「―――ほっほぉ〜」
二人が見た光景は左右の床に並べてある横長椅子と、前方中央に置かれている古びた十字架に貼り付けにされたイエス・キリストの像の光景に二人は感心したあまり、言葉では現せないほどの印象を感じた。
「へぇ〜、以外と広いんだ」
「なんか……一見古そうに見えて、人がいないわりにはかなり手入れされているみたいだな」
「ああそっか、ここらへん一帯の近所は、ボランティアで周に三回ぐらいに掃除に来てくれる人がいるから、たぶんそれでキレイに手入れされているんだよ」
そう言いながら真堂は教会の左に並んである一番前の横長椅子に腰かける。座ったところは、イエスの像の目の前である。
「なんか喉乾いたなあ……季玖、ここの近くに自販機とかないのか?」
喉の乾きは真堂も同じこと、気を使うように獅郎は問うた。
「ん? えーと……ここを出て左に曲がった後に右に曲がった所に駄菓子屋さんのすぐそばにあると思う」
「駄菓子屋?」
「うん。たぶんそこの駄菓子屋さんの横にあったと思ったんだけど、獅郎はここの地元じゃないから、案内しようか?」
地元(片瀬)在住ではない獅郎はこの地区の事はあまり知らない為か、道を言ったところでわかるのかが真堂には心配だった。
『―――き……さ……き……?』
「―――っぐ」
「いいよ、一人で行けるから、おまえはそこで体でも休んでろ」
「……う、うんわかった」
獅郎の言った事に少し心強く感じたと同時に、頭の中から聞こえてくる声に真堂は遅れて言葉を返す。
「え〜と……『アク○リアス』だっけ」
「頼むよ」
そこまで気を使う必要はないのにと言いたいところだったが、ここは一つ獅郎の心遣いに甘えようとする真堂。横長椅子に座ったまま教会の外から出る涼しげな顔をする親友の背中を見送った。