小説『遊戯王 New Generation』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 アキと鬼柳がアギトとの激闘を行っていた頃、霧恵とシェリーもまた神殿内部を疾走していた。
 進むは暗い廊下…Dホイールの明かりだけが頼りなのは此処も同じらしい。

 「皆は無事かしら?」

 「其れは大丈夫だと思うよ?アキと鬼柳は強いし、残りの3人は…ねぇ?」

 「確かに…其れもそうね。」

 仲間の安否は気になるが、バラバラの状況では気にしても仕方ない。
 信じて進むだけだ。


 「…通路が終わるみたいよ?」

 「そのようね。…さて、何が出るかしら。」

 更に進むと、前方から光が。
 少なくとも暗闇は終わるようだ。











 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel77
 『立ち塞がる闇の住人』











 「…なにこの部屋?」

 「不気味で悪趣味以外の何者でもないわね…」

 通路が終わって辿り着いた部屋は正に『不気味』そのものであった。
 壁に張り付く血管と筋肉――まるで生物の体内に侵入してしまったかのような錯覚を覚える。

 「如何にソリッドヴィジョンて言っても、此れはないかなぁ…この部屋の主は相当に趣味悪いのかしら?…ねぇ変態さん?」

 「気付いて居たのくわぁ…」

 趣味悪いと切り捨て、霧恵が睨みつけた先からはフレディが現れる。
 ソリッドヴィジョンに紛れて様子を伺っていたようだ。

 「ぃようこそ、神殿体内『胃』えぇ!ここどぅえのお前達の相手は、この私どぅあぁ。」

 「「………」」

 「どぅおぉしとぅあ?この私ぐぁ、相手と聞いて怖気づいたくわぁ?」

 黙ってしまった霧恵とシェリーに言うが、反応が無い。
 完全に固まっているようだ。


 「「へ、変態じゃなくなってる?」」

 漸く紡ぎ出した言葉が此れ。
 まぁ、あの強烈なまでの『変態キャラ』を見せられたら、このキャラ変貌は驚くだろう。

 「アレは演技どぅあぁ!まさか本当に男色の変態だと思っていたのくぁ!?」

 「普通に思ってたんだけど…」
 「演技だとしたらオスカーものだったと言って置くわ…」

 本気で変態と思われていた。
 まぁ、それだけ演技力が凄かったと言うことだろう。

 「小娘がぁ……むわぁ良い、此処から先に進みたいのならぶわぁ、私を倒すしかないずをぉ…どうするぃ?」

 ガチで変態と思われていたことに若干の怒りを覚えつつもフレディは問う。


 尤も、霧恵とシェリーの2人もフレディが登場した時点で先に進むには倒すしかないと看破している。
 だからその問いの答えなど決まっている。

 「聞くまでも無いでしょ?」

 「貴方を倒して先に進めると言うのなら押し通るまでよ。」

 Dホイールからディスクを外し、左腕に装着し起動する。
 瞬間、溢れ出るはデュエリストのオーラ。
 フレディに向けられるは、クールながらも好戦的な鋭さを宿した笑み。

 神殿に至るまでの掃滅戦の影響か、はたまた別の場所でデュエルを行っている仲間の闘気を感じたかは定かでではない。
 だが、普段は冷静な2人が『昂ぶっている』事だけは確かだ。


