンドまで居るぞ。パワーと効果で潰しに来たのか…!」

 新たに現われたファントム軍団は完全にこの2人を潰す為のモンスターを用意してきていた。
 攻撃力4000の『サイバー・エンド・ドラゴン』と闇属性以外のモンスターを抹殺する『A・O・Jカタストル』。
 正にパワーと効果での波状攻撃を狙ったものだ。

 「此れは流石にヤベェ…グレイスの効果でも破壊し切れねぇぞ!?」

 「カタストルの効果だけなら兎も角、サイバー・エンドはキツイな…」

 グレイスの効果を使えばサイバー・エンドを戦闘破壊できるがカタストルを全て効果破壊するには手札が足りない。
 スターダスト・ライジングはカタストルを処理出来るがサイバー・エンドには戦闘破壊される。
 先程までの有象無象とは違う、数の暴力に戦術を加えた殺戮者の軍団だ。

 が、此処はルールに救われる。
 バトルロイヤルライディングに於いて、新たなデュエリストが乱入した場合、最も先頭を走る者がターンを行う事ができる。
 更にバトルロイヤルルールではスピードカウンターが12で固定され増減はしない。

 ファントム軍団は全て後方より出現したためターンは取れない。
 つまりは遊哉か遊星かがこの戦いの最初のターンを行う事ができるのだ。

 「機体形状の関係で俺の方が先行してる様に見えるよな、多分。」

 「あぁ、お前の機体の方が少しだけ先端が長いからな。」

 実際には略並走状態だが、機体の形状的に遊哉の方が僅かに先行しているように見える。
 つまり初手は遊哉からと言う事だ。


 とは言っても先程までとは一変して、状況は圧倒的に不利な状態。
 このドローが明暗を分けるといっても過言では無い。


 「行くぜ、ドロー!」
 ――よっしゃ、このカードなら!


 「手札からスピードスペル『Sp−バンカー・バスター』を発動!
  自分のスピードカウンターが10個以上有る時、俺の場のモンスター1体を選択して発動する!
  選択したモンスターの攻撃力より低い守備力のモンスターを全て破壊する!更に選択したモンスターはこのカードの効果では破壊されねぇ!!
  俺が選択するのは攻撃力3800のグレイス!此れでテメェ等のモンスターは全滅だ!」

 この局面で引き当てた強力カードが炸裂。
 此れならばグレイス以外のフィールドの全てのモンスターを焼き尽す事ができる。

 勿論このままでは遊星のモンスターも巻き込まれるが…

 「更にこの瞬間、墓地の『エフェクトガードナー』の効果発動。
  墓地のこのカードを除外する事で俺のモンスターはこのターンカード効果では破壊されない。」

 其処は遊星、カード効果で見事に自分のモンスターは破壊効果から護り抜く。
 実に見事な連携だ。


 が、そうは問屋が卸さない相手らしい。

 「ハハハハハ、トラップ発動『A・O・Jカウンター』!自分フィールド上ノ『A・O・J』ト名ノ付クモンスターヲリリースシテ発動!
  リリースシタモンスタート同ジ種族ノモンスターハコノターン効果デハ破壊サレズ、リリースシタモンスターノ攻撃力分ノダメージヲ与エル!」

 「んだと!?うおわぁぁぁあ!!」
 遊哉:LP3500→1200


 必殺の一枚も無力化され、更にダメージまで与えてきた。
 リリースされたカタストルの攻撃力は2200……其の攻撃力分となれば決して安くないダメージだ。

 「大丈夫か緋渡!?」

 「応よ!と言いてぇが今のは効いたぜクソッタレ…!しかも最悪じゃねぇか此れ!」

 思わず悪態をつくのも仕方ない。
 今の一撃はこの状況では切り札と言ってもいいモノだった。
 其れが防がれてしまっては状況は変らない、いや寧ろ悪くなっている。

 「こいつ等は完全に俺達を倒すようにデッキが操作されているな…」

 「クソッ…ターンエンド!」

 「ククク此処デ朽チルガイイ!私ノターン!」


 ファントム軍団の1体が次のターン。
 不気味な機械音声が不快な笑い声を再生する。
 既に勝った気で居る。

 「先ズハ其ノスターダストカラダ!サイバー・エンドデスターダスト・ライジングヲ攻撃、『エターナル・エヴォリューション・バースト』!」

 発せられた攻撃。
 此れが通ったら、後続のカタストルの効果を防ぎ切ることは出来ない。

 絶体絶命ともなりうる一撃だが、


 「トラップ発動『TGバトルアーマー』!相手の攻撃を私の場の『TG』と名の付くモンスターに移し変える!」


 全く別のレーンから1台のDホイールが飛び込んできて、デュエルに介入してきた。
 突然の闖入者だが、そのおかげで攻撃がスターダスト・ライジングから逸れる。

 「更にこの瞬間、手札から『TGラウンド・グラップラー』の効果発動。
  このカードを手札から捨てることで、TGの攻撃力は戦闘を行う相手モンスターの攻撃力と同じになる!」
 TGストライク・ブレイカー(バスター・ショットマン装備):ATK2800→4000


