小説『遊戯王 New Generation』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

 WRG1決勝戦のファイナルデュエル。
 ラストホイーラー同士のデュエルは、遊哉が遊星の残したカードを巧みに使い恐るべき力を持った『機皇帝レギアス』を粉砕した。

 だが、その直後に雪花が自らのDホイールの装甲を纏う形で異形の変化が。


 フィールドでは遊哉が、ライフでは雪花が有利な状況だがまだファイナルデュエルは始まったばかりだ。


 『俺は一体どれだけ驚けば良いんだ〜〜!!!
  チームEXAL簪・J・雪花、Dホイールとの合体の次はDホイールの装着かぁぁ!?
  圧倒的な機皇帝は倒されたとは言え、まだライフは5桁を維持!
  対する緋渡遊哉も、超強力なシンクロモンスターを従え無敵ともいえる布陣を完成させている〜!
  決勝戦に相応しいこの展開!はたして勝利の軍配はどちらに上がるのか〜〜〜!?』


 毎度絶好調のMCも驚きながらも実況継続。
 デュエルの盛り上がりは彼なくして此処までにはならないだろう。


 「絶望に沈めてやるわ、緋渡遊哉…!」

 「ハッ!上等だ、やってみろよ…出来るモンならなぁ!」

 戦う2人も気迫気合は充分。
 デュエリストのオーラとサイコパワーがぶつかってスパークを起こしている。
 ファイナルデュエルは、寧ろ此処からが本番だろう。











 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel67
 『絶望の殺戮マシーン』











 「私のターン。」


 遊哉:LP4000   SC3→4
 守護女神−エアトス:ATK3800
 クリムゾン・ノヴァ・ドラゴン:ATK4400
 


 雪花:LP21000   SC1→2



 3体のシンクロ(カグヅチは現在除外中だが)を従えた遊哉に対し、雪花はモンスターは0。
 フィールドアドバンテージは間違いなく遊哉にある状況だ。

 だが、雪花にはマダマダ莫大なライフが残っている。
 機皇帝レギアスを倒したからとて油断できる状態ではない。


 「手札を1枚捨て『無限牢』の効果を発動。墓地の『機皇帝レギアス∞』を永続魔法扱いで私のフィールド上に置く。」

 新たな戦術だろう、レギアスを永続魔法扱いでフィールドに。
 これで雪花の魔法・罠ゾーンには3体の機皇帝全てが出揃った事になる。


 「更に『無限牢』の効果発動。
  このカードを墓地に送る事で、このカードの効果で永続魔法扱いでフィールドに出したモンスターを全て手札に加えるわ。
  無限牢を墓地に送り『機皇帝ウリエル∞』『機皇帝ゼリエル∞』『機皇帝レギアス∞』を手札に加える。」

 「3体の機皇帝を手札にだと?何を狙ってるか知らねぇが来いよ!どんな戦術だろうとブチ砕いてやるぜ!」

 雪花の妙な戦術にも一切怯む様子は無し。
 加えて遊哉は只吠えるのみならず、其れを実行してしまうから恐ろしい。


 「吠えるわね?…けど此れを見てもそう言って居られるかしらね?」

 そんな遊哉に雪花は笑いを浮かべ、その気迫が何時まで続くかと言う。
 無論、遊哉ならば『何処までもだ!!』と言うだろうが、雪花には其れを崩す『何か』が有るのだろう。

 「御託並べてねぇでさっさと来いよ。」

 「そうさせてもらうわ。此れこそがお前に絶望を与える存在よ!
  手札の『機皇帝ウリエル∞』『機皇帝ゼリエル∞』『機皇帝レギアス∞』を墓地に送り…現れよ絶望の魔神『機皇神カテドラル∞3(キュービック)』!」
 『ゴォォォォォン…!』
 機皇神カテドラル∞3:ATK4000


 3体の機皇帝を手札から墓地に送り、現れたるはレギアスをも上回る巨大ロボット。
 黒を基調とした躯体に、機皇帝の特徴であった不気味な発光体を3つも宿した胸部。

 完全な人型とは何処か違う異質な外観。
 その力は名に冠した『∞』を思わせるほどに強い。


 「此れはまた、随分なデカ物出してきやがったじゃねぇか!上等だぜ!!」

 「此れこそが最強の『機皇』!その恐るべき力の一端を先ずはお披露目するわ。」

 現れた巨大モンスターでも遊哉は小揺るぎもしない。
 今更どんなモンスターが出てきても一々その存在のみに驚く事でもないからだ。

 とは言え、攻撃力4000を備えたモンスターは正直に強い事は間違いない。
 加えて雪花の言う『恐るべき力』と言うのにも警戒が必要だろう。

 「カテドラルの効果発動。このカードの特殊召喚に成功したとき、自分の墓地の『機皇帝』1体をこのカードの装備する。
  そしてカテドラルは装備した『機皇帝』の効果を得るわ。この効果で装備するのは『機皇帝レギアス∞』!
  此れによりカテドラルはレギアスの効果を得たわ!そう、私の手札とフィールドのカードの枚数だけパワーアップする効果を!」
 機皇神カテドラル∞3:ATK4000→9000