 「ほざくか、なぁま意気な小むすむぇ共がぁ。どぅえわ望み通り叩き潰してやろうぅ!」

 「私達を叩き潰すらしいわよ?」
 「寝言は寝て言え、戯言はラリってから言え――遊哉的に言うならこんなとこね。」

 フレディの闘気も膨れ上がるが、何と言うか余裕。
 まぁ、この部屋は『通過点』に過ぎない故、其れも当然かもしれない。


 「こむすむぇ…ぶぅぅち殺してやるわぁ!」

 その態度にフレディもカチンと来たらしい。
 2m近い大男がガチで怒るというのも中々迫力がある。

 「やってみなさい?」

 「出来るものなら……ね。」

 反対に霧恵とシェリーは冷静にデッキをオートシャッフルし準備万端。


 そして、


 「「デュエル!!」」
 「ドゥュウエルゥゥ!!」


 霧恵&シェリー:LP4000
 フレディ:LP4000



 デュエル開始。
 変則デュエルなので先攻はフレディからだ。

 「私のトゥアーーン!手札からフィールド魔法『魔帝空間−肝臓』を発どぅおぉ!」

 フィールド魔法が発動し、周囲の景色が変わる。
 生物の体内を思わせる不気味な景色はそのままだが、色彩や凹凸が異なっている。

 「本当に悪趣味だわ…」

 「くくく…貴様等の様な小娘には、しょ〜うしょう刺激が強すぎるかも知れんぬぁ?
  『魔帝空間−肝臓』のくぅおか発動ぉ!1ターンに1度、手札からレベル4以下の『ダークストーカー』と名の付くモンスターを特殊召喚どぅえきる!
  私は、この効果で手札からレベル4の『ダークストーカー・アゴノフェニス』を召喚!」
 ダークストーカー・アゴノフェニス:ATK1900


 先ずは低級モンスター。
 人型の鉄檻の中に骸骨が入った何とも気味の悪いモンスターだ。

 「すぉして、『ダークストーカー・アグノキリル』を通常召喚!」
 ダークストーカー・アグノキリル:ATK1850


 続いて通常召喚で似たようなモンスターを出してきた。
 違いは此方は手に『鉈』を持っているということくらい。

 「更ぬぃ、『ダークストーカー・アグナヘイル』は私のフィ〜〜ルドぬぃ『ダークストーカー』と名の付くモンスターが2体以上存在する時に特殊召喚どぅえきる!」
 ダークストーカー・アグナヘイル:ATK1600


 今度も同じような見た目のモンスターで、此れは剣を持っている。
 何れにせよ、1ターン目から3体ものモンスターを揃えてきた。

 「1ターンで3体も――でもチューナーは無しで全部レベル4てことは…」

 「えぇ、狙いはランク4のエクシーズね。」

 出されたモンスターは平凡なステータスで、内2体は通常モンスター。
 そして全てが同じレベルと言う事は大体の手は読める。

 「その通りだぁ!行くぞ、3体のレベル4ダークストーカーをオバールウェェェェイ!オーバレイネットワークをくうぉちくぅ!
  闇に潜みし魔の軍勢よ、地上を蹂躙し世に破滅を誘えぃ!エクスウィ〜〜ズ召喚!『ダークストーカー・トリスマギア』!」
 『ギャギャギャ!』
 『カカカカカ!』
 『アバババババババ!』
 ダークストーカー・トリスマギア:ATK2600


 現れたのは赤、蒼、黄色の3つの首。
 耳障りな笑い声が酷く不快感を誘うモンスターだ。

 「此れはまた…」

 「何とも変なのが出てきたわね?…けどオーバーレイユニット3体のモンスター、油断は出来ないわ。」

 「だね。」

 現れたモンスターに若干引きつつも気を引き締める。
 3体ものオーバーレイユニットを持つランク4のエクシーズならば油断できる相手ではない。

 「トリスマギアのくうぉかぁ!このカードが3体の『ダークストーカー』を素材にエクシーズした場合、デッキからカードを2枚ドロー出来る!
  クワ〜〜ドを1枚セットしてターンエンドどぅあ。」

 手札を大量消費しながらも、其れはエクシーズの効果で補う。
 先攻で可也のアドバンテージを有しただろう。

 「霧恵、先に行かせて貰って良いかしら?」

 「OK、任せるよ。」

 「期待には応えるわ。私のターン!」

 霧恵&シェリー組はシェリーから。
 シェリーはタッグや変則デュエルでパートナーが居る場合はサポート役に徹する事が多い。
 だが、今回は霧恵と共に『攻め』のデュエルを行う心算のようだ。

 尤も、シェリーは本来『攻撃型』であるのだが。

 「手札から魔法カード『聖騎士の演習』を発動。手札のモンスター1体を捨て、デッキから『聖騎士』と名の付くモンスター2体を特殊召喚するわ。
  ただし、このカードの効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効となり、攻撃力と守備力は0になるけれどね。
  私は手札の『聖騎士の新兵』を捨て、デッキから『歴戦の聖騎士』と『聖騎士の侍女』を特殊召喚!」
 歴戦の聖騎士:ATK2500→0
 聖騎士の侍女:ATK1200→0


 「『聖騎士リヴァイス』は自分フィールド上に聖騎士リヴァイス以外の『聖騎士』と名の付くモンスターが存在する時に特殊召喚出来るわ。」
 聖騎士リヴァイス:ATK2100