 「馬鹿ナ!一瞬デサイバー・エンドト同等ダト!?」

 「それだけではない。トラップ発動『TGX700』!私の場の『TG』1体の攻撃力をエンドフェイズまで700ポイントアップさせる!」
 TGストライク・ブレイカー:ATK4000→4700


 実に鮮やかな戦術、あっという間にサイバーエンドの攻撃力4000を突破し其れを返り討ちにする。


 「オノレェェェ!」
 ファントム1:LP4000→3300


 「そしてこの瞬間、装備されたバスター・ショットマンの効果発動。
  このカードを装備したモンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した時、破壊したモンスターと同じ種族のモンスターを全て破壊する!」


 「何ダト!?」

 驚くべき効果だ。
 ファントム軍団のモンスターは全て機械族、つまりはこの反撃で全ての機械族が破壊されると言う事だ。



 ――バガァァァン!!



 「スゲェ…てかお前あの時の!」

 そしてこの闖入者に遊哉と遊星は見覚えが有った。

 後輪だけで槍のように尖った先端の異様なDホイール。
 其れを駆るサングラスで顔を隠した男。

 そう、以前2人にアクセルシンクロを見せたあのデュエリストだった。


 「久しぶりだな。だが挨拶などをしている暇は無い。私について来い!」

 挨拶もソコソコに男は一気に急加速。
 おいていかれまいと遊哉と遊星も一気に加速する。

 それはモンスター全滅で混乱するファントム軍団を置き去りにするほどの速さ。


 一気に軍団は遥か後方に見えなくなってしまった。


 「すまない、助かった。」

 「気にするな。だが、今ので終わりでは無い。」

 「だろうな。アレで終わるとは思えねぇ。寧ろあいつ等は倒しきってねぇから。」

 高速で爆走しながらの会話だが良くできるものだ。

 其れは兎も角として、確かにファントムの鎮圧が終わった訳では無い。
 今は引き離しただけに過ぎないのだ。


 「其の通りだ。だがこの状況こそ人の潜在能力を覚醒させるにはうってつけと言える。
  今こそ完成させるんだ、君達の『アクセルシンクロ』を!」

 「「アクセルシンクロ…!」」

 「揺るがない意思、そして曇りなき心が新たな進化の道を切り開く!
  『クリアマインド』の境地に達した者のみが操れるシンクロを超えたシンクロ、其れがアクセルシンクロだ!」


 そう言いながらカードを2枚取り出し、遊哉と遊星に1枚ずつ投げてよこす。
 其れは何も書いていない真っ白なカード。

 遊哉にとっては過去2体の龍皇の時に見慣れたものでもある。
 即ち此れはまだ封印状態のカード。

 其の封印を解いて、力を目覚めさせるのは遊哉と遊星の仕事と言う事になる。


 「白いカードか…お約束だな!上等だやってやるぜ!」

 「あぁ、超えてみせる俺達の限界を!」

 「其の意気だ!……如何やら来たようだな。」


 ――イィィィィイン…!


 後方からの新たなDホイールのエンジン音。


 現われたのは先程のファントム軍団と、生身のDホイーラーが2人。
 どうやらロボットだけではなくファントムのメンバーが直々に現われたらしい。


 らしいのだが…


 「ムフフフフフ…会いたかったわ遊星ちゃ〜〜ん!」


 1人は変態だった。


 「引っ込め変態がぁ!」

 で、遊哉が何処から取り出したのか変態に向かって金属バット投擲!
 危険極まりない事をやってくれた。


 「うおん!ちょっと危ないじゃないの、当たったらどうしてくれんのよ!」

 「ルセェ、大人しく当たってドコゾにぶっ飛べド変態!寧ろ地球上から消滅してしまえ有害物質!」

 一気にヒートアップし、遊哉の毒舌が炸裂。
 無理も無い、現われた変態…フレディの格好は全身タイツが更にハイレグ状態になり変態度が120%アップ!
 有害物質と言うのもあながち間違いではないように感じてしまう。