 今しがた倒したばかりの機皇帝を装備しその効果を自身に宿す。
 元々の攻撃力が4000もあり、更に攻撃力が上がるなど正直言って恐ろしいものがある。

 「次いでカテドラルの効果発動!1ターンに1度相手フィールド上のシンクロモンスターを吸収する!
  更に『機皇帝』を装備しているカテドラルのこの効果に対して、相手はモンスター効果を発動できないわ!
  やれ、カテドラル!クリムゾン・ノヴァ・ドラゴンを吸収しろ!」

 続いて『機皇帝』お決まりのシンクロ吸収効果。
 光の鎖がクリムゾン・ノヴァに向かう。

 「やっぱしその効果も有るよな当然。だが無駄だぜ!!」


 ――パシィィィン!


 クリムゾン・ノヴァを絡め取る前にバリアのようなものが発生し光の鎖を弾いた。

 「なに?」

 「効果発動を封じるのはあくまで『発動』させる必要がある誘発或いは起動効果で、常時発動してる『永続効果』にゃ意味がねぇ!
  守護女神−エアトスが表側で存在する時、俺の場のシンクロモンスターは1ターンに1度だけモンスター効果を受け付けない!
  コイツは起動効果でも誘発効果でもない、エアトスが存在する限り発動し続ける永続効果だ!!」

 『効果発動封じ』の穴をついた永続効果でカテドラルの効果を回避。
 だが、攻撃力は遥かに上なだけでなくバトルで発生する戦闘ダメージはどちらを狙われても4000超…一撃死レベルだ。

 「永続効果…だが、カテドラルの攻撃が通ればどちらを攻撃したとしても4000以上のダメージが発生するわよ?
  この攻撃が通ればその時点で私の勝ち…バトル、機皇神カテドラル∞3でクリムゾン・ノヴァ・ドラゴンを攻撃!」

 「そうは行くかよ!クリムゾン・ノヴァの効果発動、相手ターンに除外しモンスターの攻撃を1度だけ無効にするぜ!」

 「甘いわ、機皇帝かシンクロモンスターを装備したカテドラルが攻撃するときダメージステップ終了まで相手はモンスター効果を発動できない!」

 「んだとぉ!?」

 機皇神の更なる効果。
 機皇帝かシンクロを装備していればバトル中のモンスター効果封殺。
 この効果の前では除外エスケープは発動する事ができない。

 「終わりよ…撃ち抜けカテドラル!『ビッグバン・イレイザー』!」

 機皇神の右腕に装着されたビームキャノンから極大のエネルギー砲が発射されクリムゾン・ノヴァ・ドラゴンを襲う。


 ――ガァァァン!!


 其れは直撃し噴煙が巻き上がる。

 「あはははは、終わりよ緋渡遊哉!私達の勝ちよ!」

 粉塵のせいで分らないがこのバトルが成立していたら遊哉のライフは0。
 雪花の言うようにチームEXALの勝利が確定だ。


 「そいつは如何だろうなぁ!?」
 遊哉:LP4000
 クリムゾン・ノヴァ・ドラゴン:ATK4400


 だが、粉塵を吹き飛ばす勢いで現れた遊哉のライフは無傷。
 それどころかクリムゾン・ノヴァも健在なままだ。

 「なに!?どうして…」

 「アクセルシンクロの効果を封じたから勝ったと思ったか?甘ぇんだよ!トラップカード『覇龍の碧玉』!
  発動ターン、俺の場のドラゴン族のシンクロモンスターは戦闘では破壊されず俺への戦闘ダメージも0になる!」