 フレディに負けず劣らずの展開力。
 更にこの布陣にはチューナーが存在する――となれば当然…

 「レベル5の聖騎士リヴァイスに、レベル3の聖騎士の侍女をチューニング。
  光速を越えし魂よ、闘いの時は来たれり、祝福を我が手に!シンクロ召喚、『ホーリー・ヴァルキュリア』!」
 『ハァァァァ!』
 ホーリー・ヴァルキュリア:ATK2700


 シンクロ召喚、それも行き成りのレベル8モンスターだ。
 だが、マダマダこんなものでは止まらない。

 「墓地の『聖騎士の新兵』は私の場に戦士族のシンクロモンスターが存在する時に墓地から特殊召喚出来る。」
 聖騎士の新兵:DEF100


 新たなチューナを呼び出し更なる展開に繋げる。

 「レベル7の歴戦の聖騎士に、レベル1の聖騎士の新兵をチューニング。
  恐れを知らぬ魂よ、覚醒の時は来たれり。我が手に勝利を!シンクロ召喚、翔けよ『スカイソード・ドラゴン』!」
 『シャァァァァァ!』
 スカイソード・ドラゴン:ATK2800


 一気に2体のレベル8シンクロモンスター。
 エンジン全開である。

 「流石ねシェリー?」

 「此れくらいはね…けど此れで終わりじゃないわ。」

 「まだ魅せてくれるって?」

 「勿論よ。」

 速攻展開を賞賛する霧恵に、更なる一手が有ると告げ其れを実行する。

 「スカイソード・ドラゴンとホーリー・ヴァルキュリア、2体のレベル8光属性シンクロモンスターをオーバーレイ!
  光速を駆ける魂よ、進化の時は来たれり。栄光を我が手に!エクシーズ召喚、光来せよ『剣の聖騎士−セイバー』!」
 『我が剣で、御身を護ると誓おう…』
 剣の聖騎士−セイバー:ATK3700


 その一手は何とエクシーズ。
 いや、有る意味シェリーならば納得だ。

 チーム遊戯王でもシェリーは戦術とデッキ構築が柔軟だ。
 シンクロをメインとしながらも、デッキとの相性が良ければ融合だろうと何だろうとデッキに組み込む。
 デュエルタクティクスもさることながら、この柔軟性もシェリーの強さだろう。

 「エクシーズ…デッキに入れてたんだ。」

 「セイバーは私のデッキとの相性も良いのよ。戦術の幅も広がるわ。」

 「かもね。」

 だから霧恵も驚かない。
 尤も、遊哉や霧恵、遊星の場合はエクストラの空きが無いと言う理由でエクシーズを見送っている部分は有るのだが…


 ともあれ呼び出されたのは最高クラスのランク8。
 攻撃力も高く、態々2体のレベル8シンクロモンスターを使っただけの力はあるのだろう。

 「セイバーの効果発動。オーバーレイユニットを1つ取り除き、エンドフェイズまで相手フィールド上のモンスター1体の攻撃力を0にする。
  この効果で、トリスマギアの攻撃力を0にするわ。『セントジャッジメント』!」

 「ぐむぅ…こぉしゃくぬぁ!」
 ダークストーカー・トリスマギア:ATK2600→0


 その効果は絶大で、フレディのモンスターは一気に攻撃力0の弱小モンスターに。

 「更にこの効果で攻撃力を0にしたモンスターの種類によって異なる効果が発動するわ。
  エクシーズモンスターの攻撃力を0にした場合、このカードの攻撃力はエンドフェイズまで1000ポイントアップする!」
 『はぁぁぁぁぁ…!』
 剣の聖騎士−セイバー:ATK3700→4700


 更に自身の攻撃力の増大で、その攻撃力は4000を超える。
 此れで攻撃力0になったトリスマギアを攻撃し、其れが通ればフレディのライフは尽き、1ターンキルが完成する。
 此れを狙って先陣を切ったのだ。

