一時間後。
「終わったー!×3」
言葉の通り作業を終え、三人は爽快な声を張り上げ、掃除用具を片付けた後に、横長椅子に倒れように座り込む。
「イヤ〜、大変だったニャ〜」
「そうだね……獅郎がシャーペン投げなかったら……」
「……なあ」
二人が喋っている間に獅郎は、一人教会の天井を見上げながらあることを問う。
「ん? どうしたの獅郎」
「ここ……なんで人いねえんだっけ?」
「それは、四年前に神父さんが亡くなったからじゃ?」
「そんだったらどっかの協会から、他の人間が派遣されるんじゃないのか?」
今いる教会に対する矛盾の一つを問いた獅郎。
「それは……ん〜……」
「なあ李玖―――」
真堂は一時的に考え込むが、二人の話に口を挟んできた神崎は、あることを話しだす。
「―――おまえがアベルさんの事について教えてくれて、しばらくした後。実は俺この教会のこと調べたんだ」
「そうなの……! なにか分かったの?」
意外な事に少し驚いた真堂は神崎に問う。
「ああ、この教会は日本でも数少ない『ミセリコルディア財団』の私有地の一つらしいんだ」
「そうか、『ミセリコルディア財団』が……っと言いたいところだけど、なにそれ?」
「知らんのかい!」
教会の謎が少しだけ解けたのはいいが、世間にあまりうとい面を見せた李玖は、ケロッとしながら神崎に『ミセリコルディア財団』の事について質問する。
「エヘヘ……、実は俺テレビで見るニュースは6割型理解できるけど、残りの4割型は理解できてないんだ」
李玖は自らの世間的な薄さの理由を神崎に告げる。
「あっそう……、いいか李玖。『ミセリコルディア財団』っていうは―――」
『ミセリコルディア財団』のことで活動の一部である教団経営を主軸に説明をした。そこで聞いている真堂は、その組織が主に『国境なき医師団』のようなものだと決定づけた。
「へー、そんなにすごい組織なの?」
「ちなみに財団の名前の『ミセリコルディア』っていうのは、ラテン語で『慈悲』を意味する単語らしい。まさに慈善事業団体にふさわしい名前だってことだな」
(そういえばト○ビアの泉でも紹介されてたな……)
「………」
何日か前に見た某テレビ番組を思い出しながら感心し、心の中で呟いた後に、しばらく口を閉ざしていた獅郎の横顔を見て、妙に感じた真堂は次のように問う。
「獅郎知ってた?」
「ああ、家のお袋やばあちゃんが、そこの創立メンバーだからな……」
「えっ! じゃあ獅郎のお袋さんってミセリコルディア財団の今の高官なのかよ! でもあそこって欧州大陸を中心としたEU公認の組織はずだろ。なんでアジアの日本の企業連合である崇妻財団が創立に関わっているんだよ」
「それは……―――」