 伏せていた1枚で受けきったようだ。
 ある意味で此れは駆け引きの結果だ。
 もしも雪花がエアトスを狙っていたならば遊哉は負けていた。

 だが雪花は深読みしすぎた結果遊哉を倒す事ができなかった。
 『この攻撃をかわすかもしれない』と言う読みが、クリムゾン・ノヴァへの攻撃を決断させていた。

 しかし遊哉はクリムゾン・ノヴァを狙ってくる事をも予測していたのだ。
 此処は完全に遊哉の読み勝ちだ。

 「く…カードを1枚伏せてターンエンド。」

 「俺のターン!」


 遊哉:SC4→5
 雪花:SC2→3


 「このターンのスタンバイフェイズ、カグヅチは俺のフィールドに帰還する。」
 『うむ、何やら凄まじいのが出てきたようだな…』
 真炎龍皇−カグヅチ:ATK3700


 己のエースモンスターが帰還し、遊哉のフィールドは更に強力に。
 だがそれでも雪花の僕である機皇神には及ばない部分があるのは事実だ。

 「真炎龍皇…だが、攻撃力ではカテドラルのほうが遥かに上!その1枚の手札でどうやって倒す?」

 「ほざけタコ!たった1枚の手札だろうと、デュエリストにはその1枚が無限の可能性を生み出す鍵になるんだぜ!
  スピードスペル『Sp−デュアルマジック』を発動!
  俺のスピードカウンターが5個以上あるとき、相手の墓地の魔法カード1枚を選択しその効果を発動する!
  で、コイツで発動するのは『効果』のみ!発動コストや条件はまるっきり無視できる!
  俺がこのカードの効果で発動するテメェの墓地の魔法は『Sp−天よりの宝札』!
  この効果で互いに手札が6枚になるようにデッキからカードをドローするぜ!」

 この局面でこの引き。
 デュエリストにはタクティクスの他にも引きに直結する『ドロー力』も求められる。

 手札0でこのカードを引き当てた辺り遊哉のドロー力も相当なものだ。

 「そんなカードを…だが、私の手札が増えた事でカテドラルの攻撃力はさらに上昇するわ!」
 機皇神カテドラル∞3:ATK9000→13000


 だが、其れは逆に機皇神を強化することにもなる。
 雪花の手札は増え、機皇神の攻撃力はオーバー1万の状態だ。

 「だから如何したぁ!俺のドロー力を舐めんなよ!?スピードスペル『Sp−サイクロン』を発動!
  俺のスピードカウンターが3つ以上ある時に発動!フィールド上の魔法・罠カード1枚を破壊する!
  コイツで機皇神が装備してる機皇帝レギアスを破壊するぜ!」

 「なんだとぉ!?」

 引き当てた6枚の手札の1枚。
 これで機皇神の攻撃力は大幅にダウンだ。


 機皇神カテドラル∞3:ATK13000→4000


 「でもってカグヅチの効果発動!手札の『ヴォルケーノ・ドラゴン』を墓地に送りその攻撃力を吸収する!」
 真炎龍皇−カグヅチ:ATK3700→5600


 反対に遊哉のモンスターはパワーアップだ。
 此れならば機皇神をも倒せるだろう。


 「行くぜ、バトル!真炎龍皇−カグヅチで機皇神カテドラルに攻撃!『バーン・オブ・ディストラクション』!」
 『燃え尽きろ、機皇神よ!』


 紅蓮の炎がカテドラルの身を焼き灼熱させる。


 「あ”あぁぁぁぁ!!」
 雪花:LP21000→19600


 その炎が雪花を襲い、ライフを削り取るが…

 「機皇神が健在だと?」

 機皇神は破壊されずに無傷のままだ。

 「トラップカード『マキナ・シルド』。このカードの効果でエンドフェイズまで私の場の機械族モンスター1体は破壊されないわ。」

 此処で防御カード。
 だが、戦闘ダメージを防ぐ効果までは無いようだ。


 「なる…だが、ダメージは通る!クリムゾン・ノヴァ・ドラゴンの追撃!『クラッシュ・オブ・バーニングフォース』!」
 『バオォォォォォォ!』


 破壊できなくともダメージが通るなら攻撃続行だ。
 5桁もある雪花のライフを削りきるのは遊哉であっても困難極まりないのだ。

 「くぅ…!」
 雪花:LP19600→15200


 「ちぃ…トンでもねぇライフの数だな。ま、仕方ねぇかエアトスを守備表示に変更。
  カードを2枚伏せてターンエンドだ。」
 真炎龍皇−カグヅチ:ATK5600→3700
 守護女神−エアトス:ATK3800→DEF2500


 「私のターン!」


 遊哉:SC5→6
 雪花:SC3→4


 「先刻の礼はさせてもらうわよ?手札から『Sp−ショックパルス』発動!
  私のスピードカウンターが4つ以上ある時に発動、相手フィールド上に表側表示で存在するカードの効果を無効にする!」

 「そう来たか…!」
 守護女神−エアトス:ATK3800→3000(DEF2500)
 クリムゾン・ノヴァ・ドラゴン:ATK4400→3500


 今度は雪花の反撃。
 スピードスペルを使い反撃に出る。
 効果を無効にしてしまえば機皇神の効果を阻むものは無いのだ。

 「カテドラルの効果!カグヅチを吸収しろ!」

 その力で今度はカグヅチを吸収せんとする。
 しかし遊哉とて機皇帝の効果は百も承知だ。

 「そうはさせるか!トラップ発動『皇の独断』!俺の場の『龍皇』は、このターン相手のカード効果を受けねぇ!」

 機皇神の効果をまたも見事にかわす。
 こうなるとどちらの戦術の方が上かが勝敗に直結するのは想像に難くない。

 「又しても…だが、効果は受けずとも無敵ではない。バトルだ、カテドラルでカグヅチに攻撃!『ビッグバン・イレイザー』!」

 効果が効かないのならばバトルで。
 エスケープ効果は、効果が無効にされているので使えない。


 ――ドガァァァン!!