 「此れを狙ってたって訳?」

 「貴女の出番を無くすのは悪いと思うけれど、速攻で決めるのも良いでしょう?」

 「まぁ、先に進むのが先決だから固い事は言わないわ。」

 霧恵も文句は言わない。
 目的はあくまで神殿の攻略と消滅。

 ならば先に進むにはどんな形であれ立ち塞がる相手を倒せば其れで良し。
 変則デュエルにおいて自分の出番が無くとも、勝つのならばなんら問題は無いのだ。

 「折角凝った趣向まで用意してもらって悪いけど、貴方には此処で退場願うわ。
  バトル、剣の聖騎士−セイバーでダークストーカー・トリスマギアに攻撃!『エクスカリバー』!」
 『我が奥義…受けてみろ!』


 セイバーの手にした剣が振り下ろされ、其処から発生した波動砲の如き閃光がトリスマギアを飲み込み粉砕する。
 その閃光はそれだけに留まらず、フレディにも直撃。


 攻撃が通ったのは間違いない。
 戦闘が成立したのならば、差分の戦闘ダメージは4700……一撃だ。

 「派手にやるわねシェリー?」

 「勝利の花火は派手に上げるものよ?」

 「…言えてる。」

 今の一撃で舞い上がる粉塵を見ながら談笑。
 だが…


 「やってくれたぬぁ…今のは危なかったずうぉ…」

 「「!?」」

 粉塵の中からフレディが。

 「正直ぃ、1ターンキルを狙ってくるとは思わなかっとぅあぁ…」
 フレディ:LP4000


 しかもライフは何故か無傷。
 更に…


 「え?」

 「な、何故?」



 ダークストーカー・アゴノフェニス:ATK1900
 ダークストーカー・アグノキリル:ATK1850
 ダークストーカー・アグナヘイル:ATK1600



 トリスマギアのオーバーレイユニットとなった3体のダークストーカーの姿が。

 「どぅわぁっはっはっはっは!!そう簡単ぬぃ、私を倒せると思ったくわぁ!甘いわこぉ娘がぁ!
  フィールド魔法『魔帝空間−肝臓』の効果ぁ!1ターンに1度どぅあけ私に発生する戦闘ダムェ〜ジを0にする!
  更にオーバーレイユニットがあるトリスマギアは破壊されたとき、自身のオーバーレイユニットとなっていたモンスターを全て特殊召喚できるぃ!」

 生き残った理由はフィールド魔法の効果。
 更に3体のダークストーカーはトリスマギアの効果だった。

 「思った以上にやるわね。…カードを2枚伏せてターンエンド。」
 剣の聖騎士−セイバー:ATK4700→3700


 しかし、シェリーも必殺の一撃が潰されたとて士気は落ちない。
 次のフレディのターンに意識を切り替え、リバースセットでターンを終える。
 無事だった事と、3体のダークストーカーの出現には驚いたが、驚いただけだ。

 この程度ではマダマダ闘気が萎える理由にはならない。
 其れは霧恵も同じだ。

 1ターンキルこそならなかったが、攻撃力3700ものモンスターを従えアドバンテージは霧恵とシェリーに有る。


 だが、フレディもまた状況的には不利と見れる中で不気味な笑みを浮かべている。

 「むははは…この礼はとぅあ〜〜〜っぷりさせてもらうぞ小むすむぇ!私のトゥアァァァァン!
  スタンバイフェイズに『魔帝空間−肝臓』の効果発動!
  自分のターンのスタンバイフェイズにこのカードを墓地に送り、デッキか手札からフィールド魔法『魔帝空間−肺』を発動するぃ!!」

 自動的に入れ替わるフィールドの効果で、又も景色が変わる。
 矢張り生物の体内的な感じは変わらないが、今度は全体が白っぽくなっている。


 不気味な場所でのデュエルは今までが序章。

 此処からが第1幕の始まりである。

 霧恵とシェリーはそう感じていた…



















   To Be Continued… 






 *登場カード補足



 聖騎士の演習
 通常魔法
 手札のモンスターカード1枚を捨てて発動する。
 デッキから「聖騎士」と名の付くモンスターを2対まで自分フィールド上に特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力と守備力は0になり、効果は無効となる。



 魔帝空間−肝臓
 フィールド魔法
 1ターンに1度、手札からレベル4以下の「ダークストーカー」と名の付くモンスターを特殊召喚出来る。
 また、1ターンに1度だけ自分に発生するダメージを0に出来る。
 自分のターンのスタンバイフェイズにこのカードを墓地に送る事で、デッキか手札からフィールド魔法「魔帝空間−肺」を発動できる。



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