 「誰が有害物質よ!アタシは遊星ちゃんとデュエルしに来たのよ!」

 「じゃかぁしいわアホンダラ!テメェなんぞ有害物質で充分だ!
  いや、比較するにしても有害物質に失礼極まりないわ、このアメーバ以下の下等生物!」

 正に言いたい放題。
 毒舌八丁の遊哉に口で勝てる奴は早々いないだろう。


 「素晴らしい毒舌だな。」
 「まぁ緋渡だからな。」

 そんな中でも遊星と謎のDホイーラーは冷静でクールである。


 「如何やら、緋渡があいつの相手をする事になりそうだな。そうなると俺の相手はアンタか?」

 遊星はもう1人の男を見やる。
 フレディと比べれば小さいが、それでも大柄である事は間違いない男だ。

 「私は誰が相手でも構わん。だが貴様が相手なら願っても無いぞ不動遊星。」

 低い声でそう告げ遊星に併走する。
 この男も遊星と戦う事にしたようだが…

 「ちょっとディック、遊星ちゃんはアタシの…「ルセェ変態脳筋!テメェの相手は俺だつってんだろうが!」キー!!」

 即座に反応したフレディと言う名の変態には遊哉から蹴りが入っていた。


 「いいわ!其処まで言うならデュエルよ!アタシが勝ったらアンタも『ピー』して『パー』して『ピンピロリ〜ン』よ!」

 「全力で拒否する!テメェみたいな汚物は消毒だぁ!」

 こっちでも組み合わせが決まってしまった。


 そうなると残るファントム軍団は…

 「ならば残りの連中は私が引き受けよう!」

 謎のDホイーラーが殲滅を宣言。
 やや速度を落とし、ファントム軍団に近付いて行く。


 此れでこのレーンでは3つのデュエルが行われる事になった。


 遊哉vs『変態』フレディ。

 遊星vs大柄の男・ディック。

 そして謎のDホイーラーvsファントム軍団。


 其れにより遊哉と遊星のDホイールはバトルロイヤルモードが解除され通常のライディングデュエルモードへ移行。
 スピードカウンターとライフは勿論、デッキとフィールドもリセットされ新たなデュエルの為の準備が整う。


 「行けTGストライク・ブレイカー、『クロスドライバー』!」


 其の後方では謎のDホイーラーがファントム軍団の殲滅を開始している。



 「負けんなよ遊星!」
 「お前もな。」


 遊哉と遊星もコーナーを制する為に一気に加速する。
 アクセルシンクロを体得しようとチューンしたDホイールの加速力は一般的な其れを上回る。

 「ちょっ!幾らなんでも早すぎよ!」
 「うむ、素晴らしい改造技術だ…流石は緋渡遊哉と不動遊星だ。」

 楽々コーナーを制し、先攻を奪取。


 「覚悟しろよ変態!」
 「あんたこそ覚悟なさい!」


 「「デュエル!!」」


 遊哉:LP4000   SC0
 フレディ:LP4000   SC0




 「これ以上お前達ファントムに好き勝手に暴れさせはしない。」
 「ふむ、ならば止めて見せるがいい!」


 「「デュエル!」」


 遊星:LP4000   SC0
 ディック:LP4000   SC0



 始まった2つのデュエル。

 だが遊哉と遊星に恐れは無い。(遊哉は相手に生理的不快感を感じまくっているが…)


 有るのは只1つ『アクセルシンクロ完成』の思いとファントム撃滅の意思。



 まだ見えぬ新たな進化が、少しだけ、だが確実に胎動を始めていた。









 *補足



 Sp−バンカーバスター
 スピードスペル
 自分のスピードカウンターが10個以上ある時に、自分フィールド上のモンスター1体を選択して発動する。
 選択したモンスターの攻撃力以下の守備力を持つフィールド上のモンスターを全て破壊する。
 選択したモンスターはこのカードの効果では破壊されない。



 A・O・Jカウンター
 通常罠
 自分フィールド上に「A・O・J」と名の付くモンスターが表側表示で存在する場合に発動できる。
 自分フィールド上の「A・O・J」と名の付くモンスター1体をリリースする事で、
 このターンリリースしたモンスターと同じ種族のモンスターはカード効果では破壊されない。
 其の後リリースしたモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。



 TGバトルアーマー
 通常罠
 相手モンスター1体の攻撃対象を、自分フィールド上の「TG」と名の付くモンスターに変更する。



 TGX700
 通常罠
 自分フィールド上の「TG」と名の付くモンスターはエンドフェイズまで攻撃力が700ポイントアップする。



















  To Be Continued… 

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