 遊哉:LP4000→3700
 「ちぃ…カグヅチ…!」


 攻撃反応型の罠が無かったのだろう。
 機皇神の一撃でカグヅチは粉砕されてしまったのだ。

 「この瞬間カテドラルの効果発動!バトルで相手のシンクロモンスターを破壊したとき、破壊したシンクロモンスターを装備できる!
  これで、今しがた倒したカグヅチは機皇神の力になるわ!」

 「なんだと!?」

 トンでもない効果だ。
 戦闘破壊したシンクロをも吸収するこの効果はシンクロを使うものにとっては天敵だろう。

 機皇神から伸びた光の鎖が、遊哉の墓地からカグヅチを引きずり出し吸収。



 機皇神カテドラル∞3:ATK4000→7700



 そのままその攻撃力分のパワーアップだ。

 「野郎…倒したシンクロまで吸収するってのかよ…!」

 「流石に驚いた?さぁ、如何する緋渡遊哉?究極のシンクロキラーに如何立ち向かうのかしら?カードを1枚伏せてターンエンド。」

 遊哉の進化したエースモンスターを吸収し、攻撃力を増した機皇神。

 「この瞬間に俺のモンスターの効果は復活する!」
 守護女神−エアトス:ATK3000→3800(DEF2500)
 クリムゾン・ノヴァ・ドラゴン:ATK3500→4400


 効果こそエンドフェイズに復活するも、機皇神の攻撃力は遥かに上。
 先程レギアスを倒した時のようには早々行かないだろう。

 「俺のターン!」


 遊哉:SC6→7
 雪花:SC4→5


 「精々足掻きなさい緋渡遊哉。足掻けば足掻くほどその先の絶望は大きくなるわ。」

 「言ってろよド阿呆。絶望があるって事は、同時に希望も有るってこった!
  俺のライフはマダマダ有るからな、ライフも手札もある以上俺は諦めねぇ!
  それ以前に何がどうなろうと、俺の辞書に『諦める』なんて言葉はハナッから載ってねぇ!」

 機皇神の恐るべき効果でボードアドバンテージを奪われたが、それでも全然怯まない。
 消える事の無い遊哉の闘気は、この状況において逆に勢いを増しているようだ。


 「どんな逆境だろうと、諦めない奴にこそ最終的に勝利は訪れるんだぜ!?」

 「そんなものは究極の幻想よ。逆境で希望を望んでも其れは幻。有るのは絶望だけだ。」

 「だったらその目玉ひん剥いてよく見てやがれ!俺は絶対テメェに勝つからな!!」
















   To Be Continued… 






 *登場カード補足



 Sp−デュアルマジック(制限カード)
 スピードスペル
 自分のスピードカウンターが5つ以上ある時に発動できる。
 相手の墓地の魔法カード1枚を選択しその効果を発動する。



 Sp−サイクロン
 スピードスペル
 自分のスピードカウンターが3つ以上ある場合に発動できる。
 フィールド上の魔法・罠カード1枚を破壊する。
 また、自分のスピードカウンターが5個以上あるとき、このカードは「速攻魔法」として発動できる。



 Sp−ショックパルス
 スピードスペル
 自分のスピードカウンターが4つ以上ある場合に発動できる。
 エンドフェイズまで相手フィールド上に表側表示で存在するカードの効果を無効にする。



 覇龍の碧玉
 通常罠
 エンドフェイズまで自分フィールド上のドラゴン族のシンクロモンスターは戦闘では破壊されない。
 また、このターン、自分のドラゴン族のシンクロモンスターが戦闘を行う事で発生する自分への戦闘ダメージは0になる。



 皇の独断
 通常罠
 自分のフィールド上に「龍皇」と名の付くモンスターが表側表示で存在する場合にのみ発動できる。
 エンドフェイズまで自分フィールド上に表側表示で存在する「龍皇」と名の付くモンスターは相手のカード効果を受けない。



 マキナ・シルド
 通常罠
 自分フィールド上に表側表示で存在する機械族モンスター1体を選択する。
 選択したモンスターはこのターンのエンドフェイズまで破壊されない。


-67-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える